美しく破壊的、パリス最新MV「What’s Wrong」暗黒の超常世界に轟かす狂おしき重厚な叫び


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骨、肉体、魂。前作を凌駕する闇の饗宴への招待状。

ゴシック・ロックのダークな世界観とエレクトロポップ、シンセポップを融合させ、その圧倒的歌声とともに瞬く間に世界にその名を知らしめた米マサチューセッツ州ロック・バンド、パリス(PVRIS)のデビュー・アルバム『White Noise』からおよそ3年。その第2章では、闇と陰鬱を一層深めるリリックに、夢幻的サウンドはその超自然的世界観を深化させ、暗闇を纏う疾走感あるサウンドは、より重厚な内なる慟哭へ。

来月待望のリリースを迎える2ndアルバム『All We Know Of Heaven, All We Need Of Hell』より、先月公開の第2弾シングル曲「What’s Wrong」ダウンロード版)のミュージック・ビデオでは、3年の時を経て大きな成長を遂げたパリスの新たな姿と、より深みを増したダークな世界観で惹きつけます。

歌詞で描かれるその華やかな饗宴が行われるなか、モノトーンで重く映し出されるスクリーンに登場したフロントウーマンのリン・ガン(愛称Lynn Gunn、正式Lyndsey Gunnulfsen/リンゼイ・ガナルフセン)、ギターのアレックス・バビンスキー(Alex Babinski)、ベースのブライアン・マクドナルド(Brian MacDonald)がその”王の座”へ。目を隠し正装した狂いし”オオカミ”らに囲まれる中、前作でそのエッジの効いたアグレッシブな歌声で魅了したリン・ガンが、かつてないほどにその重厚さを増した美しく力強い歌声でその闇に魂の叫びを轟かせます。

「メタファーなど使うまでもなく、私が惨めだとわかるだろう/…/しかし魂を売り渡したりなどするものか/そのオオカミ達に私が自分の骨を投げ入れようとも、絶対に魂は売り渡さない/魂を売ったりするものか」

代表曲「My House」をはじめ、「You and I」、「White Noise」など長年タッグを組む映像監督Raul Gonzoが前曲「Heaven」に続いてメガホンを取る「What’s Wrong」のミュージック・ビデオには、フラッシュライトが狂乱のダンスを錯乱させるなか、内なる葛藤と闘うリン・ガンの姿が映し出されます。

PVRIS

私たちにとって全てが順風満帆で、信じられないほどの成功を収めたわ、普通なら幸せを感じ、世界の頂点にいるような気分になるものだわ。しかし私の場合は正反対だったの」とリン・ガン。2012年にメタルコア・バンドとして結成、2014年にはメタルコア名門レーベルRise Recordsと契約し、同レーベル唯一の女性フロント・バンドに。

2014年にリリースしたデビューアルバム『White Noise』ダウンロード版)は、イギリス及び全米を中心にヒットを記録。日本デビューも果たし、サマー・ソニック2016にも出演。

「ダーク・エレクトロポップ・バンド」、「ロック・バンド」、「ポップロック・バンド」、その紹介のされ方は様々ではあるものの、それこそがパリスの魅力に。ドリーミーでありながらダーク、ヘヴィでありながらエレクトロポップというバウンダリーを打ち壊す独自のサウンドともに、その美しく破壊的な歌声もさることながら、生と死、天国と地獄を越えて、ダークな超自然的世界を描く歌詞がオーディエンスを虜にしていきます。

わずか2年での世界的成功のなか、「私自身が最悪の敵となったわ、ものすごく小さな、意味のない存在に感じたの、ただずっと自分を何でもかんでも傷つけようとしたわ。それはまさに人生で一番、精神的に感情的に、肉体的に辛い時期だったの」とリン・ガンは米ビルボード誌に明かします。

破裂

ツアーで初めて家を離れる18歳のとき、同性愛者であることを告白する手紙を母親の枕元に、現在LGBTQコミュニティで音楽・アートにおける権利平等を働きかけるボストンの23歳。完璧主義的で、手に負えないことも抱え込んでしまう性格ゆえに、音楽業界の中、次第に感情を表に出すことなく押さえ込み、やがてそれは風船が破裂を迎えるように。ツアーを終え今回のアルバム制作に移るとき、突然、無感覚と虚無感に襲われた過去を振り返ります。

私にとって個人的な心の問題で、そこから抜け出せなくなってしまったの。今までこんなに傷つきやすくなったことも、そうしたことを打ち明けたこともなかったわ。だからこのアルバムはそれを打ち明け、舵を握り、省みて、受け入れ、そこから抜け出す本当にいい機会になったの」。セラピーに通い、現在も自身の内面と向き合う中、アルバム制作当初よりもずっと良くなったと明かすリン・ガン。

What’s Wrong

PVRIS - What's Wrong

PVRIS – What’s Wrong

前作も手がける米音楽プロデューサー、ブレイク・ハーネージ(Blake Harnage)と共にリン・ガンが書き下ろした「What’s Wrong」では、そうした心情を垣間見せるようにその葛藤を描きます。

「2年が経ち/戻ってきたわ、骨となり皮肉まみれとなって/この皮膚はもはや家のようには感じない/ずっと大きくなりすぎて、この先どうなるのやら/壁から鏡を外す、そうすれば自分の姿が見えることも決してなかろう/クソな自分の頭蓋骨を隅から隅まで見たくもないわ/セイントとゴーストの詩など忘れよう/自分こそが最悪の恐怖/オオカミが来たと嘘を叫んでいたのは自分だったなんて、知る由もなかったわ」「頭がおかしくなっているとわかってる、でもどうにもできない」

「メタファーなど使うまでもなく、私が惨めだとわかるだろう/…/しかし魂を売り渡したりなどするものか/絶対に魂は売り渡さない/魂を売ったりするものか」

歌詞に出てくる「セイントとゴーストの詩」は、前作「St. Patrick」、「Ghosts」のことを指しているのだろうか、「Mirrors」を壁から外すリン・ガン自身の本当の心の叫びのように聞こえるそのミュージック・ビデオでは、その狂躁の宴へとオーディエンスを引き込んでいます。

Heaven

夢幻的サウンドを深化させるアルバム『All We Know Of Heaven, All We Need Of Hell』第1弾シングル曲「Heaven」ダウンロード版)では、天国と地獄の境界を幻惑する超自然的サウンドへ。「私たちは生まれた時から呪われているのだと思う/…/誰が私たちの人生からその光を奪ったのか考えたことはあるだろうか?/苦しみでしかない/なぜそれを口にしようとしないのか/…/お前が私から奪ったのだ/私の心を(×リフレイン)」、そのタイトルとは対照的にその歌詞はかつてないほど暗澹たるものに。

Half

そして第3弾シングル曲「Half」ダウンロード版)では、全身の骨が分裂

「全てを感じる日もあるけど/他の日は何も感じないわ/その中間を見出すことできない/100か0/そうなりたいなんて私は一度も、一度も、一度も言ってないわ(×リフレイン)/こんなところを望んだことなど一度もない/片方の足は墓の中に、もう片方は地上に/今何を感じているかわからないわ/私の皮膚は何もしてくれはしない」

「私の骨の半分は、街の通りに/もう半分はベッドの中/二人は決して出会うこともなかろう」

リン・ガン、大丈夫だろうか、そう心配になるほどダークなスーパーナチュラルの森にミストが立ちこめる中、重厚さを増したパワフルな歌声がそうした不安をかき消していきます。

現地時間8月3日、第4弾シングル曲「Winter」リリース。「お前は私の肉体に炎を燃やせるか/お前の愛が冷たすぎて息が白くなる/これ以上夜を明せない」、凍てつく愛にブリザードが吹き荒れる。

私がこうした経験を通じて学んだ最も大切なことは、感情を押し殺さないということ。そして何かを感じた時は、傷つきやすい感情を表に出すの、そして感じていることをしっかりと自分のものにするの。ネガティブな感情を感じることに後ろめたさを感じるのではなくってね。自分が抱く全ての感情に誇りを持つような感じだわ。ただポジティブでハッピーな感情だけではなくってね」。

All We Know Of Heaven, All We Need Of Hell

PVRIS - What's Wrong

アメリカの詩人エミリー・ディキンソン(Emily Dickinson)による詩『LIFE』の言葉をタイトルにしたアルバム『All We Know Of Heaven, All We Need Of Hell』について、「前作は私が19歳のときのアルバムで、めまぐるしいこの3年の歳月のなか、私たちはすっかり変わり多くのことを経験したわ、そうしたことが今回のアルバムに間違いなく反映されているわ」とNME誌に語るリン・ガン。

特に前作と異なり新たな「シンセ・サウンド、ギター・サウンド、ヴォーカルのスタイル」を追加、「間違いなく異なったアルバムだわ。たくさんの新しくユニークなサウンドがこのアルバムの至る所に流れているわ」とAlternative Press誌で明かします。

「(歌詞的には)たとえ深くなる闇のなかでも、自分自身を見出すことについて謳ったものだわ」、その待望のアルバム『All We Know Of Heaven, All We Need Of Hell』は来月25日にいよいよリリースを迎えます。

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