映画予告編のバックグラウンド・ミュージックとして90年代アメリカで生まれ、観る者をその世界に瞬く間に惹き込むエピック音楽(Epic Music)。クラシック音楽とは対照的に、わずか30秒から約3分間の限られた時間に全てを凝縮し、情感溢れるオーケストラで描く壮大な音楽は今、劇場へと誘うその使命を越えた存在へ。
映画予告編音楽を手がけるTwo Steps from Hell(トゥー・ステップス・フロム・ヘル)、Audiomachine(オーディオマシーン)らと共にエピック音楽界のフロントラインに名を連ね、昨年設立15周年を迎えた米プロダクション音楽カンパニー、Brand X Music(ブランドXミュージック)が、現地時間今月3月20日に最新アルバム『Portal』をリリース。その同収録曲「Unbroken」が今週27日に公開されました。
“はじまり”、”門”を意味する最新アルバム『Portal』には、「ソウルフルなモダン・ファンタジーのアンセム、スリリングな高揚の曲、感動的なピアノバラードの楽曲の数々を通じて壮大な旅へと誘う17の新テーマ曲」を収録。同収録曲の「Unbroken」では、寂寥感漂う美しいピアノと弦楽器による静寂な前奏曲から、次第に力強い重厚なサウンドともに壮大な楽章へ。
米HBOドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の世界観(*1)を彷彿とさせるMMORPG(多人数参加型ロールプレイング・ゲーム)「エルダー・スクロールズ・オンライン」(The Elder Scrolls Online、ESO)の映像と共に、圧倒的なスケールで描く雄渾な交響詩は、逆境の中も奮い立たせるインスピレーショナルな楽曲となり、”Unbroken”な不屈の世界を描きます。
映画業界などインダストリー向けリリースのアルバムため、パブリック向けには公開されない音源ではあるものの、「Unbroken」をはじめ、SoundCloudでは、神秘的な美しい女性ヴォーカルが悠久の別世界へと誘う「Skylantis」、「Watch Tower」などが公開(※SoundCloudで聴く)。
映画予告編
映画『マトリックス』の映画予告編音楽を手がけた米映画音楽作曲家ジョン・スポンスラー(John Sponsler)とトム・ガイアー(Tom Gire)のコンビが共同設立者となり、2002年に米カリフォルニア州ロサンゼルスに生まれたBrand X Musicは、これまで映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』、映画『ファインディング・ドリー』、映画『ジャングル・ブック』、映画『ズートピア』、映画『ハンガー・ゲーム FINAL: レジスタンス』、映画『ホビット』シリーズ、映画『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part1』、映画『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』、映画『ハリー・ポッター』全シリーズなど、ハリウッドの名だたる映画予告編音楽を担当。
映画『インターステラー』でも知られ、エピック・ミュージックのファンらから神格化される映画音楽界の巨匠ハンス・ジマー(Hans Zimmer)が創設した映画音楽会社リモートコントロール・プロダクション(Remote Control Productions)(*2)に、二人はコンポーザーとしてかつて所属。映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ、映画『ナショナル・トレジャー リンカーン暗殺者の日記』、映画『トランスフォーマー/リベンジ』など数々の映画音楽の制作に携わり、ハンス・ジマーの荘厳な世界観を継承する楽曲の数々を生み出します。
パブリック向け最新作『Chronos』
またジョン・スポンスラーは映画音楽作曲家ジョン・ウィリアムズ(John Williams)の映画『SAYURI』の映画音楽の制作にも参加。昨年祝15周年としてパブリック向けにリリースされたアルバム『Chronos』(ダウンロード版)、『Battle For Dawn』(ダウンロード版)では、スケール感のある重厚サウンドとともに、心の琴線に触れる美しい楽曲など、多彩なシーンを描く情感溢れる音楽でリスナーを魅了します。
「トレーラー音楽がその人気を急上昇させる中で、みんなに私たちの音楽を伝えることができること、それはただのユーザーとしてでなく、(エピック音楽の)ファンとして楽しんでくれるみんなと繋がることができるとても素晴らしい機会だよ!」とTrailer Music Newsに語るBrand X Music。
映画、TV、ゲームなどそのバックグラウンド・ミュージックの需要が高まる一方で、その壮大な世界観をもつエピック音楽自体を愛するファンの数を世界中で急成長させる今日。Two Steps from Hell、Audiomachineらがインダストリー向けのみならず、(かつては考えられなかった)パブリック向けにアルバムを次々にリリースする中、脇役的存在、起用されなければ決して陽に当たることのなかったエピック音楽は、堅い支持基盤をもつ新たな音楽ジャンルとしての”はじまり”の時代を迎えています。
(記事)“Interview with Brand X Music” on Trailer Music News
(公式サイト)http://brandxmusic.net/
*1. 米HBOドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』に関する記事『海外ドラマ『Game Of Thrones』のオープニング・テーマソング』(2011年6月当時)。
*2. ハンス・ジマーのリモートコントロール・プロダクションには、エピック音楽界で現在その地位を不動のものにするTwo Steps from Hellのニック・フェニッス(Nick Phoenix)とノルウェー作曲家トーマス・バーガーセン(Thomas J. Bergersen)も所属する。詳細記事『2分でボルテージ最高潮、重厚壮大クラシックTwo Steps From Hell待望のCD盤『Archangel』リリース』(2012年2月当時)。