BGT2020 盲目の15歳セリーン、準決勝で涙の「Carry You」


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新型コロナウイルスの影響により中断していたイギリスの才能オーディション番組『ブリテンズ・ゴット・タレント』(原題:Britain’s Got Talent)シーズン14が今月から再開。その準決勝(Semi-finals)第3週が今日放送され(現地時間2020年9月19日)、北ロンドンの女子生徒セリーン・ジャハーンギール(Sirine Jahangir)がエモーショナルな美しいカバーで再びイギリスを感動に包んだ。

収録テープでセリーンは「私の名前はセリーン、15歳です。2人の弟、両親と一緒にロンドンで暮らしています。幼い頃からずっと歌い続け、5歳の頃に鍵盤を叩きながらピアノを弾き始めました」。「7歳の頃に視力を失い始めました。視力を失っていなかったら、今ほど音楽を愛していなかったかもしれません。家族のみんなに支えられて歌ってきました。それは私にとってかけがえのないもの、どんなことも私は緊張してしまうからです」。

セリーンの視力の異変に両親が気づいたのは、彼女が5歳の頃。子どもたちのパーティーでセリーンが海賊のコスチュームを着て眼帯をつけたところ、左目が見えていなかったという。医師の診断で左目の視力を完全に失っていることがわかり、その後右目の視力が徐々に悪化。もう外の景色が見えなくなったある時、どうしていいかわからない父親は車のなかで音楽を大音量でかけると、セリーンはまるで目が見えているように幸せそうに歌い出したという。苦悩と葛藤のなか家族に支えられながら、音楽に自由と光を見出した瞬間だった。そして10歳の頃、セリーンは右目の視力を失い両目の視力を完全に失った(記事『BGT2020 音楽が光、全盲になった14歳少女の「My Salvation」感動で包む』)。

「最初のオーディションは、緊張で震えていました。どう歌ったかも覚えていません。弟が泣いていました。彼は私を一番応援してくれています。審査員の皆さんに認められ、音楽の夢を追うとても大きな励みになっています」、「ピアノを弾き歌う時、私はまるで別世界に迷い込むかのようです、そこは限界のない自分だけの世界です」、「応援してくださっている皆さんに誇らしく思ってもらえるよう頑張ります」とセリーン、持ち前の明るい笑顔を見せる。

この日8組中6番目に登場したセリーンは、幻想的な楽曲の数々で異世界に誘うナッシュビルのシンガー・ソングライター、ルエル(Ruelle)のバラード「Carry You」(ft. Fleurie / 2018)を選曲。蝶が舞う神秘的な舞台でピアノを弾きながらエモーショナルに歌った。

(バース1)「知っているわ、つらいって/息ができない時もある/そうした夜がずっと続いている/闘う理由も失っている」、「誰かそこにいるの?/私を光へ導いてくれませんか?/誰かそこにいるの?/大丈夫だと教えて」(コーラス)「あなたは独りじゃない/私がずっと一緒にいた/あなたに歌いながら、ooooh/私があなたを支えていく/あなたを支えていく」

「誰かそこにいるの?/私を光へ導いてくれませんか?」(コーラス)「あなたは独りじゃない/私がずっと一緒にいた/あなたに歌いながら、ooooh/私があなたを支えていく/あなたを支えていく」、「知っているわ、つらいって/息ができない時もあるって」

長い夜に人知れず守り続けている存在を歌い、最後の歌詞で涙をこらえきれなかったセリーン。しかし審査員全員が立ち上がりスタンディングオベーションを送り、バーチャル・オーディエンスからの鳴り止まぬ歓声に包まれた。「大丈夫かい?」と司会Ant & Decのアンソニー・マクパートリン(Anthony McPartlin)、セリーンは「ええ大丈夫、どうしちゃったんだろ」と笑顔を取り戻す。

審査員アマンダ・ホールデン(Amanda Holden)は「あぁもぅ…、すごく伝わってきて、それであの最後。まるで魔法のようだった。天使のように美しく歌い、テンダーで繊細。あなたには特別な何かがあると感じるわ。あなたはものすごく大きくなっていくわ。本当にゴージャスだった」。怪我・手術からの回復で欠席しているサイモン・コーウェル(Simon Cowell)の代役を務める審査員アシュリー・バンジョ(Ashley Banjo)は、「”魔法のよう”という言葉はまさにぴったり。君の歌声とピアノは、一握りのパフォーマーだけが成しうるものだ。君の歌声は私をまさに別世界にもっていった。歌い終えた時、初めて我に返ったよ。Wow、本当に見事だった」。

そして審査員デヴィッド・ウォリアムス(David Walliams)は「特別な才能を持つ者は、余計なものをほとんど必要とせずに、ピアノを弾き歌うだけで何百万もの人々と繋がることができると思うことがある。それを我々は目撃したんだと思う。本当にとても特別なパフォーマンスだった。君の泣く姿にとても悲しかったよ。幸せの涙だったらと願う。だって君は信じられないほど素晴らしく歌ったのだから。これ以上にないほど最高だった」。そして審査員アリーシャ・ディクソン(Alesha Dixon)は「他の審査員の皆さんの言葉に大賛成だわ。心を奪う瞬間だった、番組で滅多にないことだわ。歌にあなたの実直さ、純粋さ、真実があり、それはとても珍しいものだわ。ピアノに座って歌い、私たちに何かを感じさせることがあなたの役目だけど、あなたとその歌に私たちはとても共感させられ、あなたはそれをこれ以上ないくらい見事にやってみせたわ。おめでとう、本当に素晴らしかったわ」。

愛する人を失った人、様々な困難と闘う人の救いの歌となっている「Carry You」。2018年にルエルは友人Fleurieとコラボした「Carry You」について語り(BTS)、「昨年を振り返り、とても多くの自然災害や銃撃事件、そしてヘイトクライムがありました。そうしたなかで私はとても愛していた祖母を亡くしました。私はそうしたものと反対のスピリットを歌った曲、人の良き面に光を当てた曲を書きたいと、とても強く感じたのです。私たちは今、ソーシャルメディアやマスコミの溢れる情報にさらされ、そうしたものを見つめる機会がほとんどありません。ですから私たちが普段目にしない人の良い面、希望を抱けるものに光を当て、トンネルの最後に光があるということを知ってもらえる手助けができればと心から望みました」。

新型コロナウイルスの影響により準決勝は2020年9月5日より放送が再開。審査員により選ばれた40組のセミファイナリストが、5週にわたりファイナリストを決める。準決勝は各週、審査員がトップ3を選び投票で1組ファイナリストを決め、残りのセミファイナリストからイギリスの視聴者の投票により1組ファイナリストを決める。

今週の審査員によるトップ3には、マジシャンのMagical Bones、セリーン・ジャハーンギール、ダンス・グループのX1X Crew。デヴィッド・ウォリアムス、アリーシャ・ディクソン、アシュリー・バンジョがMagical Bonesに投票し、審査員チョイスでMagical Bonesが決勝進出を決めた。なおアマンダ・ホールデンの票はセリーンだった。

勝ち負けを超えて感動を呼んでいるセリーンの今後は、ゴールデンブザーを獲得しているマンチェスター出身の手話合唱団Sign Along With Us(サイン・アロング・ウィズ・アス)含む7組を対象としたイギリスの投票(現地時間2020年9月21日午前10時締め切り)に委ねられている。今日の各パフォーマンスは以下の通り。

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