アメリカズ・ゴット・タレント2019 自閉症で盲目の歌手コーディ・リーにゴールデンブザー


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アメリカを興奮と驚き、笑いと感動に包んできた全米夏の最高視聴率オーディション番組『アメリカズ・ゴット・タレント』(原題:America’s Got Talent)、そのシーズン14が今日(現地時間5月28日)放送開始となり、自閉症で盲目の22歳歌手/ピアノ奏者コーディ・リー(Kodi Lee)がそのソウルフルな歌声でシーズン最初のゴールデンブザーを獲得。「音楽の歴史的瞬間」への大きな反響とともに、全米の頂点と賞金1.1億円($1 million)をかけた才能の戦いが幕を開けました。

オーディション・ウィーク初回(Auditions Week 1)2時間放送の最後のアクトに母親(Tina Lee)の腕を取り白杖を携えステージに登場したコーディ・リーは「…ピアノでみんなに歌を歌います」。審査員の質問に母親は「コーディは目が見えず自閉症でもあります」、「小さい頃彼が音楽が大好きだということに私たちは気づきました。コーディは音楽を聞くと目をまん丸にさせて、そして歌い始めたのです。その時私は涙が溢れました、コーディがエンターテイナーだと気づいたからです」。コーディは2歳の頃からピアノを弾き始めたといい「音楽と演奏を通じてコーディはこの世界に屈しないで生きることができました、コーディは自閉症で、他の人にはできることが非常に困難だからです」、「音楽の演奏が彼の人生を救ってきました」。そんな彼の人生と強さに会場から歓声が贈られ、母親が「準備できてる?」コーディは「ばっちりさぁーーっ!」

「数えきれないほど多くの場所に行った/この人生の中で/たくさんの歌を歌ってきた/間違えた時もあった/ステージで愛をさらけ出した/何千もの人の前で/でも今僕たちは二人きり/この歌を君に歌っている」、「僕は君を愛している/時も空間もない場所で/僕は君を一生愛す/君は友だち/そして僕の人生が終わる時/僕たちが一緒だった時を思い出して/僕たちは二人きり、そして/僕はこの歌を君のために歌っていたと」

舞台袖からは家族が揃って応援、和やかな雰囲気に包まれた会場は静まりピアノに腰掛けたコーディに母親が小声で「あなたの番よ、大丈夫?」コーディはファンキーに「Yeah!!」ピアノの演奏からコーディはダニー・ハサウェイ(Donny Hathaway)のカバーでも知られるレオン・ラッセル(Leon Russell)の1970年名曲「A Song For You」を披露。別人のようにレイ・チャールズ(Ray Charles)、スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)ら名盤の魂纏う芳醇な歌声と美しいファルセットを響かせ、絶句の審査員ジュリアン・ハフの頬には涙。会場と審査員全員からの鳴り止まぬスタンディングオベーションに包まれ、コーディも拍手に参加。そんな息子の姿に舞台袖で母親は笑顔に涙を滲ませます。

「ここにいる4人の全審査員そして全ての人が総立ちだよ」と審査員ホーウィー・マンデル(Howie Mandel)。今年も引き続き審査員を務めるホーウィーは「素晴らしいよ、君の歌がホンモノというだけでなく、君は人々を奮い立たせそして才能に溢れている。本当に素晴らしい」。今シーズンから新たに加わったダンサーで女優・歌手のジュリアン・ハフ(Julianne Hough)は「涙が止まらないわ」、「あなたの心、あなたの情熱がすごく伝わってきた、あなたの歌声は私たちを圧倒させたわ」、「あなたの声を聞きあなたを感じたわ、美しかったわ」。

そして審査員サイモン・コーウェル(Simon Cowell)は「ここで目にしたのは並外れたものだった、本当に桁違いのものだ」、「歌声は間違いなく素晴らしく、君は本当に美しい音色を持っている。番組で我々を信頼してくれて深く感謝している」、「私は一生この瞬間を忘れないよ」。ハイディ・クルム(Heidi Klum)とメル・B(Mel B)に代わってジュリアン・ハフと共に今回新たに審査員となった女優ガブリエル・ユニオン(Gabrielle Union)は、昨年11月に第一子となる娘を出産。そんな自身の経験と重ね「我が子には月や星、虹だって与えたいと願うものだわ。今夜私は特別なものをあなたに贈りたいわ」。

金色の紙吹雪に包まれ、母親は会場に埋め尽くす拍手喝采の音を息子に「これはあなたへよ、コーディ、これは全てあなたへよ」。ステージには父親、そして弟と涙の妹が駆け寄り祝福。タイラ・バンクス(Tyra Banks)に代わって今シーズンから司会を務める『ザ・チャンピオンズ』のテリー・クルーズ(Terry Crews)が「コーディ・リー!!!ゴールデンブザーを獲得したぞ!!」と雄叫び。ゴールデンブザーが贈られたコーディ・リーは、ジャッジ・カットのラウンドを通過しライブショーとなる準々決勝(Quarterfinals)の舞台に送られます。1回限りの権利を行使したガブリエル・ユニオンはコーディを抱きしめ「あなたは世界を変えたのよ、世界を変えたのよ」。

公式サイトによると先天性視神経疾患のコーディ・リーは、生後5日で命に関わる手術を受け、4歳の頃に自閉症障害と診断されたが夢を諦めなかったといいます。彼の夢は「何千ものファンらの前で演奏する”ロック・スター”になる」こと。タップダンスも得意だというコーディは6つの楽器をこなし、ロックからジャズ、R&B、ポップ、クラシックなどそのジャンルは多岐にわたり、一度耳にしただけでその音楽を瞬時に記憶し再現できるといいます。

サヴァン症候群を50年以上にわたり研究している精神科医ダロルド・トレッファート(Dr. Darold Treffert)はコーディについて「彼は音楽のサヴァン症候群の定義にまさに当てはまる」(The Press-Enterprise)、「私は少しだけ彼の人生を見てきた。彼は盲目で自閉症の診断を受けた。そして彼にはとんでもない音楽の才能がある」。サヴァン症候群の兄とその弟の交流を描いたダスティン・ホフマン、トム・クルーズ主演1988年公開映画『レインマン』(原題:Rain Man)のアドバイザーだったダロルド・トレッファート博士はサヴァン症候群の権威の一人として知られ、「サヴァン症候群の人は、音楽だったり数学だったり、彼らの能力を早期に開花させ、過去に学んだことのないものを、まるで知っているかのようだ」、「それは最初からインストール済みのソフトウェアのようなものだ」。

ゴールデンブザーのBGMにはカラム・スコット(Calum Scott)によるバラード「You Are the Reason」のレオナ・ルイス(Leona Lewis)とのデュエット・バージョン(記事

母親の話によると、コーディは6歳の頃から人々の前で歌いピアノを弾きこれまで200を超えるチャリティ・イベントで演奏。9歳の頃コーディは韓国、中国、そして日本で演奏したことがあるといいます。ゴスペルやソウルに強い影響を受け、アリシア・キーズ(Alicia Keys)マヘリア・ジャクソン(Mahalia Jackson)レイ・チャールズスティーヴィー・ワンダージョージ・ベンソン(George Benson)の音楽に強く惹かれたというコーディ。音楽の力は自閉症の困難を乗り越える大きな力になったといい、母親は「コーディは1日に30回くらいかんしゃくを起こしていたものでした。音楽を始めたあとは、彼はそれに夢中になりました。私たちにとって彼の自閉症の症状を抑える本当に大きな力となりました。彼はエンターテイナーになりたいのです」。


南カリフォルニアに住むコーディ・リーは昨年AGTシーズン13でゴールデンブザーを獲得した16歳歌手マケイラ・フィリップス(Makayla Phillips、記事)と親友で、一緒に歌の練習をする仲の二人はよくデュエットで演奏、昨年夏のAGTではコーディ・リーはマケイラ・フィリップスを支援しSNSなどで応援を呼びかけ続けました。現在はマケイラがコーディの応援をしています。オーディション・ウィーク2は来週6月4日(日本時間6月5日水曜日)放送。コーディ・リーが登場する準々決勝は、今年8月13日以降に開催される予定です。

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