アカデミー賞2022 『コーダ あいのうた』作品賞含む主要3部門受賞


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第94回アカデミー賞(The 94th Academy Awards)の授賞式が現地時間2022年3月27日、カリフォルニア州ロサンゼルス市ハリウッドのドルビー・シアターで開催され、シアン・ヘダー(Sian Heder)脚本・監督によるApple TV+コメディドラマ映画『Coda コーダ あいのうた』(CODA)がハリウッド最高賞となる作品賞を受賞した。

『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(The Power of the Dog) 、『ドライブ・マイ・カー』(Drive My Car)、『ベルファスト』(Belfast)など有力候補を抑えての受賞となり、主要登場人物の多くを聴覚に障がいのある俳優が演じている映画としては初の作品賞ノミネート&受賞で、動画配信サービスの映画として初の作品賞受賞となり、歴史的受賞となった。

感動の声が鳴り止まぬ『Coda コーダ あいのうた』は、2014年にフランスを笑いと感動の涙で包んだルアンヌ主演の仏映画『エール!』(原題:La Famille Bélier / 記事 / Amazonプライム・ビデオで観る)の英語リメイク。4人家族の中で唯一健聴者である17歳女子高生ルビーの音楽の夢と”家族の通訳者”としての葛藤、愉快で複雑で波乱な家族の深い絆を、鋭い心理描写と笑いを交えながら珠玉の音楽に乗せて力強く描く。

少女の知られざる美しい歌声がやがて耳の聞こえぬ家族の夢になっていく本作は、初上映の2021年サンダンス映画祭で最多4冠受賞&史上最高額約26億円(2,500万ドル)でAppleが落札し、米国で2021年8月13日に劇場公開と同時にApple TV+で配信開始となり、日本では2022年1月21日より全国で劇場公開となっている(公開中の劇場一覧 – GAGA)。

『コーダ あいのうた』 / ギャガ GAGA★ © 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

『Coda コーダ あいのうた』は作品賞の他、助演男優賞(トロイ・コッツァー)及び脚色賞(シアン・ヘダー)を受賞し、ノミネートされていた全3部門で全て受賞を果たした。ノミネート3部門以下の映画が作品賞を受賞するのは、作品賞のみのノミネートで受賞に輝いた1932年の映画『グランド・ホテル』(Grand Hotel)以来となる。

トロイ・コッツァー(Troy Kotsur)はろう者の男優として初の助演男優賞受賞で、本作でトロイと夫婦役を演じたマーリー・マトリン(Marlee Matlin)に続いて史上2人目のアカデミー賞受賞俳優となった。マーリー・マトリンは1986年『愛は静けさの中に』(Children of a Lesser God)で主演女優賞を受賞した。トロイ・コッツァーは受賞スピーチで「シアン・ヘダー監督は最高にスキルの高いコミュニケーターです。それは、障がい者とそうでない人との橋渡し役を務めたからです。そしてそれはいつまでもハリウッドに残る橋ということになります」、「これはろう者の、コーダのコミュニティ、障がい者のコミュニティに捧げます。これは私たちの瞬間です。ありがとうございます」と語った。

(C)AFP/アフロ , 左:シアン・ヘダー監督、右:トロイ・コッツァー

初の脚色賞ノミネート&受賞となったシアン・ヘダー監督はその受賞スピーチで、ASL(アメリカ手話)の通訳もいれながら「この映画を書き、作ることは、人としてアーティストとして人生を変えるものでした」、「私の師となってくださったろう者のコミュニティ、CODAのコミュニティの皆さんに感謝を伝えたいです」。最後には映画でも登場する「I LOVE YOU FOEVER」のハンドサインをし、会場は拍手とASL手話の拍手で包まれた。

『コーダ あいのうた』 / ギャガ GAGA★ © 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

映画タイトルにもなっているCODAは、耳の聞こえない両親に育てられた子ども(Children of Deaf Adults)を意味する略語。同時に音楽用語として楽曲・楽章の終結部の意味も持ち、本作においては監督が語るようにCODAは「子供時代の終わり」(NPR)の意味を併せ持ち、新たな「旅立ち」の意味が込められている。

『DUNE/デューン 砂の惑星』が作曲賞(ハンス・ジマー / Hans Zimmer)、音響賞、美術賞など含む最多6部門受賞。歌曲賞には『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の主題歌でビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)による「No Time to Die」(記事)が受賞した。

『コーダ あいのうた』<STORY>
海の町で、耳の聞こえない両親と兄と暮らすルビーは、幼い頃から家族の“通訳”となり、家業の漁業を毎日欠かさず手伝っていた。高校で合唱クラブを選択したルビー。彼女の歌の才能に気づいた顧問が、都会の名門音楽大学の受験を強く勧める。だが、夢よりも家族の助けを続けることを選ばざるを得ない彼女は・・・。

主な劇中歌
デヴィッド・ボウイ / David Bowie「スターマン」
ジョニ・ミッチェル / Joni Mitchell「青春の光と影」
ザ・クラッシュ / The Clash「I Fought the Law」
エタ・ジェイムス / Etta James「Something’s Got A Hold On Me」
シャッグス / The Shaggs「My Pal Foot Foot」
マーヴィン・ゲイ / Marvin Gaye「Let’s Get It On」
マーヴィン・ゲイ&タミー・テレル / Marvin Gaye & Tammi Terrell「You’re All I Need To Get By」
アイズレー・ブラザーズ / The Isley Brothers「It’s Your Thing」

監督・脚本:シアン・ヘダー 出演:エミリア・ジョーンズ「ロック&キー」、フェルディア・ウォルシュ=ピーロ『シング・ストリート未来へのうた』、マーリー・マトリン『愛は静けさの中に』、トロイ・コッツァー 原題:CODA|2021年|アメリカ|カラー|ビスタ|5.1chデジタル|112分|字幕翻訳:古田由紀子|PG12 
配給:ギャガ GAGA★  © 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

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