今年は41カ国が競い合うユーロビジョン・ソング・コンテスト2020、その強豪国スウェーデン代表を決める全国大会で、今年で祝60回目を迎えた『Melodifestivalen 2020』(メロディーフェスティバーレン 2020)の決勝戦が今年も首都ストックホルムのフレンズ・アレーナで開催された(現地時間3月7日)。ブリトニー・スピアーズやテイラー・スウィフト、アリアナ・グランデらポップ・スターの世界的ヒット曲を世に送り続けてきたポップ音楽先進国スウェーデン。その伝統の音楽大会となる”メロディーの祭典”は、毎年スウェーデンのTV最高視聴者数を記録するスウェーデン最大のショーとなっており、各国から観戦のためスウェーデンを訪れるファンも多い。
音楽アーティストにとって、まさに夢の舞台であるというMelodifestivalen。記念すべき今年の決勝戦では過去59曲のユーロビジョン・スウェーデン代表曲の輝かしい歴史から幕を開けた。国家代表をかけ全28組のうち、準決勝戦4週、敗者復活戦1週を経て、決勝に勝ち上がった12組が熱戦。優勝最有力候補だったドッター(Dotter)を僅か1点差という史上稀にみる僅差で抑え、3人組女性グループThe Mamasのアップリフティングな力強いゴスペル・ポップ「Move」(Universal Music AB)が優勝を果たした。1点差による僅差での優勝争いは、各国審査員票及び視聴者票の合計得点による現在の投票システムとなった1999年以降では、初めて。それ以前を含めると、1点差による優勝は1987年以来となった。これにより、The Mamasの「Move」がユーロビジョン2020のスウェーデン代表曲に決定した。
(バース1)「私たちは挑戦し、闘う/心が折れたって、大丈夫/それが人生/Oh、それが人生だわ/涙を拭い/そして立ち上がる/それが人生/Oh、それが人生だわ」、「雨が降り続く時も/どん底の時でも/私がそばにいる/私がそばにいるわ」(コーラス)「だって、どんな海よりも/あなたへの愛は深い/どんな炎よりも/私は照らし続ける/私に動かせない山なんてない/あなたのために何だってする/あなたもそうしてくれるのだから」
33歳のAshley “Ash” Haynes、38歳のLoulou Lamotte、38歳のDinah Yonas MannaからなるThe Mamasは、前大会優勝者ジョン・ルンドヴィック(John Lundvik)の「Too Late for Love」(記事)のコーラスとして結成されたゴスペル・グループ。漆黒から光溢れるスピリチュアルな舞台で、苦難を救う深き愛をエネルギッシュに熱唱。3万人を超える観客と一つになり、アリーナを歓喜に包んだ。The Mamasは、2年連続でユーロビジョンのステージに立つことになる。「Move」は、大会直前のスウェーデンのシングル・チャートでは第7位(Sverigetopplistan、※2020年3月6日付)となり、他のファイナリストの曲よりも低かったが、そのパワフルなパフォーマンスで国民のハートを掴んだ。
準優勝 – Dotter
異例にも今年はトップ4を女性アーティストが独占。スウェディッシュ・ポップらしいキャッチーで美しいポップに溢れた。第2位となった「Cry」のドッター(Dotter)は、”防弾”でないハートの繊細さを歌う「Bulletproof」(Warner Music Sweden)を無数の弾丸光の演出で力強く披露。全7カ国による審査員票で「Bulletproof」は、The Mamasの「Move」と同点(65点)となり、視聴者票で1点差の71点となった結果、合計136点。137点の「Move」に1点及ばず第2位となった。「Bulletproof」は、大会直前のチャートで第4位となり、自身の最高位を大きく更新。前予想では優勝に最も近い曲として注目を集めていた。
3位 – Anna Bergendahl
第3位となったのは、ユーロビジョン2010スウェーデン代表を務めたアンナ・ベリエンダール(Anna Bergendahl)による壮大な王国ソング「Kingdom Come」(Warner Music Sweden)。「やり残した深刻なことがあるわ」とベリエンダール(BBC)、ユーロビジョン2010年で、スウェーデン代表として唯一決勝進出を逃したベリエンダールは、この日ダンサーらを従え情熱の歌声を燃やしアリーナを沸かせた。大会直前のチャートで「Kingdom Come」は第10位となり、前大会曲「Ashes to Ashes」を上回った。
4位 – Hanna Ferm
第4位には、LIAMOOとの「Hold You」で前大会第3位となったハンナ・ファーム(Hanna Ferm)。2度目の挑戦となる大会では、自身の過去・恐怖と闘うキャッチーなポップ「Brave」(Universal Music AB)をセクシーな衣装とダンスで披露。2大会連続でトップ5入りを果たした。大会直前のチャートで「Brave」は第5位となり、優勝曲「Move」を上回っていた。
ユーロビジョンでは、スウェーデンは1974年ユーロビジョンでABBA(アバ)の「Waterloo」(邦題:恋のウォータールー)で初優勝し、2012年にはロリーン(Loreen)「Euphoria」が優勝するなど過去6度優勝。歴代優勝記録では7度優勝のアイルランドに次いで歴代第2位となっている。優勝争いから遠ざかっているアイルランドに対して、スウェーデンはこの6年間、2015年の優勝を含めて全てトップ10入りを果たし、安定した上位国となっている。昨年のユーロビジョン2019では、第5位。審査員票では第1位となった(記事)。そのジョン・ルンドヴィックは今年はソングライターとして活躍し、フランス代表トム・レーブ(Tom Leeb)による甘いバラード「The Best in Me」をコー・ライト。ウエストライフ(Westlife)など90年代バラードが蘇る透明感ある甘美なバラードとなり、「ウェディング・ソングにしたいわ」という声も寄せられている。
ユーロビジョン2020準決勝前半戦は現地時間5月12日、後半戦は5月14日、そして決勝戦は5月16日に開催。果たしてスウェーデンの運命は。準決勝では早くも前半戦に登場する予定となっている(記事)。なおMelodifestivalen 2020決勝戦の成績は以下の通り。
順位 | アーティスト – 曲 | 審査員 | 視聴者 | 合計点 |
---|---|---|---|---|
1 | The Mamas – Move | 65 | 72 | 137 |
2 | Dotter – Bulletproof | 65 | 71 | 136 |
3 | Anna Bergendahl- Kingdom Come | 46 | 61 | 107 |
4 | Hanna Ferm – Brave | 25 | 69 | 94 |
5 | Anis don Demina – Vem e som oss | 40 | 42 | 82 |
6 | Paul Rey – Talking in My Sleep | 35 | 33 | 68 |
7 | Felix Sandman – Boys with Emotions | 53 | 14 | 67 |
8 | Robin Bengtsson – Take a Chance | 35 | 28 | 63 |
9 | Victor Crone – Troubled Waters | 19 | 38 | 57 |
10 | Mariette – Shout It Out | 42 | 9 | 51 |
11 | Méndez – Vamos amigos feat. Alvaro Estrella | 19 | 21 | 40 |
12 | Mohombi – Winners | 20 | 6 | 26 |