イギリスのリヴァプールで先週開催された世界最大の音楽コンペティション番組『ユーロビジョン・ソング・コンテスト2023』(Eurovision Song Contest 2023)の決勝戦後初となる全英シングルチャート(※2023年5月25日付)が今日発表され、ファイナリストの代表曲4曲がランクインしたことが発表された(The Official UK Charts Company、現地時間2023年5月19日)。71年の歴史を持つ全英チャートで、トップ10にユーロビジョンの曲が同時に4曲ランクインするのは、過去最多となる。
女性アーティストとして史上初めて2度目の優勝を果たした🇸🇪スウェーデン代表ロリーン(Loreen)のパワフルなアンセム「Tattoo」は初登場第2位を記録。ロリーンは今回、2012年大会での優勝曲「Euphoria」の最高位第3位の記録を上回り、自身最高記録となった。
審査員票で伸び悩み第4位となるも視聴者票で第1位となり準優勝となった🇫🇮フィンランド代表のKäärijä(カリヤ)のハイパーポップ・ラップ「Cha Cha Cha」は初登場第6位を記録。「Cha Cha Cha」は、全てフィンランド語による楽曲として全英シングルチャートにランクインした史上初の曲となった。
37か国が参加し、26か国が熱戦を繰り広げた決勝戦で第25位となった🇬🇧イギリス代表のメイ・ミュラー(Mae Muller)の「I Wrote A Song」は、イギリス国内からの熱い支持を受けて前週45位から大きく順位を上げ第9位を記録した。
失恋を涙ではなく(イギリス人らしいひねりのある)”歌”に変えて前に進むキャッチーなポップソングとなっている同曲は、メイ・ミュラーがNEIKED(ネイキッド)、ポロG(Polo G)とコラボしたドリーミーなサマー・アンセム「Better Days」(2021)で記録した最高第32位を大きく上回り、自身最高記録で自身初の全英シングルトップ10ヒットとなった。「I Wrote A Song」の和訳は公式ミュージック・ビデオの字幕にて提供されている(ユニバーサル ミュージック / キャピトル・レコードUK / EMI)。
エリザベス1世からインスパイアされたという女王の衣装でエネルギッシュに歌い上げ決勝戦で第5位となった🇳🇴ノルウェー代表アレサンドラ(Alessandra)の壮大なエレクトロ・ポップ「Queen of Kings」は、自身初の全英シングルチャートのランクインで、初登場第10位を記録した。
全英シングルチャートトップ10で、過去に唯一ユーロビジョンの曲が複数曲同時にランクインしたのは1982年で、ドイツ代表Nicoleの優勝曲「A Little Peace」が第1位、イギリス代表Bardoの「One Step Further」が最高第2位となり2曲がトップ10を記録した。
今回の発表に際してロリーンは、「今私が受けているすべての愛と応援に胸がいっぱいです。特に初日からイギリスの皆さんは私と共にいてくれました。 イギリスは私の第二の故郷となり、そこで”Tattoo”が自身最高記録となったことは私にとってかけがえのないことです。 この旅を共にしていただきありがとうございます。 私たちは一緒に歴史を作りました」と感謝の気持ちをコメントしている。
そしてカリヤは「本当にすごい気分だよ。私はフィンランドのごく普通の男なんだ!私が曲を作って、みんながそれを気に入ってくれて、とても感謝している。全英トップ10に入るなんて本当にクレイジーだね。それは簡単なことじゃないとわかってる、特にフィンランド語の曲ではね。イギリスのファンの皆の愛と応援にありがとうと伝えたい。いつか戻ってきて、そこで自分のショーができることを願ってるよ!」と喜びをコメントしている。
そしてメイ・ミュラーは「あーー!すべての応援に本当に感謝しているわ。皆さんにはどれだけ感謝してもしきれないわ!皆さんなしでは、イギリスの応援がなければ、なし得なかったことよ。この数日は複雑な気持ちだったけど、私のユーロビジョンの旅の終わりは本当に素晴らしいものになったわ。本当に本当にありがとう!」と動画でコメント。「私にとって初めてのトップ10入りよ!!これは本当に大きなことだわ、嘘じゃないわ。あーー!これはまだ始まりにすぎないわ。皆さん、本当に愛しているわ!ありがとう!ありがとう!!」
BBC Radio 2のDJスコット・ミルズ(Scott Mills)は67年目を迎えた今大会の躍進を受けて、「ユーロビジョンが全英チャートでこれほどの成果を収めたという事実は、イギリスが今大会にどれだけの投資を行ったかを示しています」、「それはコンテストをはるかに超えたものになり、リヴァプールがそれを全面的に歓迎してくれたおかげで、一週間にわたるフェスティバルとパーティーになりました」。「ユーロビジョンが全英チャートにこれほどの影響を与えた時代を私は覚えていません。それは、ユーロビジョンがラジオ、テレビ、SNSを通じていかに自宅の視聴者に浸透したかを示しています。記憶の限り初めてのことですが、誰もがユーロビジョンのことを話していました」。
ユーロビジョン公式ポッドキャストの司会者Steve Holdenはユーロビジョン・ソングの全英チャートでの成果とグローバルなヒットを生み出すユーロビジョンの可能性に触れた上で、「2023年は、素晴らしいアーティストたち、素晴らしい曲たちで溢れ、特別なユーロビジョンの年になったと感じています。それはこの番組が英語曲でなくともグローバルなヒットを秘めた歌と人々を繋いだ結果です。今大会の反響は非常に大きく、アーティストたちは家で視聴しているオーディエンスと密接な繋がりを築きました。」と今大会を振り返る。
今大会の開催国は本来前大会優勝国ウクライナであったが、ロシアによるウクライナ侵攻が続く状況の中で「安全性とセキュリティの理由」(EBU)から、前大会優勝国ウクライナではなく、(準優勝国)イギリスがウクライナに代わって開催。ザ・ビートルズ(The Beatles)の故郷リヴァプールで開催され、ユーロビジョンのフェスティバルの期間中(2023年5月1日〜5月13日)に最大500,000人がリヴァプールを訪れ、リヴァプール都市圏の2年先までの経済効果は推定、最大2億5000万ポンド、日本円で約430億円とされている(BBC)。
ユーロビジョン2023の模様はBBCで生放送され、決勝戦はイギリス国内で最高視聴者数1100万人、平均視聴者数990万人(視聴率63%)を記録。2011年大会で記録した平均視聴者数950万人の最高記録を上回り、ユーロビジョン決勝戦の視聴者数としてはイギリスTV史上最多となった(BBC)。サム・ライダー(Sam Ryder)の「SPACE MAN」で準優勝となりイギリスを熱くさせた2022年大会決勝のBBC平均視聴者数は890万人だった。今大会の全世界におけるTV視聴者数の総計は、推定1億6000万人を超えるものとみられている。
Official Singles Chart Top 100
順位 | アーティスト | 曲 | 前週 |
---|---|---|---|
1位 | Calvin Harris, Ellie Goulding | Miracle | 1位 |
2位 | Loreen | Tattoo | (初) |
3位 | David Kushner | Daylight | 2位 |
4位 | Ed Sheeran | Eyes Closed | 3位 |
5位 | Lewis Capaldi | Wish You The Best | 6位 |
6位 | Käärijä | Cha Cha Cha | (初) |
7位 | Rema, Selena Gomez | Calm Down | 5位 |
8位 | Switch Disco, Ella Henderson | REACT | 7位 |
9位 | Mae Muller | I Wrote A Song | 45位 |
10位 | Alessandra | Queen of Kings | (初) |
※出典:The Official UK Charts Company