今年で68回目を迎え欧州を中心とした37か国が参加、国を代表するアーティストたちがオリジナル・ソングで頂点を競い合う世界最大の歌コンペティション番組「ユーロビジョン・ソング・コンテスト2024」(Eurovision Song Contest 2024)が、来月いよいよ始まる。ユーロビジョンらしい奇抜な曲、エネルギーに満ちたアップビートな歌からバラードまで、これまで以上に型破りでアツい37曲が揃った。
開催国は前大会優勝国スウェーデン、開催都市はスウェーデン南部に位置しスウェーデン第3の都市である港湾都市マルメで、1992年大会、2013年大会に続いて3度目の開催。5大会連続での首都以外の開催は史上初となり、会場は2013年大会と同じくマルメ・アリーナとなる。
■スケジュール&ライブ配信動画
前半組15か国が戦う〈準決勝1〉は現地時間2024年5月7日、後半組16か国が戦う〈準決勝2〉は現地時間5月9日。〈決勝〉は現地時間5月11日に開催され、準決勝を勝ち進んだ20か国と、経済的貢献により決勝出場が確定している「ビッグ・ファイブ」国(🇫🇷フランス、🇩🇪ドイツ、🇮🇹イタリア、🇪🇸スペイン、🇬🇧イギリス)、そして開催国🇸🇪スウェーデンを合わせた26か国が戦う。
その模様は今年もYouTubeでライブ配信され、〈準決勝1〉は日本時間5月8日(水)午前4時から、〈準決勝2〉は日本時間5月10日(金)午前4時から、〈決勝〉は日本時間5月12日(日)午前4時からそれぞれ以下の動画でライブ配信される。
■参加国
国家、言語、宗教、民族、文化の違いを超えて、音楽の力を通じて団結力と多様性を祝福してきたユーロビジョンの今年のスローガンは前大会と同じく「United by Music」(音楽で一つに)。参加国は、前大会出場の🇷🇴ルーマニアが経済的な理由から不参加、一方🇱🇺ルクセンブルクが1993年大会以来31年ぶりの出場。ルーマニア以外の前大会出場国が続けて参加し、計37か国が準決勝で競い合う。
■主な変更点
本大会の主な変更点としては、準決勝で「ビッグ・ファイブ」国と開催国が史上初めてライブ・パフォーマンスを行うこととなった。決勝出場が確定しているこれらの国は、これまで準決勝ではそのリハーサル映像が挿入されていたが、これらの国も本大会から他国と同様にステージでライブ・パフォーマンスを行うことで、観客と視聴者は決勝前に全ての国のライブ・パフォーマンスを見ることができるようになった。
また決勝の投票期間が変更になり、従来の全アクト後ではなく、本大会の決勝では最初の曲が演奏される直前に開始されることとなり、全ての演奏を待たず即時に投票ができるようになった。これらの変更を受けて、大会のエグゼクティブ・スーパーバイザーMartin Österdahl氏は「これまでで最もエキサイティングな大会になる」とコメントしている(EBU)。
前大会では(ロシアなどを除き、クレジットカードによる認証が可能な世界中の)非参加国の視聴者による投票が史上初めて可能となり(記事)、今年も継続。前大会と同様に、非参加国のオンライン投票は「Rest of the World」(その他世界)として一つの国の視聴者票として扱われ、非参加国の視聴者の投票方法は、Eurovision App(Android / iOS)またはユーロビジョン投票専用サイトwww.esc.voteから投票が可能であるが、本大会では投票期間に変更があり、各準決勝/決勝の前夜に行われる2回目のドレスリハーサル(The Second Dress Rehearsal)終了直後から、そのライブショーが始まるまでの約24時間となる。
■37か国代表曲
先月37か国全ての代表アーティスト・代表曲が決まり、現在そのミュージック・ビデオが次々に公開。耳から離れない中毒性の強い型破りなダンス・ナンバー、キャッチーで気分が上がるアップテンポのポップ、アツいメッセージが込められた歌、北欧らしいメロディックなナンバーはもちろん、パワフルなロックは今年もエントリー。
また歌唱力が光る美しくエモーショナルなバラード、ヒップホップを組み込んだ曲、90年代のユーロダンスを彷彿とさせるノスタルジックでエネルギッシュなテクノ・ダンス、ユーロビジョンには欠かせないぶっ飛んだ歌も登場。秘境に迷い込む異世界な音楽や、伝統的な民族音楽の要素を融合したユニークな曲など、今年も多彩な楽曲が揃い、興奮あり、笑いあり、感動ありの37曲が、エキサイティングな歌合戦を一層熱くする。
■注目国〈4月7日時点〉
ユーロビジョン2024最初の主要イベント「PrePartyES 2024」がスペインのマドリッドで開催され、3月30日に37か国中26か国が代表曲(やその他の曲)をライブ・パフォーマンスで披露。そのパフォーマンスを受けて、大会から約1ヶ月前となる4月7日時点のオッズで、「PrePartyES 2024」に参加した🇨🇭スイス、🇭🇷クロアチア、🇮🇹イタリアの3か国が優勝争いでリードし注目を集める。
🇭🇷クロアチアを抜き現在優勝争いをリードする🇨🇭スイス代表はスイス、ベルン州ビール/ビエンヌ出身24歳のラッパー、ネモ(Nemo / 本名Nemo Mettler)。自身の経験に基づきコー・ライトしたノンバイナリー・ジェンダーを歌う「The Code」で、セリーヌ・ディオン(Céline Dion)がスイス代表として優勝した1988年大会以来、36年ぶりとなる3度目のスイス優勝に挑む。
ドラマティックに進行していくアップテンポなポップ・サウンドをベースにした「The Code」では、テーマと呼応して力強いラップとオペラティックなファルセットを巧みに織り込みながら、自己発見で息を吹き返す多幸感あるラストへと向かう。タイトルは、男性か女性か、二分される世界を表すバイナリーコードからくるもの。レールの上を走り続ける列車のなか、自由に生きる道を見出す姿を描く。
「0と1の間のどこかで/僕の天国を見つけた/僕の心臓が鼓動する/0と1の間にある場所で/僕の天国を見つけた/ドラムのように僕の心臓が鼓動する」、「僕は地獄に行って戻ってきた/自分らしく生きていくために/僕はコードを破った/Oh, Oh, Oh/アンモナイトのように/少し時間はかかったけど/僕は楽園を見つけたんだ/僕はコードを破った/Oh, Oh, Oh」
🇨🇭スイスとともに優勝争いで人気を集める🇭🇷クロアチア代表は、クロアチア、イストラ郡ウマグ出身28歳のシンガーソングライター、ベイビー・ラザーニャ(Baby Lasagna / 本名Marko Purišić)。ロックバンドManntraの元ギタリストで「ラザニアよりピザのほうが大好きなんだが、ベイビー・ラザニアのほうが響きがいいんだ」(wiwibloggs – YouTube)というベイビー・ラザーニャは、外国での仕事を求めて急増するクロアチアの若者の移民をテーマにした代表曲「Rim Tim Tagi Dim」で、故郷の村を離れる決意をした若者の期待・夢と不安のジレンマをユーモアを交えてパワフルに歌い、🇭🇷クロアチアの初優勝を狙う。
ベイビー・ラザーニャが単独で作詞作曲、重厚なロックをベースにヘビメタのレイヤーを重ね、リフにトラップ、軽快なテクノの要素が加わる同曲は、冒頭からインパクト強め、一度聴いたらクセになる”Rim Tim Tagi Dim”が何よりも特徴的。タイトルにもなっているこの部分について本人はwiwibloggsで、「Rim Tim Tagi Dimにヴォーカルを入れてみたら面白いじゃないかってね。特に意味はないんだ」。
「僕が書く多くの曲は、実際に考えていない僕の潜在意識から来ていると思う。僕たちは若者の移住に関しては多くの問題を抱えており、それについて多くのニュースが流れているので、僕は常にその言葉を耳にしていると思う。おそらくこの曲は、そうした若い人たちがより良い場所を求めて、国を離れることについて歌っている。歌にあるように、重い気持ち、 “不安に襲われて”、”みんなと離れるのは寂しいが、一番は猫だね”」。
既に世界的な注目を集めている🇮🇹イタリア代表、イタリア南部バジリカータ州マラテーア出身の22歳新星シンガーソングライター、アンジェリーナ・マンゴ(Angelina Mango)は、自身がMadameと共に書いたイタリア語曲「La noia」で2021年以来4度目の優勝を狙う。”退屈”を意味するタイトルの代表曲「La noia」は、コロンビアのカリブ海沿岸地域の伝統的な民族音楽であるクンビアのリズムからインスパイアされたラテン・テイストのアップビートなポップソング。
反骨精神が息づくメタファーを用いた詞で綴られる同曲では、少女の頃から強いられる社会のしがらみ・偏見とありきたりの日常からの解放のため、いばらの冠を”身だしなみ”に、リスクを冒してもクンビアのダンスで歌い踊り、世の中の”退屈”を止めようとする気概ある女性の姿をダンサブルなサウンドで描く。
「La noia」はイタリアのチャートで第4位、20万枚を超えるヒットとなり、スイス、クロアチアのチャートにもランクイン、さらに米ビルボードの世界チャート「Billboard Global 200」で110位となるなどグローバルなヒットとなっている。
これらの3強に続いて現在🇺🇦ウクライナ、🇳🇱オランダが追う展開。トップ10争いには🇧🇪ベルギー、🇫🇷フランス、🇬🇷ギリシャ、🇮🇱イスラエル、🇦🇹オーストリア、🇸🇪スウェーデン、🇬🇧イギリスが人気を集める。ユーロビジョン2024のライブショーまで1ヶ月、世界最大の伝統の歌合戦がいよいよ幕を開ける。
※この記事は、随時更新されます。
準決勝1
出順 | 国 | アーティスト | 曲 |
---|---|---|---|
1 | 🇨🇾 キプロス | Silia Kapsis | Liar |
2 | 🇷🇸 セルビア | TEYA DORA | RAMONDA |
3 | 🇱🇹 リトアニア | Silvester Belt | Luktelk |
4 | 🇮🇪 アイルランド | Bambie Thug | Doomsday Blue |
★ | 🇬🇧 イギリス | Olly Alexander | Dizzy |
5 | 🇺🇦 ウクライナ | alyona alyona & Jerry Heil | Teresa & Maria |
6 | 🇵🇱 ポーランド | LUNA | The Tower |
7 | 🇭🇷 クロアチア | Baby Lasagna | Rim Tim Tagi Dim |
8 | 🇮🇸 アイスランド | Hera Björk | Scared of Heights |
★ | 🇩🇪 ドイツ | ISAAK | Always On The Run |
9 | 🇸🇮 スロベニア | Raiven | Veronika |
10 | 🇫🇮 フィンランド | Windows95man | No Rules! |
11 | 🇲🇩 モルドバ | Natalia Barbu | In The Middle |
★ | 🇸🇪 スウェーデン | Marcus & Martinus | Unforgettable |
12 | 🇦🇿 アゼルバイジャン | FAHREE feat. Ilkin Dovlatov | Özünlə Apar |
13 | 🇦🇺 オーストラリア | Electric Fields | One Milkali (One Blood) |
14 | 🇵🇹 ポルトガル | iolanda | Grito |
15 | 🇱🇺 ルクセンブルク | TALI | Fighter |
★:開催国で決勝出場が確定している
★★:今大会から準決勝でライブ・パフォーマンスを行う
準決勝2
出順 | 国 | アーティスト | 曲 |
---|---|---|---|
1 | 🇲🇹 マルタ | Sarah Bonnici | Loop |
2 | 🇦🇱 アルバニア | BESA | TITAN |
3 | 🇬🇷 ギリシャ | Marina Satti | ZARI |
4 | 🇨🇭 スイス | Nemo | The Code |
5 | 🇨🇿 チェコ | Aiko | Pedestal |
★ | 🇫🇷 フランス | Slimane | Mon amour |
6 | 🇦🇹 オーストリア | Kaleen | We Will Rave |
7 | 🇩🇰 デンマーク | SABA | SAND |
8 | 🇦🇲 アルメニア | LADANIVA | Jako |
9 | 🇱🇻 ラトビア | Dons | Hollow |
★ | 🇪🇸 スペイン | Nebulossa | ZORRA |
10 | 🇸🇲 サンマリノ | MEGARA | 11:11 |
11 | 🇬🇪 ジョージア | Nutsa Buzaladze | Firefighter |
12 | 🇧🇪 ベルギー | Mustii | Before The Party’s Over |
13 | 🇪🇪 エストニア | 5MIINUST x Puuluup | (nendest) narkootikumidest ei tea me (küll) midagi |
★ | 🇮🇹 イタリア | Angelina Mango | La Noia |
14 | 🇮🇱 イスラエル | Eden Golan | Hurricane |
15 | 🇳🇴 ノルウェー | Gåte | Ulveham |
16 | 🇳🇱 オランダ | Joost Klein | Europapa |
決勝
37か国代表曲
🇦🇱 アルバニア/Albania
BESA – TITAN
🇦🇲 アルメニア/Armenia
LADANIVA – Jako
🇦🇺 オーストラリア/Australia
Electric Fields – One Milkali (One Blood)
🇦🇹 オーストリア/Austria
Kaleen – We Will Rave
🇦🇿 アゼルバイジャン/Azerbaijan
FAHREE feat. Ilkin Dovlatov – Özünlə Apar
🇧🇪 ベルギー/Belgium
Mustii – Before The Party’s Over
🇭🇷 クロアチア/Croatia
Baby Lasagna – Rim Tim Tagi Dim
🇨🇾 キプロス/Cyprus
Silia Kapsis – Liar
🇨🇿 チェコ/Czechia
Aiko – Pedestal
🇩🇰 デンマーク/Denmark
SABA – SAND
🇪🇪 エストニア/Estonia
5MIINUST x Puuluup – (nendest) narkootikumidest ei tea me (küll) midagi
🇫🇮 フィンランド/Finland
Windows95man – No Rules!
🇫🇷 フランス/France
Slimane – Mon amour
🇬🇪 ジョージア/Georgia
Nutsa Buzaladze – Firefighter
🇩🇪 ドイツ/Germany
ISAAK – Always On The Run
🇬🇷 ギリシャ/Greece
Marina Satti – ZARI
🇮🇸 アイスランド/Iceland
Hera Björk – Scared of Heights
🇮🇪 アイルランド/Ireland
Bambie Thug – Doomsday Blue
🇮🇱 イスラエル/Israel
Eden Golan – Hurricane
🇮🇹 イタリア/Italy
Angelina Mango – La noia
🇱🇻 ラトビア/Latvia
Dons – Hollow
🇱🇹 リトアニア/Lithuania
Silvester Belt – Luktelk
🇱🇺 ルクセンブルク/Luxembourg
TALI – Fighter
🇲🇹 マルタ/Malta
Sarah Bonnici – Loop
🇲🇩 モルドバ/Moldova
Natalia Barbu – In The Middle
🇳🇱 オランダ/Netherlands
Joost Klein – Europapa
🇳🇴 ノルウェー/Norway
Gåte – Ulveham
🇵🇱 ポーランド/Poland
LUNA – The Tower
🇵🇹 ポルトガル/Portugal
iolanda – Grito
🇸🇲 サンマリノ/San Marino
MEGARA – 11:11
🇷🇸 セルビア/Serbia
TEYA DORA – RAMONDA
🇸🇮 スロベニア/Slovenia
Raiven – Veronika
🇪🇸 スペイン/Spain
Nebulossa – ZORRA
🇸🇪 スウェーデン/Sweden
Marcus & Martinus – Unforgettable
🇨🇭 スイス/Switzerland
Nemo – The Code
🇺🇦 ウクライナ/Ukraine
alyona alyona & Jerry Heil – Teresa & Maria