アメリカの国民的歌手ケニー・ロジャース逝去、81歳


2560 1440 VOICE Editor

60年にわたり音楽活動を続け、「The Gambler」、「Islands In The Stream」、「Lucille」など数々のヒット曲を生み、愛され続けてきたアメリカの国民的カントリー歌手ケニー・ロジャース(Kenny Rogers)が現地時間3月20日、米南部ジョージア州サンディ・スプリングズの自宅で亡くなった。81歳。家族によると、老衰によりホスピスのケアのもと、家族に囲まれ安らかに息を引き取った。

深みと温かみのあるハスキーボイスで愛され、24曲の全米ヒット、アルバム累積売上枚数はアメリカだけでも5000万枚を超え、3度のグラミー賞、5度のCMAアワード(Country Music Association Awards)を受賞。2013年には、カントリー・ミュージックの殿堂入りを果たし(Country Music Hall of Fame)、その音楽で時代を築いた。カントリーミュージック協会(CMA)は「カントリー・ミュージックは偉大なケニー・ロジャースを失いました、カントリーの音楽史に永遠に刻む人です。私たちの思いは、彼のご家族そして友人とともにあります」(SNS)。そしてCMAのCEO、Sarah Trahernは「ケニーは音楽ジャンルと国境を超越したアーティストの一人でした」、「彼はカントリー・ミュージックを世界中のオーディエンスに広めた世界的スターです。何年もの間、彼と仕事ができて光栄でした。そして私は彼の優しさと思いやりの心をいつまでも忘れません」(CMA)。

“You got to know when to hold ‘em, know when to fold ‘em / Know when to walk away and know when to run”

アメリカ南部テキサス州ヒューストン生まれ。ジャズ、フォーク音楽の経験を経て、60年代に結成したロック・バンドThe First Editionで成功を収め、1976年に解散後ソロキャリアを始動。翌年のカントリー・バラード「Lucille」(’77)で全米ビルボード・カントリー・ソングで首位となった他、ポップ・チャートで活躍しジャンルを超えて音楽ファンを魅了。「Lucille」は「Hot 100」で第5位を記録し、グラミー賞を初受賞した。その翌年には、ギャンブラーが語り手にポーカーの極意を伝授するストーリーテリングの「The Gambler」をリリースし、代表曲「The Gambler」(’78)は彼を揺るぎないスターダムにのしあげた。「The Gambler」はカントリー首位、2度目のグラミー賞を受賞した他、1980年には同曲をもとにTV映画化(Kenny Rogers as The Gambler)。ケニー・ロジャースはその主演を演じ、マルチな才能で70年代、80年代アメリカを代表するスーパースターとなった。

ライオネル・リッチー(Lionel Richie)プロデュースの「Lady」(’80)、「Through the Years」(’82)など立て続けにヒットを飛ばしたケニー・ロジャース。本人は2006年、CNNで「自分が特別優れた歌手だと思ったことは一度もなかった」、「だが、ヒット曲を見つける才能はあるといつも思っていた」。「The Gambler」と並び、ケニー・ロジャースを象徴する曲で、ドリー・パートン(Dolly Parton)とのデュエット曲「Islands in the Stream」(’83)の誕生には、そんな彼の人柄と音楽人生を伺わせるあるエピソードが残されている。

健康上の理由から、家族との時間を過ごすため2015年、ケニー・ロジャースは、フェアウェル・ツアーをもって引退することを発表。引退はしたくなかったが、ファンの一人一人に感謝を伝える機会が欲しかったという。そして2017年10月25日、ナッシュビルで開催された一夜限りのファイナル・コンサート『All in for the Gambler: Kenny Rogers’ Farewell Concert Celebration』には、ライオネル・リッチー、アリソン・クラウス(Alison Krauss)、リーバ・マッキンタイア(Reba McEntire)、クリス・ステープルトン(Chris Stapleton)ら名だたるスターが集まった。特別ゲストには長年のデュエット・パートナーだったドリー・パートン(Dolly Parton)が登場した。

当時79歳だったケニー・ロジャースは、PEOPLEでドリー・パートンとの関係を振り返り、「私たちのとても温かく、甘い30年間の友情関係を大変誇りに思っている」、「全ての始まりはバリー・ギブ(Barry Gibb)が書いたIslands in the Streamだった」。4日間歌った後、どうしてもヒットする曲には思えず、「ついに私はこう言ったんだ、”バリー、もうこの曲は好きになれないよ”とね」。するとバリーは「私たちに必要なのは何だろう?ドリー・パートンだ」。その時閃いたという二人、ケニー・ロジャースは「私はその時スタジオにいて、彼女はちょうど階下にいたんだ。私のマネージャーが”今さっき彼女を見た!”と言うものだから、私は”彼女をつかまえて!今すぐ!”ってね」。「彼女が部屋にやってきて、ひと度その歌を歌い始めたら、その歌は全く別物になった。その歌自身の魂が宿ったんだ」。「Islands in the Stream」は「Lady」に続いて、全米ビルボード「Hot 100」の頂点に立ち、その後も二人は数々のデュエット曲で魅了。2013年の「You Can’t Make Old Friends」が二人の最後のデュエット曲となった。そして2017年、ファイナル・コンサートのラスト、ケニー・ロジャースはドリー・パートンと「You Can’t Make Old Friends」、そして「Islands in the Stream」を歌い、長きにわたる音楽活動に幕を下ろした。

2015年の引退発表の際、ケニー・ロジャースは「こんなにも長いキャリアを楽しんでこられてとても幸運だった。私のファンをはじめ、その道のりの中で私を助けてくれた全ての人と出会えて、とても幸運だった」(Official Website)と振り返る。「しかし家族と過ごす時間を大切にしなければならない時が来た」。

ドリー・パートンは訃報を受けて、「お別れの時が来るまで、どれほどその人を愛していたかわからないものだわ」、「全ての音楽と成功を超えて、彼を愛していました、素晴らしい人、真の友達として」。「神のご加護があらんことを、これだけは忘れないで、いつまでもあなたを愛しています」。

家族によると、新型コロナウイルスに関する懸念から、近親者による小規模な葬儀を予定。「後日ファンや友人らがケニー・ロジャースの人生を祝福する機会を心待ちにしています」、と話している。

関連記事

新着記事

洋楽最新情報をフォロー