チャールズ英国王戴冠式祝賀コンサート ライオネル・リッチー、ケイティ・ペリーら豪華スター、音楽で祝福


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昨年9月のエリザベス英女王の死去に伴い即位したチャールズ3世の戴冠式が現地時間2023年5月6日、ロンドンのウェストミンスター寺院で執り行われた。戴冠式は1953年のエリザベス女王の戴冠以来、約70年ぶり。1066年以来戴冠式が行われてきたウェストミンスター寺院には、各国の元首・王族を含む約2,200人が参列し、千年以上にわたり受け継がれる伝統的な宗教儀式が行われた。

そのチャールズ国王とカミラ王妃の戴冠を祝うイベントの一つとして、音楽、演劇、バレエ、ダンスのメドレーとなる祝賀コンサート「The Coronation Concert at Windsor Castle」英国王室)が現地時間5月7日、ロンドン郊外のウィンザー城で行われた。ウィンザー城の庭園に設置された会場には抽選で選ばれた約20,000人の市民や、国王のチャリティーのボランティアらが招待され、チャールズ国王やカミラ王妃、ウィリアム皇太子、キャサリン皇太子妃、ジョージ王子やシャーロット王女ら王室のメンバーも鑑賞するなか、戴冠式に参列した『アメリカン・アイドル』(American Idol)現審査員の2人、アメリカ出身のライオネル・リッチー(Lionel Richie)とケイティ・ペリー(Katy Perry)がそれぞれ代表曲を歌い祝福した。

またイギリス出身のテイク・ザット(Take That)、イギリス出身のパロマ・フェイス(Paloma Faith)、イギリス出身のカラム・スコット(Calum Scott)、イギリス出身のオリー・マーズ(Olly Murs)、そしてイタリア出身のアンドレア・ボチェッリ(Andrea Bocelli)、中国出身のラン・ラン(Lang Lang)ら世界的アーティストらがライブ・パフォーマンスを披露した。

「国をライトアップ」(Lighting up the Nation)を中心テーマにした祝賀コンサートの模様は、BBCで約2時間にわたり生放送され、TV平均視聴者数1010万人、最高視聴者数1230万人を記録した(現地時間8日BBC発表)。

その歴史的イベントはBBC Radio 1の英DJピート・トング(Pete Tong)がライブ・パフォーマンスをキックオフした。その冒頭では、エリザベス女王の死去後、チャールズ国王が即位後国民に向けて初めて行ったテレビ演説(2022年9月9日)の一部「あなたが英国のどこに住んでいても、世界中の英連邦王国のどこに住んでいても、あなたの背景や信念が何であれ、(私が生涯を通じてそうしてきたように)忠誠心、敬意、そして愛をもってあなたに仕えるよう努めます」───And wherever you may live in the United Kingdom, or in the Realms and territories across the world, and whatever may be your background or beliefs, I shall endeavour to serve you with loyalty, respect and love───の音声が会場に流れた。

その”love”からイギリスの歌手JERUBとVula Malingaを迎えてルディメンタル(Rudimental)の全英首位曲「Feel the Love」(2012)を披露。パフォーマーらが「LOVE」と書かれた旗を振るなか、ステージ上部に設置された王冠風の巨大スクリーンには「LOVE」の文字が映し出され、愛のメッセージで歴史的コンサートの幕を開けた。上下白のスーツのオリー・マーズ(Olly Murs)は「Dance With Me Tonight」(2011)を軽快なステップのムーブとともに披露した。

チャールズ国王が取り組んできた多様性とインクルーシブが戴冠式と同様に大きなテーマとなった祝賀コンサートでは、多様なコミュニティを代表し、指揮者ギャレス・マローン(Gareth Malone)のもとこのコンサートのために特別に結成された「The Coronation Choir」(戴冠式合唱団)がエミリー・サンデー(Emeli Sandé)の曲「Brighter Days」(2022)を披露した。南アジア女性合唱団、難民合唱団、LGBTQ+グループ、聴覚障害のある合唱団などイギリス中の多様な背景・宗教的価値観を持ち「モダンなイギリスを代表する」18の合唱団から構成、その明るい未来へ300人が美しいハーモニーを響かせた。

ラン・ラン(Lang Lang)のピアノ伴奏でニコール・シャージンガー(Nicole Scherzinger)は、1998年のディズニー・アニメ映画『ムーラン』より、古いしきたりや周囲の期待との葛藤の中で真の自分を貫こうとする力強いメッセージが込められたクラシカルな「リフレクション」(Reflection)を優雅にもダイナミックに歌い上げた。

続いてロイヤル・バレエ団、ロイヤル・オペラ、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー、王立音楽大学、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートによるスペシャル・パフォーマンス。ルワンダ生まれスコットランド出身の俳優チュティ・ガトゥ(Ncuti Gatwa)とアジア系の英女優メイ・マック(Mei Mac)は、ミュージカル『ウエスト・サイド物語』(1957)より「Somewhere」の演劇を英国ロイヤル・バレエダンサーMarcelino SambéとFrancesca Haywardによる華麗なバレエとともに披露した。

続いてピアノの英コンペティション番組『The Piano』シーズン1(2023)で優勝しイギリス最高のアマチュアピアニストとなった盲目・自閉症の13歳少女ルーシー・イリングワース(Lucy Illingworth)は母に連れられステージに上り、J.S.バッハ「平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第1曲 プレリュード」の優美な演奏で魅了、深い感動に包まれた。

スティーヴ・ウィンウッド(Steve Winwood)はスクリーンに次々に映し出された世界中のイギリス連邦加盟国の合唱団とともにアップリフティングな「Higher Love」(1986)を披露。ナイジェリアの「アフロビートの女王」Tiwa Savageは、エメラルドグリーンの綺羅びやかなドレスで登場し、ビヨンセ(Beyoncé)のサントラ『The Lion King: The Gift』より「Keys To The Kingdom」(2019)を歌いアフリカの甘美な鼓動を注いだ。

そして舞台は一転、世界を代表するオペラ歌手の二人が共演、テノール歌手アンドレア・ボチェッリ(Andrea Bocelli)は、戴冠式で賛美歌「キリエ・エレイソン」を歌ったバス・バリトン歌手サー・ブリン・ターフェル(Bryn Terfel)とデュエットで1945年のミュージカル『回転木馬』より絆と希望の歌「You’ll Never Walk Alone」をオーケストラの演奏と合唱団による美しいコーラスのなか壮大に歌い上げ、会場は歓声に包まれた。その歌にチャールズ国王とカミラ王妃はイギリスの国旗を振りながら穏やかな笑顔をみせた。アンドレア・ボチェッリは「国王からこの歌”You’ll Never Walk Alone”のリクエストがありました」(Entertainment Tonight)と選曲の背景について語り、「その歌詞は国王自身にとって励みになっていると思うのです」と語る。

ライオネル・リッチー(Lionel Richie)は、コモドアーズ(Commodores)のクラシカルなポップ・ソウル「Easy」(1977)からギアアップし「All Night Long (All Night)」(1983)でダンスフロアさながらの会場は熱気に包まれ、王室メンバーも席から立ち上がってリズムに乗り踊る姿も見られた。

そして歓声のなか登壇したウィリアム皇太子は、「とても特別な夜にしてくれた皆さんに心から感謝します。 父について、そしてなぜ今週末が重要であると私が信じているのかについて少しお話ししたいと思います。 でも心配しないでください。ライオネルとは異なり、私は夜通し(all night long)にはなりません」とジョーク、国王は笑みがこぼれる。

「祖母が戴冠したときに言ったように、戴冠式は私たちの未来への希望の宣言です。そして、祖母が天国から私たちを見守っていることを私は知っています。彼女は誇り高い母親になるでしょう。 すべてのお祝いは素晴らしいものですが、その中心には一つのシンプルなメッセージがあります。 それは奉仕です」。

「昨日ウェストミンスター寺院に入った父の最初の言葉は、奉仕の誓いでした。 奉仕を続けることの誓いでした。 父が50年以上にわたり英国の隅々まで、イギリス連邦全土、そして世界中で、奉仕することに専念してきたからです、現在および将来の世代のため、そしてその記憶を無視してはならない人々のために」。

恵まれない背景を持つ 100 万人以上の若者を支援し、その願いを実現させてきたことを触れた上で、「そして、おそらく最も重要なことは、私の父が、あらゆる信仰、あらゆる背景、あらゆるコミュニティの人々が称賛され、支援されるに値することを常に理解していたことです」。「パパ、私たちは皆あなたをとても誇りに思っています」、「神よ国王を守り給え」と心に触れるスピーチを行い、会場は拍手と歓声で溢れた。

続いて登場したパロマ・フェイス(Paloma Faith)が、アップビートなトロピカル・ハウス・アンセム「Lullaby」(2018)を歌い始めると、「LIGHT UP THE NATION」の文字がスクリーンに映し出され、ブラックプールタワー、タインブリッジなどのランドマーク、エディンバラ城などイギリス各地が色鮮やかにライトアップされていく映像が流れた。夜空には無数のドローンが、水を注ぐじょうろや火を吐くドララゴンを光で描き、演奏が終わるとウィンザー城にプロジェクションマッピングでイギリスの国旗が映し出され、鳴り止まぬ歓声のなか「KEEP SHINING」の文字が映し出された。

地球環境保護を訴える映像とナレーションのなか、英ピアノ奏者アレクシス・フレンチ(Alexis Ffrench)は亡き愛する人のために書いたバラード「Guiding Light」(2022)を演奏。予定されていたフレイヤ・ライディングス(Freya Ridings)は体調不良のため、代わってZak Abelがアレクシス・フレンチのピアノ伴奏でシンプル・マインズ(Simple Minds)の「Don’t You (Forget About Me)」(1985)をバラード調にアレンジしカバー、上空には蝶やクジラ、ハチ、うさぎ、フクロウが次々に無数のドローンの光で描かれ会場からは歓声が上がった。

ディズニー・プリンセス風の黄金に輝くヴィヴィアン・ウエストウッドの豪華ドレスを纏い現れケイティ・ペリー(Katy Perry)は、「Roar」(2013)を熱唱、ドローンの光が夜空にライオンを描きシャーロット王女も席で一緒に歌う姿も見せるなか、会場は鳴り止まぬ歓声に包まれた。

ステージでケイティ・ペリーは「みなさんと一緒にいられてとても幸せです。愛しているわ」、「そして戴冠式の祝賀コンサートにお招きいただきありがとうございます。次の曲を国王に捧げたいと思います。またブリティッシュ・アジアン・トラスト(British Asian Trust)とその子供保護基金(Children’s Protection Fund)のために私たちが一緒に取り組んでいる仕事に捧げたいと思います」。チャールズ3世国王が2007年に設立したブリティッシュ・アジアン・トラストのアンバサダーに2020年に就任したケイティ・ペリーは、「とても多くの若い人たちの心のなかに花火を咲かせてくれてありがとうございます」と感謝の言葉を述べ、「Firework」(2010)の熱気溢れるパワフルなパフォーマンスで会場を沸かせた。

2019年のツアー以来のライブ・パフォーマンスとなるテイク・ザット(Take That)は、カラム・スコット(Calum Scott)とDJロビン・シュルツ(Robin Schulz)を迎えて全英首位曲「Greatest Day」(2008)のリミックス「Greatest Day Remix with Calum Scott & Robin Schulz」(2023年5月5日リリース)を披露。全英首位曲「Shine」(2007)、世界的ヒット曲「Never Forget」(1995)を続けて披露し、歴史的祝賀コンサートの最後を飾った。

セットリスト

出演者曲名〈オリジナル・アーティスト〉
ピート・トング
Pete Tong
Feel the Love (2012)
〈ルディメンタル / Rudimental〉
オリー・マーズ
Olly Murs
Dance With Me Tonight (2011)
戴冠式合唱団
The Coronation Choir
Brighter Days (2022)
〈エミリー・サンデー / Emeli Sandé〉
ラン・ラン
Lang Lang
ニコール・シャージンガー
Nicole Scherzinger
リフレクション (1998)
ディズニー・アニメ映画『ムーラン』より
ロイヤル・バレエ団
ロイヤル・オペラほか
Ncuti Gatwa
Mei Mac
Somewhere (1957)
ミュージカル『ウエスト・サイド物語』より
ルーシー・イリングワース
Lucy Illingworth
平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第1曲 プレリュード
Prelude in C Major
〈J.S.バッハ / J.S. Bach〉
スティーヴ・ウィンウッド
Steve Winwood
Higher Love (1986)
ティワ・サヴェージ
Tiwa Savage
KEYS TO THE KINGDOM (2019)
〈Tiwa Savage, Mr Eazi〉
サントラ『The Lion King: The Gift』より
アンドレア・ボチェッリ
Andrea Bocelli
サー・ブリン・ターフェル
Sir Bryn Terfel
You’ll Never Walk Alone (1945)
ミュージカル『回転木馬』より
ライオネル・リッチー
Lionel Richie
Easy (1977) – コモドアーズ / Commodores
All Night Long (All Night) (1983)
ウィリアム皇太子演説
パロマ・フェイス
Paloma Faith
Lullaby (2018)
〈Sigala, Paloma Faith〉
アレクシス・フレンチ
Alexis Ffrench
Guiding Light
アレクシス・フレンチ
Alexis Ffrench
ザック・エイベル
Zak Abel
Don’t You (Forget About Me) (1985)
〈シンプル・マインズ / Simple Minds〉
ケイティ・ペリー
Katy Perry
Roar (2013)
Firework (2010)
テイク・ザット
Take That
カラム・スコット
Calum Scott
DJロビン・シュルツ
Robin Schulz
Greatest Day Remix with Calum Scott & Robin Schulz (2023)
オリジナル:Greatest Day (2008)
テイク・ザット
Take That
Shine (2007)
Never Forget (1995)

演説

■ウィリアム皇太子スピーチ全文

Good evening, Your Majesties. Good evening, Windsor!

A huge thank you to everyone for making this such a special evening. I want to say a few words about my father, and why I believe this weekend is so important. But don’t worry, unlike Lionel, I won’t go on all night long.

As my Grandmother said when she was crowned, Coronations are a declaration of our hopes for the future. And I know she’s up there, fondly keeping an eye on us. She would be a proud mother. For all that celebrations are magnificent, at the heart of the pageantry is a simple message: Service.

My father’s first words on entering Westminster Abbey yesterday were a pledge of service. It was a pledge to continue to serve. Because for over 50 years, in every corner of the UK, across the Commonwealth and around the world, he has dedicated himself to serving others, both current and future generations, and those whose memory must not be neglected.

Take the natural world. He warned us of the risks to our planet’s health long before it was an everyday issue. Or the Prince’s Trust. It has supported over a million young people, many from disadvantaged backgrounds, to realise their ambitions.

And, perhaps most importantly of all, my father has always understood that people of all faiths, all backgrounds, and all communities, deserve to be celebrated and supported.

Pa, we are all so proud of you.

I also want to express my pride and gratitude for the millions of people who serve, in the forces, in classrooms, hospital wards and local communities. I wish I could mention you all. Your service inspires us all, and tonight we celebrate you too. I commit myself to serve you all. King, Country and Commonwealth.

God Save The King!

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