切なく響く涙の歌声14歳少女エヴィ・クレア「Yours」、AGT決勝進出も末期ガン父亡くなる


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『アメリカズ・ゴット・タレント』2017ファイナル進出決定の翌日に。

今年5月より放送が始まった全米高視聴率タレントオーディション番組『America’s Got Talent』(アメリカズ・ゴット・タレント)シーズン12がいよいよ来週(現地時間9月19日火曜日)、そのファイナルを迎えます。全米屈指の才能が集結し、その10組の1人となったのは、クリスティーナ・ペリー(Christina Perri)の「Arms」に思いを込め、全米を涙と感動で包んだ当時13歳少女エヴィ・クレア(Evie Clair)

歌手を夢見てアリゾナ州の小さな田舎町フローレンスからやってきた少女は、「1年前、私のパパが癌になって、…、ステージ4の結腸がんで、5%しか生きる望みはないって、でもパパ、私たちの家族を支えるため今も働き続けているの。だから今夜、パパのために歌うためここに来たの」。あのとき舞台袖で見守っていた父親(Amos Abplanalp)は、その後入院生活に。病床で娘を最後まで応援しながらも、先週(現地時間9月7日)、家族に見守られ亡くなったことが報じられました(Today)。

末期ガンと闘う父へ捧ぐ最後の曲となったのは、亡くなる2日前。ゴールデン・ブザー(Golden Buzzer)を得ることなく苦しい闘いを強いられるなか、胸に迫る美しい歌声で自力で準決勝へ勝ち上がり、迎えた準決勝の舞台。

幻想的ステージで父親へ、神への愛をも感じさせるカバーに。敬虔なクリスチャン(LDS)でもある少女は同大会では、CCMでないものの神への愛とも解釈し得るカバーで、家族愛と信仰を同時に響かせる。それは全て父が教えてくれたもの。

見せたかった共に闘う姿。「アメリカズ・ゴット・タレントが私たち家族にとって明るい光になっているの」。生命維持装置に繋がったこの日、父にとって最後の歌になるかもしれない。英エラ・ヘンダーソン(Ella Henderson)の切なくも深き愛を綴るバラード曲「Yours」に全てを込めて。「私が苦しいとき/あなたは私をその暗闇から救い出してくれる/その腕でしっかりと私を受けとめ/だから私は決して崩れ落ちることはない」、何年先も伝えたかったはずの思いをその歌詞に、情感滲む歌声で歌い上げます。

“Yours”
Written by Ella Henderson, Josh Record
日本語訳歌詞

(バース1)
あなたの冬のコートに腕を通す
あなたのお気に入りのコート
ずっとそばにいる、そう感じる
かけがえのない存在
目を覚ますと
その瞳で私をとらえる
私の枕に、美しき人
光閉ざす間、私を抱きしめる

(プリ・コーラス)
そしてそれを解き放つ自分の強さを見つける
ずっと怖れていた言葉
でもあなたといて、さらけ出すことを知る
今にも心が叫び出しそう

(コーラス)
愛する心の準備ができているように感じるから
あなたの全て、それ以上になりたい
いつもあなたが言ってくれること、わかってる
でもちゃんと知りたい
私はあなたのものだって

(バース 2)
私が苦しいとき
あなたは私をその暗闇から救い出してくれる
その腕がしっかりと私を受けとめ
だから私は崩れ落ちることはない

(プリ・コーラス)
そして私はそれを解き放つ自分の強さを見つける
ずっと怖れていた言葉
でもあなたといて、さらけ出すことを知る
今にも心が叫び出しそう

(コーラス)
愛する心の準備ができているように感じるから
あなたの全て、それ以上になりたい
いつもあなたが言ってくれること、わかってる
でもちゃんと知りたい
私はあなたのものだって

あなたのものだって

スタンディングオベーションに包まれるなか、辛口審査員でワン・ダイレクション(One Direction)、フィフス・ハーモニー(Fifth Harmony)らを生んだ英サイモン・コーウェル(Simon Cowell)は「前にも言ったが、本当にたいしたものだ」、苦しみの中で日に日に体力を奪われ、変わり果てていく姿。共に闘う家族も、肉体的・精神的に追い込まれ、無力感、喪失感とともに、うつ病を患うことも少なくない現実。

エヴィの父親の状態を把握しているサイモン・コーウェルは、「美しい歌、美しい君の歌声。この曲を知っているが、君はそれを自分のものにしている。トーンであったり、ピッチであったり、見事だよ。君は穏やかでやさしい歌にしている。君のお父さんはきっと君のことを誇りに思うだろう」。

決勝進出を決めたエヴィは、翌木曜日に飛行機で戻る予定だったが、番組の取り計らいによりその日の夜、飛行機でそのまま家へ。翌木曜日15時30分、妻と5人の子どもたちに見守られながら父はこの世を後にした(Semi-Finals / Evie Clair)。

エラ・ヘンダーソンの力強いソウルフルなオリジナルに対して、英バーディー(Birdy)を彷彿とさせる情感誘う心震える歌声に、映画のシーンのように流れ出す物語。同カバーを聞いた本人エラ・ヘンダーソンは「Aww!!!とっても大好き ❤️❤️ 美しい歌声だわxx」と称賛の声を寄せます(twitter)。

サイモン・コーウェルの英『The X Factor』シーズン9(2012年)ファイナリストで彼のレーベル「Syco Music」よりデビュー。エラ・ヘンダーソンがJosh Recordと共にライティングしたバラード曲「Yours」は、そのデビュー・アルバム『Chapter One』に収録される。

ありがとう。

その歌声を披露した翌日、決勝戦への進出決定がステージで発表され、歓喜に包まれるのも束の間。発表翌日、それまで闘っていた父も、エヴィら家族に見守られながら息を引き取ります。「パパ、私がパパの誇りになっていてくれたらと願うわ。パパのためにずっと頑張ってきたんだよ、これからもパパのために頑張る」、自身のインスタグラムで父と娘の思い出の写真とともに思いを語ります。


「信じること、そして強さを教えてくれたパパ、心からありがとう。パパすごくずっと頑張ってきて、パパの全ての痛み、ようやく解放されたわ。この世界よりも12億兆倍も素晴らしい場所にいる、そこですごく幸せにしているって、そう思ってる」、「パパ、ものすごく寂しくなるよ。サルサのバッファローウィングの美味しさを教えてくれてありがとう、そして何よりも、神様を信じることを教えてくれてありがとう。たっくさんの愛を込めて」。

生命維持装置を切ることを余儀なくされるなか、母親(Hillary Abplanalp)は「子どもたちが着くと、状況を説明してそれぞれに意見を聞いたわ。子どもたち皆泣きながらその決断に至ったわ。一人一人、生命維持装置を切る前、パパとの最後の時間を作って…」、そして生命維持装置を外した最後の15分間、父親は自力で呼吸するなか、エヴィら子どもたちは傍らで泣き崩れていた当時を綴ります。

家に戻り、父親の映るホームビデオを見ながら笑顔を取り戻していると明かす母親。「夫が亡くなる前夜、娘は決勝進出を決めたわ。最後の2、3ヶ月、娘が夢に突き進む姿を見守っていたの。それは夫にとって人生最高の時間だったわ」(Hillaryブログ「teamamos」)。

teamamos

メッセージ

今年7月のジャッジ・カットでのメイシー・グレイ(Macy Gray)「I Try」(YouTube動画)に続いて、現地時間8月22日、準々決勝戦(Quarterfinals)で心に触れるバーディー(Birdy)「Wings」を披露。見事準決勝へ進出を果たした。

クレアの父が亡くなったニュースに、エラ・ヘンダーソンは「私の想い、祈りをクレアとその家族とともに。たくさんの愛と大きなハグを…」、そして最初の舞台で披露した「Arms」のオリジナルのクリスティーナ・ペリー(Christina Perri)も「あなたの父が亡くなったと知りとても残念でなりません。クレアに、そしてご家族の方々に、私の愛と祈りを」、その言葉を送ります。

決勝戦へ

“12歳歌う天才腹話術少女”ダーシ・リン(Darci Lynne Farmer)。審査員を巧みに”巻き込み”、コメディアン×歌手×腹話術師で他を寄せ付けないエンターテイナーの総合力で魅せる。12歳ながらファイナル進出を決めた際には、喜びをみせる他の候補者と異なり、胸をなでおろす姿をみせた。

決勝戦には、笑いあり、凄技ありでサイモンも悩殺する”12歳歌う天才腹話術師”少女「ゴールデン・ブザー」獲得ダーシ・リン(Darci Lynne Farmer)をはじめ、圧倒的歌唱力で魅せる10歳少女「ゴールデン・ブザー」獲得アンジェリカ・ヘイル(Angelica Hale)、聴覚を失っても歌うことを諦めなかった米ジャズ歌手「ゴールデン・ブザー」獲得マンディ・ハーヴェイ(Mandy Harvey)他、全米を魅了するエンターテイナーが集結。

ゴールデン・ブザーは予備選において他の審査員の判断に関わりなく一気にライブショー(準々決勝ラウンド)へ進む1シーズン1審査員ら1回きりの審査員らの特権。その特権が強化されたシーズン10以降、優勝者は全てゴールデン・ブザーを手にしていた者。現在圧倒的人気を誇るダーシ・リン、アンジェリカ・ヘイルら、ゴールデン・ブザー組みが最有力候補に名前があがります。

現地時間6月20日放送の最初の予備オーディション。クリスティーナ・ペリー(Christina Perri)の「Arms」。日本語訳他、記事『全米に感動と涙、13歳少女が末期がんⅣと闘う父へ、涙こらえ歌うカバー曲「Arms」』

非常に厳しい戦いに加え、エヴィが歌える状態であるか。Extrahでのインタビューでサイモン・コーウェルはエヴィが戻ってこられない可能性も示唆。欠場になる可能性を米メディアは報じます。

祈りを、永遠に。今はひととき、またいつか遠くない日、私たちは一緒になる日がくるわ」、そう自分に言い聞かせるように綴る14歳。誰が勝ってもおかしくない決勝戦。彼女にとってはもう勝ち負けではないかもしれない決勝戦。いよいよ4日後(現地時間9月19日火曜日開催、結果発表20日水曜日)、その日を迎えます。

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