アンドレア・ボチェッリ『Si~君に捧げる愛の歌』全米ビルボード初登場第1位 24年の時を経て


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世界9000万枚を超えるアルバムを売り上げ、イタリアのみならず世界中から愛され続けてきたテノール歌手アンドレア・ボチェッリ(Andrea Bocelli)、その最新アルバム『Sì』(邦題:Sì~君に捧げる愛の歌)が今週の全米ビルボード総合アルバムチャート「Billboard 200」で初登場第1位を記録、自身初となる「Billboard 200」首位に輝いた(Billboard、※2018年11月10日付)。先月26日にリリースされた『Sì』は集計締め切りの11月1日まで126,000同等アルバム数を記録し、内、123,000枚のアルバムセールスを記録。これまで3週連続で首位を獲得していたレディー・ガガ(Lady Gaga)による映画『アリー/ スター誕生』(原題:A Star Is Born)のサントラ『A Star Is Born』を第2位に抑えた。

アンドレア・ボチェッリはこれまで2009年クリスマス・アルバム『My Christmas』で5週連続で第2位、続く2013年『Passione』で第2位。惜しくも届いていなかった首位、今年還暦を迎えたイタリアのテノール歌手が『My Christmas』以来の自己最高週間セールス記録で達成し、セルジョ・マッタレッラ伊大統領からも祝福の声が寄せられたという。クラシカル・アルバムとしては、2011年に161,000枚を売り上げ初登場第2位となったジャッキー・エヴァンコ(Jackie Evancho)の『Dream With Me』(※2011年7月2日付)以来の週間最高セールス記録。クラシカル・アルバムが「Billboard 200」で第1位を獲得するのは、ジョシュ・グローバン(Josh Groban)の2007年クリスマスアルバム『Noël』(※2008年1月5日付)以来とBillboardは報じている。

デビュー・アルバム『Il Mare Calmo della Sera』からおよそ24年、今回の栄誉にアンドレア・ボチェッリはプレスリリースで「人生は本当に驚きの連続です」、「この結果を成し遂げることは夢にも思っていませんでした」。「しかし数字とチャートを超えて、何よりも大切なものは皆さんの愛情と誉れです。それは拍手だったり、笑顔だったり、思いやりだったり、拍手喝采にあるものです」。先天性緑内障により重度の視覚障害をもって生まれ、12歳の頃サッカーの試合中、唯一光と色が見えていたという右目にボールが強打し、完全に視力を失ったアンドレア・ボチェッリ。30代半ばまでその音楽キャリアは輝かしいものではなかった。しかし1996年、当時38歳の時、サラ・ブライトマン(Sarah Brightman)とのオペラティック・ポップ・バラード「Time To Say Goodbye」(タイム・トゥ・セイ・グッバイ)でヨーロッパから世界へ旋風を巻き起こすと、1999年センセーションとなったセリーヌ・ディオン(Céline Dion)との「The Prayer」(ザ・プレヤー)でゴールデングローブ賞最優秀歌曲賞を受賞した他、アカデミー賞最優秀歌曲賞、グラミー賞にノミネート。音楽ファンのみならず世界中の人々の心に残る名曲を生み出してきた。

「愛、家族、信仰と希望の祝福」をテーマに14年ぶりにオリジナルソングで挑んだ『Sì』のリード・シングル「If Only」(イフ・オンリー~愛しいあなたへ、記事)のアルバム版では今最も勢いのあるイギリスの新星の一人、デュア・リパ(Dua Lipa)とコラボレーション。穏やかに湧き出る序盤からドラマティックに鼓動していく「If Only」は「Time To Say Goodbye」の「Con Te Partirò」(コン・テ・パルティロ/君と旅立とう)を生んだ作曲家フランチェスコ・サルトーリ(Francesco Sartori)と作詞家、故・ルーチョ・クアラントット(Lucio Quarantotto)によるラスト・ピースで、シネマティックなオーケストラ・サウンドではアンドレア・ボチェッリの舞台で当時15歳の頃から演奏するウクライナのヴァイオリン奏者アナスタシア・ペトリシア(Anastasiya Petryshak)が心に触れる優美な音色を奏でる。昨日公開されたBTSでアンドレア・ボチェッリは「”If Only”は愛の歌。かけがえのない愛です」、「愛だけがゴールドよりも価値のあるもの。とても美しい歌で、とても感動的な歌です」。

「New Rules」、「One Kiss」などアップビートなサウンドにガールズ・パワー漲る歌声で魅了してきたデュア・リパは、アンドレア・ボチェッリの情愛と気品纏う豊麗な歌声に導かれるように、しっとりと繊細にも壮大に歌い上げる。その歌声にアンドレア・ボチェッリは「個性的で、特徴的で、表現力豊かで、彼女の知性のように見事だ」(Billboard)。「彼女と歌っていると、彼女のカリスマとその器用さがわかります」、「”If Only”はエネルギーと情感の価値を謳うものです。デュア・リパのおかげで、そのメッセージが強くなり、彼女の世代の人々により大きな共感を生み出すものとなっています」。

「If Only」をはじめ『Sì』全体に流れる愛のテーマについて、アンドレア・ボチェッリは「愛はまさに世界を動かす原動力、愛なしでは私たちは存在しないでしょう」(伊Billboard)。医師らが勧めた人工中絶を強く断った母親の堅き意志と大きな愛で生まれたアンドレア・ボチェッリ、そうした想いは受け継がれるように、21歳の次男マッテオ・ボチェッリ(Matteo Bocelli)と初めてデュエットした「Fall On Me」(記事)へと流れ込んでいく。「このアルバムでは愛について歌っていますが、それは単に恋人同士の愛だけではなく、あるゆる形の愛です」。「”Fall On Me”は父と子の間に存在するものを歌っています」、「とても現代的な楽曲で、私の楽曲よりマッテオの音楽に近いものです。しかしそれは偽りないもので、とても核心をついています」。

ボブ・エズリン(Bob Ezrin)プロデュースによる『Sì』には、エド・シーラン(Ed Sheeran)との「Amo Soltanto Te」、ジョシュ・グローバン(Josh Groban)との「We Will Meet Once Again」、アイーダ・ガリフッリーナ(Aida Garifullina)との「Ave Maria Pietas」など豪華コラボ曲を収録。オリジナルながら往年の名盤から流れるような美しい曲集となった『Sì』は今週全米ビルボードのアルバム売り上げチャート「Top Album Sales」第1位、そして「Classical Crossover Albums」部門及び「Classical Albums」部門で首位。さらにアンドレア・ボチェッリは今週「Billboard Artist 100」でクラシカル・アクトとしては史上初めて第1位を獲得した(Billboard、※2018年11月10日付)。英語版「Fall On Me」をリード曲とした同時発売のディズニー最新作『くるみ割り人形と秘密の王国』のサントラ『The Nutcracker and the Four Realms』は『Sì』に次いで「Classical Albums」部門初登場第2位。『Sì』は全英アルバム最新チャートでも初登場第1位を記録し、およそ21年ぶりのクラシカル・アルバム首位となった。

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