世界を涙と歓喜に異才DJアラン・ウォーカー、壮麗な抒情詩「Faded / Sing Me To Sleep / Alone」


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シンフォニー・オーケストラになるメロディアスEDMの新境地。19歳にして16億2700万動画再生回数を超える音楽プロデューサー、世界の若者の内面に射し込む"戯曲"。

「あなたは今どこにいるの?…どうにもできない、私が消えていく」。寂寥感流れる美しい旋律に、暗闇の中でそっと囁くような切なく柔らかい歌声、そしてドラマティックな展開の中で心に染み入る深遠な詩的リリック。なぜ彼の音楽がここまで世界を魅了し続けるのか、常識破りの音楽性の中に流れ始めるメッセージ、それは単なる音楽の枠を超えて、ある種の社会的ムーブメントとなって人々の心を動かし始めます。

エストニアのルンム(Rummu)で撮影された。水没したソビエト連邦時代の刑務所跡がある。「Faded」はイギリスのグラミー賞にあたる「ブリット・アワード2017」(2017 Brit Awards)で「最優秀シングル曲賞」(Best single)でノミネートされた。

ノルウェーDJアラン・ウォーカー(Alan Walker)がその世界的ヒットシングル曲「Faded」をリリースしたのは2015年12月、当時18歳。高校生。メインストリームを席巻する今のエレクトロニック・ダンス・ミュージック(以下「EDM」)の潮流とは一線を画し、映画音楽の如く情感震わす美しい旋律に、陽の届かぬ寂寞の内面に流れる同曲は、Spotifyで6億再生回数を超え、母国ノルウェーをはじめヨーロッパなど世界10カ国シングルチャートで第1位を記録。また25カ国以上の国でトップ5入りを果たし、世界29カ国でゴールド/プラチナ・レコードを獲得、瞬く間に世界各国を席巻するその音楽は、やがて社会現象へ。

「あなたは今どこにいるの?」、アラン・ウォーカーのシンボルとなる黒いマスクに黒いフードを纏い、世界終焉を彷彿とさせる廃墟や荒野を駆け巡り、探す求める「Faded」のミュージック・ビデオでは、終着地の廃墟と化した廃屋を前に、孤高と立ち尽くすエンディングを迎えます。しかしそれは壮大な三部作の序章にすぎないことをのちに”ウォーカーズ”は知ることに。

僕が音楽プロダクションを始めたのは2012年、新しいことへの挑戦、テクノロジー世界への探求心に駆られたんだ」、イギリスパン職人の父とノルウェー人の母との間にイギリスで生まれ、2歳からノルウェーのベルゲンで育ったアラン・ウォーカーは、音楽的バックグラウンドがない中、K-391らEDMに強い影響を受け、自ら音楽プロダクションを学び、ゲーマー/プログラマーからDJ/音楽プロデューサーへと転身。その才能は次第に開花し、ビデオ・ゲーム音楽向けのロイヤリティフリー音楽をYouTube等で発信するレーベル英NoCopyrightSoundsから2014年にリリースされた「Fade」が同レーベルで最も人気の曲に。ソニー・ミュージック・スウェーデン傘下MER Musikkとレコード契約後、同曲をベースに(当時まだ知られていない)ノルウェーのシンガー・ソングライター、イセリン・ソルヘイム(Iselin Solheim)がヴォーカルに加わり、EDMのアレンジを経てリ・リリース。失恋ソングか、あるいは…。聴く人によって捉え方が全く異なる曲、エモーショナルなリリックに喪失感と寂寞漂うその世界的ヒット曲「Faded」の誕生を迎えます。

“Faded”
Written by Alan Walker, Jesper Borgen, Mood Melodies and Gunnar Greve
Vocal by Iselin Solheim

(バース1)
私の光にあなたはその影となった
私たちのこと思ってくれていた?
もう一つの星、
あなたが消え去っていく
怖がっていた私たちの未来が、目の前から消えていく
私たちの生きている姿を見たい

あなたは今どこにいるの?
あなたは今どこにいるの?
あなたは今どこにいるの?
全て私だけの幻想だったの?
あなたは今どこにいるの?
あなたはただのまぼろしだったの?

(コーラス)
あなたは今どこにいるの?
アトランティス
海深く
海深く
あなたは今どこにいるの?
もう一つの夢
私の中でモンスターが暴れ狂う
私が消えていく
私が消えていく
どうにもできない、私が消えていく
私が消えていく
どうにもできない、私が消えていく

(バース2)
浅瀬では私が必要としているものは見つからない
さらに深くへと身を潜らせていく
その海の果てしなき静寂
私は息を吹き返す
生きている

あなたは今どこにいるの?
あなたは今どこにいるの?
眩く、しかし失いし光のもとで
あなたは私の心を灯してきたわ
あなたは今どこにいるの?
あなたは今どこにいるの?

(コーラス)
あなたは今どこにいるの?
アトランティス
海深く
海深く
あなたは今どこにいるの?
もう一つの夢
私の中でモンスターが暴れ狂う
私が消えていく
私が消えていく
どうにもできない、私が消えていく
私が消えていく
どうにもできない、私が消えていく

ロイヤリティフリー楽曲を提供し続けていた自身の原点ともなるYouTubeにアップロードした同ミュージック・ビデオは、ヨーロッパをはじめ世界中の若者から絶大な支持を集め、およそ1年で9億7000万動画再生を超え、YouTube史上最多動画再生回数記録で総合第53位に急浮上。その好評価は600万に迫り、YouTube史上総合第12位と驚異的な数値を記録(※現在)。

僕は映画音楽を作曲したいと思っているんだ、僕の音楽はかなり映画音楽だからね。ハンス・ジマー(Hans Zimmer)やスティーブ・ジャブロンスキー(Steve Jablonsky)に物凄い影響を受けているよ。映画で使いやすい楽曲なども制作してみたいと思っているんだ」と米myspaceのインタビューで明かすアラン・ウォーカーは、2016年2月、エレクトロニック要素を除き、自身のピアノ伴奏と11人の弦楽器合奏団からなる「Faded (Restrung)」のミュージック・ビデオをリリース。

スウェーデン・ストックホルムのスウェーデン王立工科大学の地下40〜50mにある原子炉R1で撮影。60年代から稼働していないその場所に足を踏み入れたアラン・ウォーカーは「それはまるで忘れられし何か向かって歩いているようだった」とBTSで語る。ヴォーカルのイセリン・ソルヘイムは「その場所は信じられなかったわ、実際鳥肌が立って、”Wow、これはまさにこの曲にパーフェクトな場所だわ”って思ったわ」と振り返る。アラン・ウォーカーのミュージック・ビデオを一貫して手がけるチームは「何かFadedのミュージック・ビデオに通ずるものを撮りたかったんだ、ゴースト・タウンと黙示録的終末後の感覚。そうしたものとの明確な繋がり、あるいは続編ですらあるようなものにしたかったんだ」と話す。

映画『インターステラー』などで知られる映画音楽界の巨匠ハンス・ジマーの壮麗な世界観、そしてブラック・ブロックを彷彿とさせる黒フードの合奏団によるある種の宗教性をも想起させるシンフォニーは、リスナーを黙示録的終末の世界の主人公へと導きます。

それまでの華やかなEDMとは対照的に、現実か幻影か、存在が消えていく不思議な感覚を体感する中で、私たちは失われし楽園と自らの内面に眠る孤独の存在との対面へ。EDMとは一見相反する要素をそのサウンドに内包させ、イセリン・ソルヘイムの神秘的な囁きにより生まれる白昼夢は、2016年6月リリースの第2章シングル曲「Sing Me To Sleep」へと誘います。

「Sing Me To Sleep」

前作に続きイセリン・ソルヘイムをそのヴォーカルに起用。「Faded」の世界的ヒット後、高校を中退し音楽活動に専念する”ベッドルーム・プロデューサー”が送り出すバラード曲「Sing Me To Sleep」のミュージック・ビデオでは、前作の続編となる一貫性の中、複数の黒マスク黒フードの「Walkers」となり、やがて一つの場所へ。「どこにいても/どんなときも/あなたのためなら何でもするわ」、愛の面影がララバイとなり、その記憶を呼び起こす「Sing Me To Sleep」は、YouTubeで2億1800万回を超える動画再生回数を記録(※現在)。また母国ノルウェーなどで記録した第1位を含め、世界11カ国でトップ10入りを果たし再び世界的ヒットを記録します。

「Alone」

そして2016年12月、DJアヴィーチー(Avicii)「I Could Be the One」でも知られるスウェーデンのシンガー・ソングライターNoonie Baoを新たにヴォーカルに迎え 、「Faded」、「Sing Me To Sleep」と共にアラン・ウォーカー三部作の最終章となるシングル曲「Alone」がリリース。

Walkersが最後集結するハイライトシーンはアラン・ウォーカーのホームタウン、ノルウェーのベルゲンで主に撮影。同ミュージック・ビデオは、一貫したストーリーとメッセージのもと、「Faded」、「Sing Me To Sleep」と同じチーム(Bror Bror)で制作された。
 
“Alone”
日本語訳歌詞
 
(バース1)
どうしてしまったの
知りたい
私は正気を失っているの?
私を離さないで
 
(コーラス)
この夜が永遠でないとしたら
少なくとも私たちは一緒にいる
そうね、私は一人きりじゃない
一人きりではないわ
どこにいても、どんな時も
離れていても、それでも一緒にいる
そうね、私は一人きりじゃない
一人きりではないわ
 
一人きりじゃない
一人きりではないわ
 
(バース2)
意識を失った心
目ははっきりと開いている
最後にもう一度だけ感じたい
この痛みを取り去って
 
(コーラス)
この夜が永遠でないとしたら
少なくとも私たちは共にいる
そうね、私は一人きりじゃない
一人きりではないわ
どこにいても、どんな時も
離れていても、それでも一緒にいる
そうね、私は一人きりじゃない
一人きりではないわ
 
そうね、私は一人でない
一人ではないわ
私は一人きりじゃない、私は一人きりじゃない
私は一人じゃない、一人じゃない
一人じゃない、そうだわ、一人じゃない

どこにいても、いかなるときも/離れていても、私たちは共にいる/私は一人じゃないってわかっている/一人ではないと」そうリリックに込める「Alone」は、iTunes世界20カ国で第1位を記録、ノルウェー、オーストリア、フィンランド、ポーランドのチャートで第1位を獲得。ベッドルームで制作されるアランの音楽がやがて一人一人を繋ぎ、世界中の「Walkers」がベルゲンで結集する同ミュージック・ビデオは、わずか4ヶ月で2億動画再生回数を突破という異例の記録に。

“Alone”は結託(unity)をテーマにした歌だ」とBTSで語るのは、共同ライターGunnar Greve。「(三部作に流れるのは)それは我々が世界に立ち向かうという感覚なんだ」その共同ライターJesper Borgenの言葉のように、そのムーブメントを巻き起こす中、アラン・ウォーカーは米myspaceのインタビューでその曲の意味を語ります。「“Alone”はまさに僕のシングル曲三部作の完結となるものだよ。そのアイデアは、誰もがWalkerになりえるということ、僕たちは皆同じ存在なんだ。僕たちはこの素晴らしいシンボルを作り上げた、フードとマスクをね。それをつければすぐにWalkerになる」、「たとえ君が誰であっても、どこにいても、僕たちは一緒になれるということを広めたかったんだ」。

2017年2月16日、哀愁漂う壮大なシンフォニー・オーケストラ空間へ誘う「Alone (Restrung)」のミュージック・ビデオ公開。映画音楽への意欲も語るアラン・ウォーカーの情感震わす美しい旋律が響く。

アナキズムをも想起させるその象徴的スタイルについてアランはBTSで次のように語ります。「みんながなぜ僕がマスクをしているのかを尋ねる。そのマスクは単なるサインを超えたもの、それは結託のシンボルなんだ。お互いの違いよりも、お互いが似ているということを表すものなんだ」。最終章のミュージック・ビデオでは、パソコンの前で一人座る若者たちが、やがて肌の色、言語、文化、宗教を越えて一つに。

僕にとって”Alone”は共に一つになること(togetherness)を歌うもの。そこに生まれる感情、結束(solidarity)で悲しみを拭うアンセムなんだ」。忘れられしアトランティスのように消え行く存在。音楽的バックグラウンドの全くなかった青年が、その抒情詩を通じて訴えるムーブメントは、今の時代に生きる世界の若者たちの心を捉えます。

(記事)“10 Things You Should Know About Alan Walker” on myspace
(記事)“Alan Walker Releases New Single And Video For ‘Alone’” on EDM JOY
(参考)“Interview with Alan Walker from Singapore: This EDM and electronic producer is one name that won’t fade” on honeycombers
(参考)“Alan Walker, interview” on Standard
(参考)“Catch electronic upstart Alan Walker’s first U.S. performance at Intrigue” on Lasvegas Weekly
(参考)“Alan Walker, the 18-year-old behind that ‘Faded’ song, tells us what’s next” on mashable
(参考)“Alan Walker: From Bedroom Producer to Official Sia Remixer” on Billboard
(参考)“Getting ‘Faded’ with Alan Walker: Interview” on Popcrush

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