マレン・モリス初のグラミー賞受賞曲「My Church」、全米が愛する現代のアンセムに


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CMAアワード最優秀新人賞、ビルボード・ブレイクスルー・スター賞に続き、グラミー賞を受賞。今日にはACMアワード6部門のノミネーションが発表されたばかりの次世代カントリー・スターとは…

日曜日はハレルヤに。昨年米カントリー界を席巻した期待の新星マレン・モリス(Maren Morris)が、現地時間2月12日(日)、米ロサンゼルスにて開催された第59回グラミー賞(59th Annual Grammy Awards)授与式に出席し、メジャーデビューアルバム『Hero』のリード・シングル曲「My Church」で最優秀カントリー・ソロ・パフォーマンス賞(Best Country Solo Performance)を受賞。

その端麗な容姿に加え、従来のカントリー・ソングにソウル、ポップ、R&Bを融合させた比類なきクロスオーバーの楽曲スタイル、そしてソウルフルなパワーヴォーカルで、米各メディアから大きな注目を集める中、自身初となるグラミー賞の栄冠を手にしました。

グラミー賞2017最優秀カントリー・ソロ・パフォーマンス賞を受賞したマレン・モリス(Maren Morris)「My Church」ミュージック・ビデオ。楽曲詳細、歌詞は以下記事中盤にて掲載。

初めてのグラミー賞ノミネーションにして、グラミー主要部門の最優秀新人賞(Best New Artist)をはじめ、カントリー部門での最高峰、最優秀カントリー・アルバム賞(Best Country Album)、最優秀カントリー・楽曲賞(Best Country Song)含む合計4部門でノミネートされ、瞬く間に時の人となったテキサス州アーリントン出身の26歳。最優秀新人賞はチャンス・ザ・ラッパー(Chance The Rapper)に、最優秀カントリー・アルバム賞はスターギル・シンプソン(Sturgill Simpson)『A Sailor’s Guide to Earth』、最優秀カントリー・楽曲賞は大御所ティム・マグロウ(Tim McGraw)「Humble and Kind」に譲るも、キース・アーバン(Keith Urban)「Blue Ain’t Your Color」、ミランダ・ランバート(Miranda Lambert)「Vice」、キャリー・アンダーウッド(Carrie Underwood)「Church Bells」等、誰が賞を獲ってもおかしくない強豪揃いの中で、ブランディ・クラーク(Brandy Clark)「Love Can Go To Hell」らを抑え、見事最優秀カントリー・ソロ・パフォーマンス賞を獲得しました。

フィフス・ハーモニー(Fifth Harmony)脱退後初めてソロ・アピアレンスとなるカミラ・カベロ(Camila Cabello)と米トーマス・レット(Thomas Rhett)よりその賞を発表され、「どうしたらいいのだろう、とてもクレイジーだわ」と初めてのグラミーを手にし動揺と興奮が止まらないマレン・モリス。「レコーディング・アカデミーの皆さん、ありがとうございます。11年前、私はグラミーのキャンプに初めて訪れました。LAから自分一人で飛行機に乗ったのは初めてで…、10年の時を経てここにいることが信じられません」とその歓びを明かし、(慣れないながらも)マネジャーをはじめ、レーベル関係者等出来る限り多くの人の名を挙げ、そして母親、ファンへ、「本当にみんなありがとう」、「そしてファンのみんな、私の人生で最も素晴らしい年にしてくれてありがとう」と感謝の言葉を伝えステージを後にします。

カメラが捉えた大物スター・キースの…

同部門では惜しくも受賞を逃したはずのキース・アーバン、しかし発表からスピーチの間もずっと目に歓びを溢れさせ、”ピース・バイ・ピース”、彼女の受賞を心から喜んでいたのはキース・アーバン。

Maren Morris Wins Best Solo Country Performance | Acceptance Speech | 59th GRAMMYs

昨年4月、「まるで映画のようだったわ」と米Glamour誌のインタビューに答えるマレン・モリスは、「My Church」、「80s Mercedes」を収録するEPがまだiTunesでリリースされる前を振り返ります。「キースが“My Church”と“’80s Mercedes”を耳にしてすぐに私たちのエージェントのところに戻ってきて、誰がこれらの曲を歌っているかって、誰がこれらの曲を書いたのかって知りたがったの。私たちのエージェントがそれが私であることを告げると、彼はこう言ったのよ、”そうだな、このツアーには彼女が必要だな”って」。ニュージーランドからオーストラリアへ、そしてアメリカに渡り、保守的なカントリー界の中で(想像できないくらい)苦労をかけて今では米カントリー界の欠かせない代表的存在となった49歳大物スター、キース・アーバン。そのスーパースターのアリーナ・ツアー「Ripcord World Tour」に”即決”で大抜擢され、昨年6月2日から11月まで全米をまわりブルット・エルドリッジ(Brett Eldredge)と共にそのオープニング・アクトの大役を務めます。

(記事)“Rising Star Maren Morris on How Women in Country Music Are ‘Carving Out This New Path'” on Glamour

ツアーを終えた昨年12月、「毎晩ツアーで彼のことを見て、噂は本当だったわ。彼のパフォーマンスはハンパないの」と米The Bootでのインタビューで当時の興奮と驚きを明かすマレン・モリスは、「全てのコンサートがものすごい熱気に包まれたの。アリーナの後ろまで彼はそのエネルギーをぶつけたわ。それは普通できないことだわ」とそのスケールの違いを語り、キース・アーバンから多くのことを学んだことを明かします。「彼女はまさに人々が聴くことを必要としているアーティストの一人なんだ」と語り、グラミー賞授与式ではマレン・モリスをまるで自分のことのように嬉しさを目に滲ませるキース・アーバン、グラミー賞授賞式を担当するカメラマンもそれを逃しません。

(記事)“Interview: Maren Morris Learned From the Best for Her First Headlining Tour” on The Boot

全米首位に、次々に権威ある音楽賞を受賞

同ツアー初日の翌日、「My Church」をリード・シングル曲に、2016年6月3日にリリースされたメジャー・デビュー・アルバム『Hero』は、全米ビルボード総合アルバム・チャート「US Billboard 200」で初登場第5位、全米ビルボードカントリー・アルバム部門では第1位を記録し、新人カントリー・アーティストとしては異例の記録的な売り上げを記録。


昨年11月2日に開催された米カントリー界最大の音楽祭の一つ、祝・第50回CMAアワード(50th Annual Country Music Association Awards)では、見事最優秀新人賞に輝き、これまで2006年キャリー・アンダーウッド(Carrie Underwood)、2007年テイラー・スウィフト(Taylor Swift)、2008年レディ・アンテベラム(Lady Antebellum)、2011年ザ・バンド・ペリー(The Band Perry)、2013年ケイシー・マスグレイヴス(Kacey Musgraves)など、大スターとしてその名を馳せることになるアーティストらが手にしてきたそのトロフィーを掴みます。

Loved shooting with these badasses in @billboard 's 2016 Power Issue! 📷: @millermobley

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また同月9日に開催された米ビルボード音楽賞「Billboard’s Women In Music」では、ブレイクスルー・スター部門を受賞。そのスピーチでは、再びカントリー・ミュージックにそのスポットライトが当てられた歓びを語ります。「カントリー・ミュージックを代表していること、それはとても嬉しいことです」、「カントリー・ミュージックが近頃注目されておりませんが、それは才能の欠如ではなく、その才能へのスポットライトの欠如に過ぎません」と語るマレン・モリスは、「私たちのハートの鼓動は一つに、そしてその女性たちへのスポットライトはとても特別なことです」と訴えます。

(記事)“Maren Morris Honors Country Music While Accepting Breakthrough Star Award at Billboard Women in Music” on Billboard

また今日発表された米カントリー音楽祭第52回ACMアワード(The Academy of Country Music Awards)のノミネーションでは、最多7部門ノミネートのキース・アーバンに続き、マレン・モリスがミランダ・ランバートと並んで6部門でノミネート。最優秀女性ヴォーカリスト賞(Female Vocalist of the year)、『Hero』で最優秀アルバム賞(Album of the Year)、「My Church」で最優秀シングルレコード賞(Single Record of the Year)をノミネートされ、「これ以上の週ってある!?ACMアワードで6部門!?とても光栄で、偉大なアーティストと一緒にいるわ 😱😊」と驚きとその歓びをツイート。今その勢いはとどまることを知りません。

ソングライターとしてナッシュビルへ

Thank you for all the support with the EP. It's going to be such a fun year to come. ☺️💒

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テキサス州アーリントンでヘアサロンを営む両親のもとで育ち、11歳の頃には地元のバーやホンキートンクでショーを開き歌い、12歳の誕生日に両親からプレゼントされたギターをきっかけに歌を書き始めたマレン・モリス。週末には父に連れられテキサス州中をまわり音楽活動を開始した12歳の少女は、14歳になるとグラミー賞授与式のスピーチでも語ったグラミー・キャンプに参加し、音楽ビジネスを学びます。ドリー・パートン(Dolly Parton)、パッツィー・クライン(Patsy Cline)、ワンダ・ジャクソン(Wanda Jackson)、シェリル・クロウ(Sheryl Crow)、ロレッタ・リン(Loretta Lynn)らの音楽を愛し育ったマレン・モリスは、20歳になると、カントリーの聖地、ナッシュビルに”上京”。

しかしナッシュビルに向かう多くのアーティストとは対照的に、「私はレコード契約を何か抱いてたりそれを夢にしてナッシュビルに移転したわけではないわ」、「そういった輝かしいものは私の目の中にはなくって、ただゆっくりと、リラックスして、作曲活動をじっくりやりたかったの」と明かします。ソングライターとして音楽活動を続けるマレン・モリスは、ティム・マグロウに「Last Turn Home」(アルバム『Sundown Heaven Town』)を、ケリー・クラークソン(Kelly Clarkson)に「Second Wind」(アルバム『Piece by Piece』)を、そして米ABC/CMT人気カントリー・ドラマ番組『ナッシュビル』に楽曲を提供します。

カントリー界の事情

しかし「目には見えないが明らかにあること」であるカントリー音楽界の事情の中で翻弄されることになります。「10、11人の男性の歌が流れて、それからおそらく彼らが流してくれのはキャリー・アンダーウッドよ」。「私(女性)が聞きたいと思う女性の視点の欠如が間違いなくあるわ」と語るマレン・モリスの作る楽曲に合う女性アーティストはおらず、パブリッシャーサイドからは「いい曲なんだけどね、でも正直誰に送っていいかさえわからないんだ」と言われる日々が続いたといいます。

私が歌うしかない、挫折が生んだ名曲

そうした中で再びシンガー・ソングライターとして音楽活動を再開、レコード契約はせず、マネジャー(Janet Weir)に支えられる中、2015年はじめ、大きな失恋の後ロサンゼルスへ向かう車の中で、海を眺めながら車を走らせるマレン・モリス。車から流れる曲を聞き入り、彼女はふと思います。「これが私の教会だわ」。そしてあの名曲が生まれます。

最初に自分の曲がラジオから流れた時のことをマレン・モリスは振り返る。「私はウォールマートへ行く途中だったわ。ナッシュビルで雪が降っていて、(「My Church」がラジオから流れてきたときは)ものすごい驚いたわ。すぐに車を停めたわ。こんな感動的な瞬間に運転なんか出来ないわ。全ての人生をかけて出来たもの、その3分間を聞く瞬間、ものすごく最高の瞬間だったわ。今では曲が流れてくるたびに、ラジオの音量を上げるの。飽きることは決してないわ」。

日曜の礼拝とは疎遠な日常、悪い行いばかりの自分は救われるはずもないと自問自答する中、車から流れる音楽に身を委ね次第に息を吹き返していく魂。「そうなんだわ、これが私の教会だわ」。どこか郷愁漂うヴィテージ・バイブの旋律にR&B、ポップ、ソウル、ゴスペルの要素が垂直に伸びる空間の中で協奏し合い、やがてそれは素朴な描写から深遠な心理へ導く巧みなリリックへと溶け込んでいきます。

“My Church”
Written by Maren Morris, busbee
Produced by busbee, Maren Morris

(バース1)
私は日曜日に背いてきた
裏切り、そして嘘をついてきた
私は堕落し神の恩寵を失ってきた
何度も何度も
しかし私は聖なる贖いを見つける
車を走らせ
窓を下げ、そしてボリュームを上げる

(コーラス)
私にハレルヤはあるのだろうか
私にアーメンはあるのだろうか
まるで聖なる亡霊が走り去っていくように
FMラジオを流すとき
自分の魂が息を吹き返してくるのを感じる
歌詞一つ一つ歌いながら
そうね、これが私の教会なんだ

(バース2)
ハンク(*1)が説教となり
キャッシュ(*1)が聖歌隊を指揮する
私の冷え切った石炭の心は燃え上がり
炎の輪よりも熱くなる
この素晴らしきかな世界が重くのしかかり
自分の逃げ場所が必要となるとき
私はただ走らせ、ラジオをまわす
私の罪が洗い流されるまで

(コーラス)
私にハレルヤはあるのだろうか
私にアーメンはあるのだろうか
まるで聖なる亡霊が走り去っていくように
FMラジオを流すとき
自分の魂が息を吹き返してくるのを感じる
歌詞一つ一つ歌いながら
そうね、これが私の教会なんだ

(コーラス)
私にハレルヤはあるのだろうか
私にアーメンはあるのだろうか
まるで聖なる亡霊が走り去っていくように
FMラジオを流すとき
自分の魂が息を吹き返してくるのを感じる
歌詞一つ一つ歌いながら
そうね、これが私の教会なんだ

(コーラス)
私にハレルヤはあるのだろうか
私にアーメンはあるのだろうか
まるで聖なる亡霊が走り去っていくように
FMラジオを流すとき
自分の魂が息を吹き返してくるのを感じる
歌詞一つ一つ歌いながら
そうね、これが私の教会なんだ
そうね、これが私の教会なんだ
そうね、これが私の教会なんだ

さりげない日常に”信仰”を見い出すソウルフルな楽曲「My Church」は、ガース・ブルックス(Garth Brooks)、シャキーラ(Shakira)、5SOS(5 Seconds of Summer)で知られるプロデューサー、バスビー(Michael Busbee)と共に制作。ロサンゼルスへ向かう車の中で思い立ったマレン・モリスは翌日バスビーに「My Church」と題する楽曲案を提案。「Can I get a Hallelujah/Can I get an Amen?」という彼のアイデアをコーラスに取り入れながらも、マレン・モリスの素朴なありのままの心情がその歌詞に吹き込まれます。

「私は日曜日に背き/裏切り、嘘もついてきた/私は堕落し神の恩寵を失ってきた/何度も何度も」、わずか4行のラインでリスナーを惹き込んでいく歌詞の書き出しについてマレン・モリスは、「私がいつも感じていることで、とても心から思っていることなの。私たちは常に今の自分となりたい自分の闘いの中で生きているわ。こういう形で曲を始めるのはとても気に入っているわ」。

「80年代のメルセデス」

その「My Church」と共にそのユニークなサウンド、非凡なリリック、ソウルフルな歌声でリスナーを虜にする彼女のもう一つの代表曲「80s Mercedes」もちょうど時を同じくして生まれます。

マレン・モリスがロサンゼルスにいる時、彼女の女友達がふと口にした言葉、「彼が車を買ったんだけどぉー、古い80年代のメルセデスでぇー、チョーマジヤバイんだよねー」(※口調は推測です)。その言葉にマレン・モリスは「完全停止して話をやめて、自分の携帯に書きとめたわ。これはなんて素晴らしいタイトルになるだろうって思ったわ。どんな曲になるかはその時はわからなくて、でも翌朝ナッシュビルに行って、共同作曲家(バスビー)に言ったの、”タイトルが浮かんだわ、80年代のメルセデス、ばかげて聞こえるかもしれないけど、でも楽しくって夏が盛り上がる曲にしたいわ”って。そういった曲の経験はあまりなくて、私は涙誘う曲に慣れていたから、だからこの曲は私にとって自分を伸ばすものだったわ。ありったけのことを思い描きはじめたわ、例えばジョン・ヒューズの映画ね。もし夜にお出かけの準備をしてて聴きたいだろうなって私が思ったら、彼の作品に全てがつまっているわ。曲はあっという間にすぐに仕上がったわ。”My Church”と同じ感じね。2つの曲とも同じ週に書き上げたの。2つの曲ともにこれしかないっていう曲になって、それはまさにクリエイティビティの爆発だわ」と米Glamour誌のインタビューで明かします。

走らせる80年代のメルセデス・ベンツの描写がやがて自分自身と同化していくリリック、「まだちゃんと走る、最後までもつ作り/ダッシュボードのフラガールのように動く/彼女は実用性のために作られたんじゃない/そうね、彼女はまるで私みたいね」わずか4行にしてリスナーを虜にする書き出し。鮮明な映像描写、高鳴る”エンジン音”とともにネオン灯す夜を走り抜け「古くさいとでも言って、でもね/私は80年代のメルセデスに乗る/90年代の女よ」とその誇らしき自分らしさに身を躍らせます。

レコード契約後デビューEP全米首位

2015年8月、シェリル・クロウの「Leaving Las Vegas」、ハンク・ウィリアムズ(Hank Williams)の「I Saw The Light」にインスパイアされたと言う代表曲「My Church」をはじめ、「80s Mercedes」、「Drunk Girls Don’t Cry」、「I Wish I Was」、「Company You Keep」の計5曲を収録したEP『Maren Morris』がSpotifyで全米独占配信されると、無名ながら最初の一ヶ月で250万配信数を記録。この成功は翌月9月のレーベルColumbia Nashville Recordsとレコード契約へと導き、2ヶ月後の2015年11月に同EPが再リリースされデジタル配信されると、全米ビルボード・ヒートシーカーズ部門で第1位を獲得、同EPのリード・シングル曲「My Church」は全米ビルボード・カントリー・ソング部門第5位の異例のヒットを記録します。

メジャーデビューアルバム『Hero』

私の歌詞はよりカントリーで、その物語る形式やしっかりと韻を踏むことになるその構成が大好きなの。でもポップのメロディは常に私のライティング・スタイルに本質的に繋がっているわ。私の子供時代は90年代、だからインシンクやスパイス・ガールズが大好きなだったの」と米ニューヨーク・タイムズ誌に話すマレン・モリス。シェリル・クロウをはじめ、米フォーク、パッティー・グリフィン(Patty Griffin)に米カントリー、クリント・ブラック(Clint Black)、米R&Bチャカ・カーン(Chaka Khan)に影響を受けながらも、米Glamour誌では、今世界を席巻しているブルーノ・マーズ(Bruno Mars)、エド・シーラン(Ed Sheeran)や現在のメインストリームのヒット曲には欠かせないスウェーデンのヒットメーカー、マックス・マーティン(Max Martin)を尊敬しこよなく愛することを明かします。

ジャンルを超えて音楽を愛する彼女のバックグラウンドは、2016年6月3日にリリースされたメジャー・デビュー・アルバム『Hero』に溶け込み、伝統的カントリー・ミュージックをベースに、ポップ、R&B、ソウル、そしてモダンなサウンド・スタイルが融合。「レトロ・ヴァイブ」と感じる人もいれば、「新しいカントリー・サウンド」と感じる人もいる、”新しくも古い、古くも新しい”、『Hero』では彼女独自のユニークなサウンドで魅了します。

一方でさりげない日常描写のリリックながらもリスナーに届くのはその奥にある感情・心理という異彩を放つマレン・モリスは「人々は事実によって心洗われ元気になると思うの、イデオロギーのようなものを彼らにスプーンで食べさせる音楽によってリフレッシュされることはないわ」と米USA Today誌Tennesseanに自身のライティング論を明かします。

小さな田舎町というカントリーの真髄に迫るケイシー・マスグレイヴス、トラディショナリズムのクリス・ステープルトン(Chris Stapleton)、「カントリー・ソングの中の女の子」というアンチ・姉妹カントリーのマディー&テイ(Maddie & Tae)、とすると、マレン・モリスの魅力は、「My Church」に代表するように「表現することが難しいエクスペリエンスを歌にする」「稀な匠の技」と分析するのは米ワシントン・ポスト誌。

(記事)“Maren Morris isn’t trying to be a country music ‘savior,’ but she’s just what Nashville needs” on Washington Post

カントリーの枠を超えて、米各メディアで多大な注目を集める中、グラミー賞、CMAアワード、ビルボード音楽祭「Billboard’s Women In Music」でその栄光の受賞を果たしたマレン・モリスは、昨年11月には同米ビルボード音楽祭で「My Church」を披露、昨年12月には米NBC人気番組『Saturday Night Live』でパフォーマンス・デビュー(「My Church」、「80s Mercedes」)を果たし、今回のグラミー賞では、自身の失恋を綴った「Once」を『CMT Crossroads』で共演したアリシア・キーズ(Alicia Keys)と再びタッグを組み披露します。

All the love in the world for this woman. Thank you for making my first Grammys even more special, @aliciakeys .

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しかし現在の眩しいほどのスポットライトとは対照的に、当時17歳、米FOX人気音楽オーディション番組『アメリカン・アイドル』、米NBC人気音楽オーディション・育成番組『The Voice』のオーディションに挑戦するも、両方ともプロデューサーらによる審査の段階で落選し、ジャッジの前で歌う機会すら与えられず会場をあとにします。皮肉にも『The Voice』シーズン12では自身の楽曲「My Church」がカバーされることに。オーディション番組で全て拒絶された当時ショックを受け、その後は他のアーティストに楽曲を提供するソングライターの道に進むことになるマレン・モリスは、しかし今ではこう明かします。

私が挑戦した全ての番組でうまくいかなかったこと、今では逆に幸せなことだと思っているわ」、「だって、ずっと長い道のりになってしまったけれども」、「でもね、今では自分の思うようにできるのだから」。

緊張と歓びでグラミー賞を受け取った26歳の手に刻まれる長い月日、その道のりの中でふと見つけた自分だけの教会は、歴代のカントリー・スターのみ許されるそのサンクチュアリへと彼女を導こうとしています。

(記事)“Five Things We Learned From Maren Morris’ Interview With Chelsea Handler” on RollingStone
(記事)“Rising Star Maren Morris on How Women in Country Music Are ‘Carving Out This New Path'” on Glamour
(記事)“Interview: Maren Morris Learned From the Best for Her First Headlining Tour” on Boot
(記事)“INTERVIEW: Maren Morris On Her New Song ’80s Mercedes’ | Music You Should Know” on iHeart
(記事)“Maren Morris isn’t trying to be a country music ‘savior,’ but she’s just what Nashville needs” on Washington Post
(記事)“For Maren Morris, the Year Everything Came Together” on The New York Times
(記事)“Maren Morris: A hero in the making” on Tennessean
(記事)“Maren Morris: 5 Things to Know About the Breakout Country Singer “ on US Magazine
(記事)“An Interview With Country Music Betch Maren Morris” on Betches
(記事)“Arlington’s Maren Morris Wins Her First Grammy Award” on NBC
(記事)“Maren Morris Is Here to Kick Ass and Win Grammys” on GQ
(記事)“Watch Country Singer Maren Morris Take a $235,000 Mercedes for a Spin” on Billboard


*1. ハンク、ジョニーとは米カントリー史に名を刻むハンク・ウィリアムズ(Hank Williams)、ジョニー・キャッシュ(Johnny Cash)。リリックにある”ring of fire”はジョニー・キャッシュの曲のタイトルでもある。

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