(米ネバダ州ラスベガス)現地時間10月1日(日曜日)午後10時8分頃、米ラスベガス・ストリップで開催のカントリー音楽野外フェスティバル「Route 91 Harvest」のトリの真っ只中、銃乱射事件が発生。少なくとも59人が死亡、負傷者は500人を超え、近年の米最悪の乱射事件となったことが2日夜、ラスベガス市警より発表されました(NBC)。
容疑者はネバダ州北東部メスキート在住の白人男性スティーブン・パドック(Stephen Craig Paddock)64歳による単独犯とみられ、同会場から約366m離れた43階建てカジノホテル「マンダレイ・ベイ・ホテル」の32階の一室から、野外コンサート会場に集まる2万2,000人に向け、自動式とみられる銃で無差別に乱射。
目撃証言
約10分間、3度にわたって続いた乱射に、「爆竹音だって警備員が言うので、仕事に戻ったんだ」と米TIME誌に語る現場カメラマンDavid Becker。「2度目にバンバンバンとその音が聞こえた時は、誰かがスピーカか音響装置の音だって言ったんだ」。事件当時メインステージでライブ・パフォーマンスを行っていたのは、米カントリー界を代表するスターの一人、ジェイソン・アルディーン(Jason Aldean)。
エリック・チャーチ(Eric Church)、サム・ハント(Sam Hunt)ら米カントリー・スターとともにヘッドライナーを務め、迎えた3日間最終日の最後のライブ。大トリとしてステージに上り、2013年カントリー・ヒット曲「When She Says Baby」のさなか、鳴り響く自動小銃音に、気づくことなく歌い続ける様子が目撃者映像で映し出されます。
Harrowing video of mass shooting during @Jason_Aldean set of #Route91Harvest Festival in #LasVegas. #MandalayBay pic.twitter.com/gaXgDBbZKV
— Evan Schreiber (@SchreiberEvan) October 2, 2017
そして3度目にその銃声音が起こると、「みんなパニックになって(出口に向かって)走り出したんだ」。銃弾が空から降り注ぎ、観客が次々に流血に倒れ、銃声と悲鳴で混乱状態へ。
花火の音と勘違いした人もいたという400メートル離れた上空から聞こえる音。一体何が起きているのか、逃げ惑う人々、銃声にその場の地面に頭を伏せる人々、運営者側から一切状況が伝えられず事態を把握できない人々。混乱の末、観客らが置き去りにしていった無数の物に埋もれるように、血を流し倒れたままの女性が、一枚の写真に写ります。
距離366mm、突入まで
当時の警察無線に基づいた事件の動向では、最初の発砲(10時8分)の2,3分後に警察官が銃撃元を「マンダレイ・ベイ・ホテル」付近と特定、10時13分頃に一人の警察官が乱射の発砲炎を目視で確認し、31階に到着した警察官が銃声音を確認。10時20分に銃声は鳴り止み、10時24分に銃撃犯のいる32階135号室の外に到着していた警察官らがSWATチームを要請。
10時28分にSWATチームが32階と29階に到着し、11時20分にドアを爆破し突入。既に自殺していた容疑者を発見し、のちにスティーブン・パドックと身元が判明。動機は現在捜査中とされます(NY Times)。
音楽界再び激震
米アリアナ・グランデ(Ariana Grande)ライブ・コンサート終了直後、8歳の少女を含む20人を超える尊い命が奪われた英マンチェスター・テロ事件(記事『アリアナ・グランデ、子供らも犠牲になったマンチェスター・コンサート自爆テロに』)から5ヶ月も経たぬうちに起こった事件。
(イスラム国による犯行声明に反して)テロ組織との関連性を直接示す証拠は現在見つかっておらず、テロ事件とはされていないものの、銃規制が最も緩いネバダ州での事件にアリアナ・グランデは、自身のツイッターで「ラスベガスの事件に心砕かれる思いです。私たちが必要なのは、愛、結託、平和、銃規制だわ」、そして「これこそテロリズムというべきものだわ」。
My heart is breaking for Las Vegas. We need love, unity, peace, gun control & for people to look at this & call this what it is = terrorism.
— Ariana Grande (@ArianaGrande) October 2, 2017
Jason Aldean
ジェイソン・アルディーンは、自身のインスタグラムで「なんと言葉にしたらいいのかまだわからないでいる」、「今夜犠牲となった人々に、心から深く祈りを捧げたい」。コンサートに一緒に来ていたジェイソンの妻ブリタニー(Brittany Aldean)は現在妊娠中、二人は警察車両に無事保護されます(Us Weekly)。「夜を楽しむために来てくれたのに、こんなことになってしまって、心苦しくてならない」。
ジェイソン・アルディーンの直前にライブ・パフォーマンスを行っていた米カントリー人気歌手ジェイク・オーウェン(Jake Owen)は、「ジェイソンは最初、銃声すら聞こえてなかったと思う。彼の仲間が叫んだんだ、”おい、急いでステージを離れろっ”ってね」。「当時みんなどうしていいか、全くわからなかったんだよ」。ジェイソン・アルディーンのバスには、自動小銃の銃弾に見舞われた銃痕、当時の激しさと混沌を残します。
ジェイソン・アルディーンは昨日再びインスタグラムで「この24時間、色んな感情に襲われている。恐怖、怒り、痛み、悲しみ、そして様々な思い」、「この国、この世界は何かが変わってしまった、最近では目にするのも恐ろしい世の中になっている」、40歳はその胸中を明かします。
不倫報道に潔く謝罪、その後離婚を経て、再婚し授かった新しい命。カントリーとヒップホップを融合させた「Dirt Road Anthem」など米カントリー界で圧倒人気を誇り、大胆不敵な気質でも魅了するスターは「世の中は、子どもたちを育てるには恐ろしい場所のようになってしまっている」。「民主党か共和党か、白人か黒人か、男か女か、そういうものじゃない」、二分するアメリカ社会を、そのあらゆる感情とともに見つめます。
「俺たちはみんな同じ人間、一つの国民なんだ。そうする時が来ているんだ、共に一つとなって立ち上がろう」、「残された唯一の道なんだ。もちろん決して簡単じゃない、でも今、それを始める時が来ている」。
「みんなが感じている痛み、傷、本当に心から悔やんでならない。その痛みを失くすためにどうすればいいか、わからないんだ。ただ知ってほしい、心から皆を思い、祈っている。そして皆一緒に乗り越えていこう」、「共に一つになる時なんだ、憎しみではなくて」。
2日夜には、犠牲者追悼のため3500人を超える人々がラスベガスの教会(Canyon Ridge Christian Church)に。キャンドルを手に「アメイジング・グレイス」を捧げます。