AGT2020 15歳ケナディ・ドッズ、片道切符「One Way Ticket to Tennessee」で初戦突破


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全米夏の最高視聴率番組シリーズ『アメリカズ・ゴット・タレント』(原題:America’s Got Talent)シーズン15が第6週(現地時間6月30日放送)に入り、ロックダウン前にカリフォルニア州パサデナで収録されていた初戦もロックダウンが迫り、約3,000人の観客で溢れ返る劇場も無観客で始まった。「わぉぉぉ」、「サイモンの席がある!思ってたより全然スゴイとこだね!」と興奮気味に目を輝かせる妹たちの手をつなぎ、自然豊かなユタ州キャッシュ郡ノース・ローガンからやってきたのは、15歳のカントリー・シンガー・ソングライター、ケナディ・ドッズ(Kenadi Dodds)。夢を追う小さな街の少女が、パンデミックにより一変した静寂の劇場に力強いカントリー・ヴォイスを響かせ感動で包んだ。

ギターを手にひときわ目立つカントリー・ブーツでステージに登場したケナディ。この日体調不良で休んでいる審査員ハイディ・クルム(Heidi Klum)に代わって、『モダン・ファミリー』の俳優エリック・ストーンストリート(Eric Stonestreet)が審査員として参加。「何がきっかけで音楽を始めたんだい?」とエリック・ストーンストリート、ケナディは「父が私によくギターを弾いてくれたものでした。私は幼い頃から歌い、車の中でラジオに合わせて歌っていました」。シャナイア・トゥエインの曲だったといい、「音程はばっちりだったそうですが、赤ちゃん言葉で歌っていたそうです。まだ話せませんでした」。

出場理由を尋ねられケナディは「私の家族は、網膜色素変性症と呼ばれる眼の疾患があります。徐々に視力を失い、全盲になる病気です。家族で今、私だけがかかっていません。妹の願いは、私が世界で一番大きな舞台で歌っている姿を見たいということでした、目が見えなくなってしまう前に」。「ここにたどり着くまで全身全霊を注ぎました、クレイジーです」、穏やかな笑みの中に胸に押し込んできたものを滲ませる。母親は全盲、父親はわずかに見えるものの症状は悪化。二人の妹も既に視力に問題が出ているという。網膜色素変性症の治療法は確立されていない。地元メディアによるとケナディは、ヴォーカル・コーチのレッスンを受けるためには、車で往復3時間かかるソルトレイクまで出る必要があり、親族や近所の人の力を借りたり公共交通機関を利用し60分のレッスンに通っているという(Cache Valley Daily)。

「妹はいくつ?」と審査員サイモン・コーウェル(Simon Cowell)、「9歳です。あちらにいます」舞台袖で母親と一緒に応援する。コーウェルは「ちょっと知りたいのだが、歌うのはオリジナル・ソング?カバー?」ケナディは「オリジナル・ソングです」、「『One Way Ticket to Tennessee』という曲です」。「どんな歌かい?」とサイモン、「カントリー歌手になる夢に向かって走る私を応援してくれている家族の支えを歌っています」。サイモンは「これはテネシーへのチケットになるかもしれない」、「君にはいい予感がするよ、頑張ってくれ」と声をかける。舞台袖で妹は小声で母親に「信じられないね!」物静かなケナディはギターを弾くと一変、パワフルな歌声で「One Way Ticket to Tennessee」を熱唱。歌に夢と情熱を刻み、エネルギッシュに歌い上げた。

(バース1)「父はいつも言う、自分の夢を追うんだって/どう思われても、自分を信じれば道は開けると/スターになりたいのなら励むんだって/そうね、こうしてパパっ子はカントリーの道を行く」、「何が待っているかは、天国だけが知る/でも絶対、私がいるのは音楽の道」(コーラス)「テネシーへの片道切符/片道切符を手に、息を切らせ/片道切符、次の駅はグランド・オール・オプリ/片道切符、夢を追う時だわ/テネシーへ片道切符/待ってろよ、ナッシュビル!」

カントリー音楽の聖地テネシー州ナッシュビルへの夢と家族の支えを力強く歌い、審査員全員がスタンディングオベーション。「小さいのに爆竹だ」とサイモン・コーウェル。審査員ホーウィー・マンデル(Howie Mandel)は「君は演奏が始まったら別人に変身だよ」、感極まるケナディは「このステージに立てて本当に幸せです。こうした機会をいただき、支えてくれた全ての人にとても感謝しています」、世界が注目する舞台に立ち、妹の願いを叶えた彼女は声を震わせる。しかしこれがハイライトじゃないとマンデル、「これはまだ君にとって始まりに過ぎない。約束する。君の未来はこの瞬間から既に始まっている」。舞台袖で母親は涙、顔を綻ばせる妹は憧れの眼差しで目を輝かせる。

ケナディのファッション、カントリー・ブーツにも惹かれたという審査員ソフィア・ベルガラ(Sofia Vergara)は「あなたのカントリー・スタイルのルックスがすごく大好きだわ。ギターを弾いて、自分で書いた曲を歌うあなたが大好きだわ。あなたの未来が待ち遠しいわ」。そしてサイモン・コーウェルは「君は本当に素晴らしいスタイルを持っている。ユタ州出身だったよね。ご家族がもともとユタ州出身だったのかな?」、「そうです」とケナディ。コーウェルは「それを聞いたのは、まさに君の歌声がナッシュビル出身の歌声だったからだ」、「本物だ」と賛辞を贈る。「私は特に、進むべき道を知っている君のような年のアーティストが大好きだ」、「君の気持ちがはっきりと伝わってきた。君がたどり着けるよう我々が手助けできると思う」と力強い応援。4人全員のイエスを獲得し初戦突破を果たした。舞台袖から飛び出してきた妹たちは姉にハグ。バックステージに戻りケナディは「本当に感謝しています。すごく嬉しい」と感極まる。

その歌声は早くもナッシュビルに届き、カントリー・スターのキース・アーバン(Keith Urban)はユタ州のカントリー・ガールに「AGTの君は最高によかったぞぉぉぉ!!!!!」(SNS)。家族とともに困難を乗り越え夢を追う彼女のエモーショナルな歌声は国境を越えて反響を呼び、数多くの感動の声が寄せられている。

3歳でピアノを弾き始めたケナディ・ドッズは、9歳の頃、祖母に連れられてシャナイア・トゥエイン(Shania Twain)のコンサートに行った時、カントリー歌手になる夢が芽生えたという。シャナイア・トゥエインをはじめ、フェイス・ヒル (Faith Hill)、マルティナ・マクブライド(Martina McBride)、キャリー・アンダーウッド(Carrie Underwood)、テイラー・スウィフト(Taylor Swift)らのカントリー音楽を聴き、ギター、ピアノ、歌の練習を積み重ねた。AGTのステージで履いていたカントリー・ブーツも祖母と一緒に見つけたものだと地元メディアに語る(The Herald Journal)。ケナディはこれまでソルトレイクシティに拠点を置くNBAユタ・ジャズ、野球チームのソルトレイク・ビーズやユタ州立大学のスポーツイベントなどで国歌独唱を務めている他、NBC『The Voice』出身のカントリー・デュオThe Swon Brothersや、ジェイミー・オニール(Jamie O’Neil)のコンサートで歌声を披露。ナッシュビルへはまだ一度も行ったことがないという。

「私の父はパラリンピックに2度出場し、2004年アテネで銅メダルを獲得しました」とケナディ。「One Way Ticket to Tennessee」はケナディが父親とともに書き上げた。「彼は私に教えてくれました、大きな夢を持ち、どんなことも挑戦するべきだって。死に物狂いになれば不可能に思える事も叶えられると」。彼女がナッシュビルを目指すのには大きな理由がある。「カントリー音楽には特別なものがあるわ。人生の物語を歌い人々が共感できる、そういうところが大好き。人々に幸せになってもらえたらそれがすごく嬉しい」。その夢に向かい片道切符を手に歌い続ける。「あの歌は私の両親がいつも私に教えてくれたことです。大きな夢を持ち全力で走り、その途中で絶対自分に負けちゃいけないって」。

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