アダム・ランバート、近未来SF映画風「Never Close Our Eyes」PV公開、PVに秘められたメッセージを語る


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アダム・ランバート(Adam Lambert)公式サイト

現実を超えた未来が描かれるSF映画では随所にその現実とは異なるものがメタファーとなり、そしてメッセージとなって観る者に訴えかけますが、それはこのミュージック・ビデオでも例外ではないようです。

最新アルバム『Trespassing』(国内盤『トレスパッシング(初回生産限定盤)(DVD付)』)で自身初となる米ビルボード総合アルバムランキング「Billboard 200」初登場第1位を記録した他、歴史的快挙を達成したアダム・ランバート(Adam Lambert)が、そのリード・シングル曲「Better Than I Know Myself」に続く2ndシングル曲となる「Never Close Our Eyes」ミュージック・ビデオを、米国時間5月29日にVEVOにて公開しました。

ニッケルバック(Nickelback)の「Rockstar」、ケシャ(KE$HA)の「Take It Off」ミュージック・ビデオを手がけていることでも知られる米ディレクター、ドリ・オスコヴィッツ(Dori Oskowitz)がメガホンを取る「Never Close Our Eyes」のミュージック・ビデオでは、近未来SF映画を彷彿とさせる厳重な監視下に置かれる施設に拘束されているアダム・ランバートが、「Sleeping」から「Awake」のディスプレイの文字と共に目を覚まし、アンドロイド監視カメラが追跡する中、整然と列をなし錠剤を服用する一日の始まりのシーンが映し出されます。

しかしそれを拒絶し、握りつぶしたアダム・ランバートは、ロボットのように無機質で、またマインド・コントロールされているような集団の先陣を切り脱走。厳重な防護態勢の警備員(あるいは看守)が発したガススプレーにより阻まれるも、突如アダムを囲うように現れたシールドに守られ、ガススプレーは握りつぶした錠剤から発せられた閃光と同じ青色の煙に。白い防護服を着た警守が撤退する中、鮮やかな色彩の衣装を身に包み仲間とともに踊るアダム・ランバートは、やがて眩く光る煙の中へと消えていきます。

(記事)”Adam Lambert Goes Sci-Fi for ‘Never Close Our Eyes’ Video” on Billboad

リードシングル曲「Better Than I Know Myself」に続きDr. Lukeが手がけ、ブルーノ・マーズ(Bruno Mars)共同作詞作曲による「Never Close Our Eyes」では、ブルーノ・マーズならではのメロディック・サウンドを残しながらも、ダンス・ポップチューンの要素を色濃く投影したエレクトロポップソングに仕上がっており、米FOX『アメリカン・アイドル』シーズン8準優勝者のシグネチャーでもある”コウ”音域が最大限に活かされたこの楽曲には、コアファンを始め、音楽批評家らからも前シングル曲「Better Than I Know Myself」を上回る支持が数多く寄せられているようです。

「Never Close Our Eyes」
song by Adam Lambert
written by Bruno Mars, Phillip Lawrence, Ari Levine
日本語訳歌詞・和訳

この夜が決して明けることがなければ…
命を終えるとき、眠る時間はたくさんあるんだ
だから老いるまで眠らずにいようではないか
思い通りにできるのなら、決して瞳を閉ざしたくはない、瞳を、決して

(バース1)
一秒たりとも無駄にしたくはない
失う時間なんてないんだから
誰一人明日を約束されている人なんていない
どう生きるかは僕たちの手にかかっているんだ

朝日を忘れて
瞳の中で眠りと闘うんだ
君との時間を一秒たりとも見失いたくない
永遠にこうしていよう
もしそう僕らが願うならば、うまくいくばかりだ

(コーラス)
この夜が決して明けることがなければ…
命を終えるとき、眠る時間はたくさんあるんだ
だから老いるまで眠らずにいようではないか
思い通りにできるのなら、決して瞳を閉ざしたくはない、瞳を、決して

(バース2)
この瞬間が消え去るなんて考えることはできないけれど
昇るものは必ず沈むんだ
何も考えずにただ生きるようじゃないか
そして永遠に今を生き続けるんだ

朝日を忘れて
瞳の中で眠りと闘うんだ
君との時間を一秒たりとも見失いたくない
永遠にこうしていよう
もしそう僕らが願うならば、うまくいくばかりだ

(コーラス)
この夜が決して明けることがなければ…
命を終えるとき、眠る時間はたくさんあるんだ
だから老いるまで眠らずにいようではないか
思い通りにできるのなら、決して瞳を閉ざしたくはない、瞳を、決して

Ooooh, yeah
Ooooh, yeah, yeah

この夜が決して明けることがなければ…
命を終えるとき、眠る時間はたくさんあるんだ
だから老いるまで眠らずにいようではないか
思い通りにできるのなら、決して瞳を閉ざしたくはない、瞳を、決して

同曲については、その抽象的リリックにも起因し、夜を明かして楽しむダンス・チューン、または「今」を最大限に生きるべきであると訴えかけるメッセージ・ソング、そして永遠の眠りに就くまで一秒たりとも愛する人との時間を失いたくない甘いリリックのバラード・ソング等様々な解釈が可能な多義的・多様的楽曲となり、リスナーが感じるままにその楽曲の魅力が変化する楽曲となっていますが、同ミュージック・ビデオではその一つの解釈を提示を試みていることは、その映像が強く訴えかけるメタファーからも伺えるかもしれません。

この歌の中にはあるとても重要な歌詞がある、”It’s only getting better if we want it to”, “we’ll never close our eyes”(僕たちが望むのならば、状況は良くなっていく一方なんだ。僕たちは決して瞳を閉じないだろう)という部分。僕はこの部分を目を大きく開き続けること、と解釈しているよ。できる限り目を開き続けること、心をオープン・マインドに保ち、人生に目を向けるんだ」とそのビハインド・ザ・シーンで語るアダム・ランバートは、「SFのようなもので、現実ではない何か未来の新たな世界の秩序のようなもの」が映し出されているというこの映像の各々が、それぞれメタファーとなっているといいます。

錠剤は毎日彼らの(精神的あるいは肉体的)糧の源となるものを表しているんだ」と明かすアダム・ランバートは、「いつの日かそれを自分に与えられることを拒絶し、握りつぶすんだ。そして初めてそれを握りつぶした時、そこから美しい色の光が放たれることに気づくんだ」と語り、その青い閃光については、「それは訴えかける”変革”の種となるものを表しているんだ」と説明。また、外に出て皆で地面を雑巾で擦るシーンについては、毎日の仕事、義務のメタファーであると述べ、そのシーンでアダム・ランバートはついに立ち上がり、物語のターニング・ポイントを迎えます。

(記事)”Adam Lambert unveils ‘Never Close Our Eyes’ behind-the-scenes video” on Press Party

僕が(このミュージック・ビデオで)伝えたかったのは、たとえ自分がどんな状況に置かれていたとしても、もし異なる視点から物事を見つめようと決め、ほんの少しだけ見方を変えるだけで、もしかしたらそんなにひどくはないんだって、もしかしたら自分が望むことでその状況がよくなるんだって、そう気づくことなんだ」とビハインド・ザ・シーンの最後で明かします。

常識と化し疑いのない非人間的な社会の束縛、あるいは、危険を回避するという本能的な習性が導く人間の継続的反復的日常性、それは時として人間性を奪い、時にその心を苦しめていく結果となることは否定できません。その一方で、そのミュージック・ビデオのラストシーンのように、そこから抜け出し、立ち上がることによって、果たしてどういう結末を迎えるかは煙の中に包まれています。

アダム・ランバート(Adam Lambert)公式サイト

しかしそうした中で、そこから立ち上がるアダム・ランバートが鮮やかな衣装を身に纏い、マイケル・ジャクソンを彷彿とさせるダンスで踊りだし、目を輝かせ、笑顔を初めて見せるシーンは、やはり「何か」を訴えているといえるかもしれません。

バラードの魔術師ブルーノ・マーズが書き上げた「Never Close Our Eyes」にアダム・ランバートが「ムーブメント」と語る新たな解釈が吹きこまれたミュージック・ビデオ、そこには、いつしか笑顔を失い無機質な人生の監”視”を強いられる日々から目を覚まし、そしてその目を開き続けることの大切さとともに、“It’s only getting better if we want it to”に秘められた、最後に自分たちを救えるのは自分たちしかいないんだという非常な社会、あるいは自分の置かれた現実に対して意を決して立ち上がるロックの精神が込められているようにもみえます。

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