自分自身よりも自分のことを知ってくれている人と題するこのバラード・ソング、しかしそのミュージック・ビデオのラストシーンでは、そのリリックと照らし合わせると、思わず「そうきたか!!!!」、と、唸らせるかもしれない深いメッセージが込められているようです。
米TV番組『アメリカン・アイドル』(American Idol)シーズン8準優勝者米ポップ・ロック・シンガーソングライター、アダム・ランバート(Adam Lambert)が来月20日(※2012.3.24追記、5月15日にリリースされることがアナウンス)にリリースするグランバート待望の2ndアルバム『Trespassing』(国内盤『トレスパッシング(初回生産限定盤)(DVD付)
』)より、リードシングル曲となる「Better Than I Know Myself」(国内盤「ベター・ザン・アイ・ノウ・マイセルフ
」)のミュージック・ビデオが米国時間の昨日(2月3日)公開されました。

※2012.3.24追記、5月15日にリリースされることがアナウンスされました(英文記事)。
「Better Than I Know Myself」は、今まで恋人関係にあった人や現に恋人関係にある全ての人に関係する曲だと思うんだ。人は時に、間違いを犯してしまったり、パートナーを傷つけてしまうようなことを言ってしまったり、あるいは、相手のことを考えてあげられなかったりする。
‘Better Than I Know Myself’ is a song that I think anybody who has been in or is in a relationship can relate to,” Lambert said. “Sometimes you screw up, or you say something that hurts your partner’s feelings or you haven’t been supportive.
この曲はそうしたことをしっかりと受け入れて、こう伝える歌なんだ。「ね、ごめんよ、自分が完璧じゃないってわかってる。でも、君なしでは自分ではどうすればいいかわからないんだ。君が必要なんだ。だって、君は俺のことを俺以上に知っている世界でたった一人の人なんだから。」と。
This song basically owns that. ‘Look, I’m sorry, sometimes I know I’m not perfect, but without you I don’t know what I’d do with myself. I need you, because you are the only person who knows me better than I know myself.
ケイティ・ペリー、ブリトニー・スピアーズ、ケリー・クラークソンら数多くの有名アーティストを手がけるドクター・ルーク(Dr. Luke、本名Lukasz Gottwald)とCirkut、Ammo(Joshua Coleman)をプロデューサーにむかえ、ケリー・クラークソンの「My Life Would Suck Without You」の米シンガー・ソングライター、クラウド・ケリー(Claude Kelly)らと共に作詞作曲されたこの曲「Better Than I Know Myself」について、アダム・ランバートはそのビハインド・ザ・シーンで、この曲が描くものをそのように明かしています。
しかし、そのミュージック・ビデオではまたそれとは異なった解釈のもつ新しい歌となってリスナーを魅了します。
俺はこのミュージック・ビデオのコンセプトと全体的なプロセスの実践的な役割を担いたいと強く望んでいたんだ。
幸い第一に希望していたディレクター、レイ・ケイと組むことができたんだ。彼の目は素晴らしく、素晴らしい感覚とアイデアを持っていたんだ。I definitely wanted to take a more hands on role in the video concept and the whole process.
Luckily, I got my first pick of director, which was Roy Kay. His eye is amazing, he’s got great taste and great ideas.このミュージック・ビデオは、とてもいいひねりを加えた「Better Than I Know Myself」になったと思う。
I think what came up with was a nice twist on the song ‘Better Than I Know Myself’.
このビデオを見た人は、また最初の印象とは少し異なる歌詞と出会うことになると思うよ。
I think when viewers see the video they’ll look at the lyrics a little bit differently than may have first considered them.
「For Your Entertainment」のPVを手がけた米ディレクター、レイ・ケイ(Ray Kay)と再びタッグを組んだこの「Better Than I Know Myself」のミュージック・ビデオでは、荒涼殺伐とした部屋の中ブラックのレザーロングコートを身に纏った濃いメイクで暴力的な琥珀色の眼のアダムと、整然とした明るい部屋の中で静かに平穏に過ごそうとする蒼い眼のアダムが、一つの酸素供給装置を共有する屋根の下で、透明のガラスのしきりを介して映し出されます。
苦しみの中アルコールに溺れ次第に荒れ狂い、涙を流しながらも凶暴化するダークなアダムは、ついにはその部屋を炎で包みます。嫌悪感と共にそれを見つめる良心のアダム、しかしその炎により酸素を失った蒼い眼のアダムはもがき苦しむことに。
命が失われつつある中、その姿を透明のガラスを介して見た悪のアダムは、ガラスを蹴り破り手を差し伸べます。そしてラストシーンでは、平静を取り戻した琥珀色と蒼い眼をしたアダムが陽のあたる道を歩く姿が映し出されます。
このミュージック・ビデオについて、アダム・ランバートはMTVのインタビューで次のように話しています。
これは自分のダークな側面と明るい側面との間で起こる自分自身の中の関係性を描いたものなんだ。
It’s about the relationship you have with yourself between your dark and light side.
それは人間の二重性、そしてその平衡を描いたもので、そのバランスを見つけ、それを維持することにもがくこと、そしてそれらの意味を描いたものなんだ。
It’s about duality. It’s about that balance and finding it and struggling to maintain it and what that means.
感情的な入り組んだビデオでみんなが心を広くして見てくれることを願っているよ。このビデオの中に込められているものはとても難しく、手間取ることかもしれないと思う、でもそれが俺がこのビデオで伝えたかったことなんだ。
It’s an emotionally complicated video and I hope people are open-minded about it. I thought really hard and long about what was covered in it and what I was trying to say with it.
誰もが有する心の二面性、「自分よりも自分自身を知っている人」に自分のもとに戻って来てほしいと願うこの曲のリリックと、このビデオで描かれるものを照らし合わせて見えてくれるメッセージとは果たして。
(記事)”Adam Lambert Battles Himself In ‘Better Than I Know Myself’ ” on 米MTV
このビデオで興味深いのが、このビデオで描写されている二つの部屋が、いずれの部屋も光が遮断された部屋であるということです。一見リラックスしているようにも見える良心のアダム、しかし彼は外をブラインド越しに眺めるも外に出ようとすることはなく、一人部屋の中、読者や、日記、音楽や瞑想等によって心を鎮めようとしていることが伺えます。
それはどこか苦難の中で自らの心を閉ざしてしまった人の「感情」と「理性」が同じ酸素の中で一枚の透明のガラスを経て描かれているようにも見えます。
またビデオの中では、悪のアダムが良心のアダムに対して怒りをぶつけると共に挑発し続ける中、それに対して嫌悪感を抱く良心のアダムが悪のアダムにキャッチボールや、チェス等求める姿が映し出されている点も興味深い点です。
自分のもとに戻って来てほしいと願っていた「自分よりも自分自身を知っている人」とはいったい。
ダークな面と明るい面という内面の多面性とその均衡維持、その過程を描いたと自身が語るこのミュージック・ビデオ、琥珀色と蒼い眼をしたアダムが部屋を出て陽のあたる道を歩き出す姿には、自分の元に戻ってきてほしい今本当に必要としているものが描かれているようにも見えます。
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