全米話題!新鋭カントリー・デュオ「THE BAND PERRY」(ザ・バンド・ペリー)/ “If I Die Young”


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米iTunesのカントリー・シングル曲部門で第3位PVカントリー部門第1位(※投稿時現在)と、カントリー界でテイラー・スウィフト(Taylor Swift)やレディ・アンテベラム(Lady Antebellum)以来の人気を見せているのが、今月12日にセルフタイトルのデビュー・アルバムをリリース予定の米アラバマ州モービル出身の3人姉兄弟(Kimberly Perry、Reid Perry、Neil Perry)からなるカントリー・デュオグループ「THE BAND PERRY」(ザ・バンド・ペリー)のそのリード・シングル曲『If I Die Young』。

その透明感のあるヴォーカルと3人の息の合ったハーモニー、そして心の琴線に触れる美しいメロディと切なくも詩的でメッセージ性のある奥深いリリックに、全米のティーンが大注目しているようです!現在米ビルボード、カントリー・シングル曲部門では第14位となっていますが、ビルボードチャートでも今後大躍進してくるのは間違いない人気振りをみせています。ちなみにデビュー・アルバムのプロデューサーはテイラー・スウィフトのプロデューサーとしてお馴染みネイサン・チャップマン(Nathan Chapman)!

レディ・アンテベラムの「Need You Now」のような美しくキャッチーな旋律、テイラー・スウィフトのようなピュアで真っ直ぐなヴォーカルは勿論、その切なく美しい詩的な歌詞には心を打たれます!

ザ・バンド・ペリー『イフ・アイ・ダイ・ヤング』歌詞和訳
“If I Die Young” by The Band Perry
“If I Die Young”
by The Band Perry

(Chorus)
もし私が若くして亡くなったら
私をサテンで覆い
バラのベッドに寝かせ
夜明けに川に沈めて
愛の歌の言葉と共に私を送り出してくれませんか
ooh ooh ooh ooh

(Verse 1)
神は私を虹に変え、私は私の母親を光照らす(*1)
私の虹色の下に立ったとき、母親は私が神のもとに無事にいることを知るだろう(*2)
oh、人生はそうあるべきだと思っている通りにいつもなるわけではなく(*3)
白髪でさえないけれど母親は自分の娘を埋葬する(*4)

短い人生の鋭いナイフ(*5)
そうね、私はまさに充分な時間を生きたわ(*6)

(Chorus)
もし私が若くして亡くなったら
私をサテンで覆い
バラのベッドに寝かせて
夜明けに川に沈め
愛の歌の言葉と共に私を送り出してくれませんか

短い人生の鋭いナイフ
そうね、私はまさに充分な時間を生きたわ

(Verse 2)
そして私が天国へ辿りつくと私は白い服を身に纏う
つめたく冷え切った小さな指にピュリティ・リングをはめている(*7)
私は愛を知ることはなかったけれども
彼が私の手を握りしめてくれたときは嬉しかったわ

街にある男の子がいて、彼は私を永遠に愛してくれると言った
永遠が短い人生の鋭いナイフによって引き裂かれることがあると誰が思っただろう
そうね、私はまさに充分な時間を生きたわ

(Verse 3)
そして服を着せてもらい、私は真珠を纏う(*8)
それは私が一度もしなかったこと

私が考えていることに1ペニー、いや、私はそれらを1ドルで売るわ(*9)
私がいなくなった後、それはずっと価値を増してくる
そしていつの日か私が歌っていた言葉を耳にするかもしれない
人が死んでから耳を傾けるなんておかしなことね

(Chorus)
もし私が若くして亡くなったら
私をサテンで覆い
バラのベッドに寝かせて
夜明けに川に沈め
愛の歌の言葉と共に私を送り出してくれませんか

鳩の愛の歌(*10)
平和と愛と共に生き
全ての涙を集めてポケットにしまいこんで
本当にそれが必要になったときまでしまっておいて

短い人生の鋭いナイフ
そうね、私はまさに充分な時間を生きたわ
そして私は服を着せてもらい、真珠を纏う

※注釈というか疑問が残る部分はこの記事の最後に掲載しています!

ザ・バンド・ペリー『イフ・アイ・ダイ・ヤング』解釈
“If I Die Young” by The Band Perry

この楽曲の意味については、様々なところで議論されており、いろいろな解釈がされているようです。

1. 消極的見解

例えば”I’ve had just enough time”という表現の後に文を補充し、「~するための十分な時間しかなかった」と消極的に解して、十分に人生を生き、恋をする時間もなく命を終えた悲しい楽曲と解する見解があります。消極的見解の中には、”The sharp knife of a short life”(短い人生の鋭いナイフ)という表現から、自らの命を絶とうとする若い少女の心境を描いたものとする解釈がある一方、”The sharp knife”と”a short life”は韻を踏むものであると同時に、”Who would have thought forever could be severed by The sharp knife…”(永遠が…鋭いナイフによって引き裂かれることがあると誰が思っただろう)という部分から、理由・原因を問わず一般的に人生に訪れた悲劇により命を絶たれる若い少女の心境を描いたものとする解釈もあるようです。

2. 積極的見解

他方、これとは全く対照的に、”I’ve had just enough time”という表現を、「私はまさに充分な時間を過ごした」と積極的に解して、たとえ何らかの悲劇によって若くして人生を終えることがあっても、それは充実した人生で、神のもとで幸せに暮らしていく若い少女の姿を描いた希望に溢れた楽曲であると解する見解もあり、若くして兄弟姉妹や親友を亡くした人々の心に強く共鳴する楽曲となっているようです。

また同様に積極的に捉える見解として、この楽曲全体が「if」という仮定の下に構成されていること、そしてバース3で強く表現されている、死によって初めて気づく大きな意味や価値に着目し、たとえどんな辛いことがあっても、どんなに自分が評価されていないことがある場合でも、死によって初めて気づく大きな意味や価値を改めて意識し、人それぞれ懸命に生きていくことで、訪れた悲劇の原因が何であれ、その時期がいつであれ、それぞれの幸せな人生を全うすることができ、神のもとで永遠に幸せに暮らしていくことができると解するメッセージ性の強い楽曲であると解する見解もあります。

3. The Band Perryの意図

この楽曲は、The Band Perryの長女キンバリー・ペリーが2人の弟と共に作詞作曲をした楽曲ですが、キンバリーはこの楽曲の意図についてAOL Musicが配信するカントリー専門サイト「Boot」のインタビューで以下のようにコメントをしています。

“That song works on so many levels and means different things to different people. It was just one of those songs that you felt like was meant to be on planet earth. We were just real humble to have the pen and paper in hand when it was ready to come, and for us it is a statement of contentment. We finished that song and just looked at each other and said, ‘How cool is this that we were able to put feet to our dreams?.’ So many people work so hard for so long and for whatever reason are not able, or don’t have the opportunity to access their dreams. So for us it was a statement of you know what, if it all ends at this moment for whatever reason even at our young ages, we’ve gotten to live and love so well and so completely. And that’s what it means to us.”

http://www.theboot.com/2010/06/21/the-band-perry-interview?icid=sphere_aol_theboot

“‘If I Die Young’ is actually the first song that we had penned for the album. It defines an early chapter of our music career. We penned it on a cloudy day in East Tennessee, which is where we live and do all of our best thinking. We wanted to write a song about making the most of whatever time you’re given – whether it’s two years, twenty years or two hundred.We really have gotten to live and love at our young ages. ‘If I Die Young,’ for us, is about if it all ends at this moment, look at what we’ve gotten to do. Whatever time we’re given will be absolutely enough as long as we make the most of it.”

http://www.theboot.com/2010/07/16/the-band-perry-if-i-die-young-lyrics/

簡単に意訳すると、「理由が何であれもしこの瞬間に命が全て終わってしまうならば私たちは若い頃からすべきことをしっかり見つめ、日々全力で懸命生き、そして愛していくこと」の大切さを謳ったもので「与えられた命の長さがどれ程であっても、最善を尽くす限り、それは充実した充分な人生である」ということを伝えたかったと話しており、上記の見解の中では最も最後に触れた見解に近いものになります。

4. PV(ミュージック・ビデオ)

ミュージック・ビデオでは、自らの命を絶とうとする若い少女を描いているのか、歌詞に沿う形で少女が舟で川に流され、”What I never did is done”(今まで決してしなかったことをした)という部分で、舟が沈みかけますが、しかし少女はそこから飛び出し家族のもとへ戻り、家族もそれにより何かを気づき、ラストでは家族と抱き合うという歌詞には直接的に表現されていないラストシーンとなっております。

5. PV(ミュージック・ビデオ)で気になる花と本

このミュージック・ビデオで特に気になるのが、随所に映し出される花の存在と少女が流される舟の中で手にしている本。花の存在は、たとえどくなに短い間でも、花の形や大きさはどうであれ、それぞれ力強く美しく咲き誇る姿を人生と照らし合わせメタファーとして用いたのではないかと思います。

6. アルフレッド・テニスン詩『シャロットの女』

また気になる少女が手にしている本は、英国詩人アルフレッド・テニスン(Alfred, Lord Tennyson)が発表した詩『シャロットの女』(シャロットの姫君、”The Lady of Shalott“、1833年・改訂版1842年)。この詩については以下のサイトで日本語訳と原文が掲載されていましたのでリンクいたします。

「シャロットの女」
「シャロットの姫君」
「シャロットの姫」
「シャロットの女」

以下物凄く短くした要約です。

主人公「シャロットの女」は、アーサー王の宮廷キャメロット城を臨む川の中州シャロットの塔に閉じ込められている女性で、魔法の鏡に映し出される外の世界の様子を機で織り続けなければならず、決して外の世界を直接見てはいけないという呪いがかけられている。しかしある日、川のほとりで歌う輝くほど美しく立派な騎士ランスロットの姿が鏡の中に映り、一目ぼれの恋に落ちた彼女は思わず窓に駆け寄り、外の世界を見てしまう。すると、鏡がひび割れ、織物の糸が彼女に絡みつき、自らの死を悟った彼女は、塔を飛び出し、小舟で川の流れに身をゆだねランスロット卿のいるキャメロット城へ向かう。しかし小舟がキャメロットに辿りつく時には既に彼女の歌声は消え、息を引き取っている。その美しい女性の亡骸を目にしたランスロット卿は神の恩寵が与えられるようにこう祈る。”She has a lovely face. God in his mercy lend her grace, The Lady of Shalott.“(何て美しい顔をしているのだろう。神よその慈悲のもと彼女に恩寵を賜わらんことを)。(※1842年改訂版)

7. 『If I Die Young』とアルフレッド・テニスン詩『シャロットの女』

この本を手にして川の流れに身をゆだねそして川に沈んでいく描写がミュージック・ビデオの中にありますが、しかし結末としてはこの詩『シャロットの女』とは対照的に「死」ではなく「生」を得ることになります。

『シャロットの女』の教訓には多説あるようですが、死ぬことによってしか外の世界との接触を持つことができない、すなわち、死により初めてその人の価値・美しさに気づくことがあるという点で、この曲『If I Die Young』が伝えようとしていることと共通しています。しかし、結末が異なるのは、この曲はそれを前提にし、それを意識し、前向きに日々懸命に生きてそして愛していくことこそ大切で、それが”enough”な人生であると訴えかけようとしている点にあると思います。

ミュージック・ビデオのラストシーンで、この『シャロットの女』の本が開かれて置かれているのも、そうしたことを意識して力強く生きていってほしいというメッセージが込められているような気がしてなりません。

ちなみに、ミュージック・ビデオ前半の中でさりげなく絵のない額縁が描写され、後半に各々の登場人物のバックグラウンドに描写されるシーンがありますが、それもそうした意識への喚起を具象化した描写といえるのではないでしょうか。

以上自分なりの解釈ではありますが、海外のサイトではいろいろなところで議論されていますので、気になる方はぜひ検索してみてください!

ザ・バンド・ペリー
Links of The Band Perry
The Band Perry公式サイト

The Band Perry公式サイト

【YouTube動画】http://www.youtube.com/user/TheBandPerry
【ツイッター】http://twitter.com/thebandperry

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(注釈・疑問・その他)
*1. Lord:(キリスト教)神、救世主、キリスト、shine down:照りつける
*2. “under my colors”:前の文を受けて「虹色の下で」と訳してみました
*3. ought to:(助動詞)(1)~すべき(義務)、(2)(肯定文で)~のはずだ(推量)
*4. “Ain’t even gray”直訳するとグレーでさえもない、母親が白髪でさえもないのに若くして娘を亡くしたという意味と推測。不明です。
*5. “The sharp knife of a short life”おそらく韻を踏んでいるのでしょうか。”Who would have thought forever could be severed by the sharp knife”という部分につながります。sever:(動詞)~を切断する
*6. have just enough time to 動詞:~するちょうど十分な時間しかない、~する時間しかない。to以下がないので曲全体の趣旨から今回は例外的に肯定的に解しました。海外の方もそれぞれ意見が分かれていたようです。
*7. キリスト教ということもありpurity ringを意味ではと推測しました。
*8. “put on your best boys”直訳すると、あなたの親友の男たちを着る!?意味不明ですが、海外の方のご意見を参考に”your best”(最適な服)を男の子たちに着せてもらうという意味と推測。
*9. “a penny for your thoughts“では、君の考えに対して1セント払うということから「何を考えているの?」という意味らしいです。
*10. dove:鳩、キリスト教では鳩は最も神聖な動物の一つですが、CCMのDove Awardsはここから来ているのかな。ダヴは関係なかったのか!

3 comments
  • 音はバリバリのカントリー。というかブルーグラスに近い。
    テイラーちゃんと同じプロデューサーとはビックリ。
    アルバムの他の曲を聴いていないので分からないが、この曲に限っては
    アレンジ、旋律はカントリーだが、lyricはカントリーでは無い。
    いろんな方の訳を見て感じたことは「スティービー・ニックス」だった。
    もちろんフリートウッド・マックの彼女だ。
    彼女のlyricが真っ先に頭に浮かんだ。 行間を読む歌詞だ。感覚で聴く歌詞だ。
    「もし私が若くして死んだら」に続くサビ部分のlyricの美しさは、裏に流れるフィドルとバンジョーの
    音と相まって「あぁ~、カントリー好きで良かったな」と思う。
    結構尖っているwordが多いので誤解を受けやすいかもしれないが、この曲は題名が「if」で
    始まることにより、どのようにでも解釈できる。

    しっかし長女いくつなのかな? 結構、理屈っぽそうだ(笑)
    変に売れ線に走らずに、ドカントリーで行って欲しい。

  • 田島さんカントリー愛溢れるコメントありがとうございます!
    今もなお米iTunesカントリー部門でトップ10入りを続け、現在も2位と異例の根強い人気のこの曲ですが、抽象的ながら美しく詩的で各々のリスナーの心に共鳴する多義的リリックは勿論、どこか郷愁漂う胸にいつまでも残るアコースティック・サウンドは何ともいえません。
    長女キンバリーは1983年7月12日生まれとのことで現在28歳です!

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