現地時間2月26日(日)、米映画界最大の式典となる第89回アカデミー賞(89th Annual Academy Awards )授与式が今年もロサンゼルスのドルビー・シアターで開催。映画『イヴの総て』(原題: All About Eve、1950年)、映画『タイタニック』(原題: Titanic、1997年)と並びアカデミー史上最多タイ14部門でノミネートされていた映画『ラ・ラ・ランド』(原題: “La La Land”)が、「監督賞」(デミアン・チャゼル)、「主演女優賞」(エマ・ストーン)、「撮影賞」、「美術賞」、「作曲賞」、「主題歌賞」(「City of Stars」)の最多6部門の受賞を果たしました。
先月(2017年1月8日)開催された第74回ゴールデン・グローブ賞(74th Golden Globe Awards)授与式では、ノミネート全部門受賞により史上最多7部門の受賞、今月(2017年2月12日)開催された第70回英アカデミー映画賞(70th British Academy Film Awards)では最多5部門を受賞する等、今回のアカデミー賞での大本命となっていた映画『ラ・ラ・ランド』。
Emma Stone backstage: "I was also holding my Best Actress card at that time … I don’t know what happened" https://t.co/VqXcAd8HU2 #Oscars pic.twitter.com/c2JJVYPI3f
— Hollywood Reporter (@THR) February 27, 2017
主演女優賞を手にし、最高の山場となる「作品賞」への期待が高まる中、主演女優賞の封筒を誤って渡されたプレゼンター(Faye Dunaway、Warren Beatty)が「作品賞」を映画『ラ・ラ・ランド』と発表。映画『ラ・ラ・ランド』関係者が壇上に上がるも、直後に訂正され、同映画に次ぎ8部門でノミネートされ対抗馬となっていた映画『ムーンライト』(原題: Moonlight)に「作品賞」が贈られます。「まるでM・ナイト・シャマラン監督による授与式だった」(米USA Today誌)等、史上稀に見るエンディングとして各メディアに報道されることに。
先週米トランプ大統領がトランスジェンダー保護政策を撤回するなど、トランプ大統領政策・発言への社会的批判が高まる中、貧困層に生まれ母親の育児放棄など過酷な環境の中でやがてゲイに目覚めていく黒人少年シャロンの成長を描く社会派映画『ムーンライト』は、アカデミー賞史上初めてのLGBT映画「作品賞」受賞作品となります。
ミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』
一方惜しくも「作品賞」を逃したものの、32歳にして史上最年少で「監督賞」を受賞したデミアン・チャゼル(Damien Chazelle)がメガホンを取る映画『ラ・ラ・ランド』は、3000万ドルの予算に対して世界興行収入3億6900万ドルの世界的ヒットを記録します。
その舞台となるのは、夢を追い求め若者が集う街ロサンゼルス、ハリウッド。
女優を夢みて小さな田舎町から来たエマ・ストーン(Emma Stone)演じる売れない女優ミアと、昔ながらのジャズを弾くため自身の店を開くことを夢みるライアン・ゴズリング(Ryan Gosling)演じるジャズ・ピアニスト、セバスチャン。その二人が希望と挫折が交錯するその街で出会い、やがて恋に落ち、困難と葛藤を通じて成長していく姿を切なくも魔法のようにロマンチックなミュージカルに乗せて描くラブ・ストーリー。
サントラ『ラ・ラ・ランド』
デミアン・チャゼルのハーバード大学時代の友人ジャスティン・ハーウィッツ(Justin Hurwitz)がその映画音楽を手がけ、昨年12月にリリースされたサウンドトラック『La La Land: Original Motion Picture Soundtrack』は全米ビルボード総合アルバムチャート「Billboard 200」で最高第2位、全英アルバム総合チャート第1位を記録をした他、世界各国で大ヒットを記録。
同収録曲「Audition (The Fools Who Dream)」及び「City of Stars」が「主題歌賞」(※正確には「オリジナル・ソング賞」―――Music (Original Song)――であるが、日本では一般的に主題歌賞として認識される)にノミネートされ、同一映画より2つの楽曲が「オリジナル・ソング賞」にノミネートされるという異例のノミネーションに。
主題歌賞受賞曲「City of Stars」
街を照らす星空に問いかけるように歌う「City of Stars」では、たとえこの先どうなろうとも今この瞬間、夜空を照らす二人の愛に生きる姿が描かれます。
「City of Stars」は、アニメーション映画『Trolls(トロールズ)』のジャスティン・ティンバーレイク(Justin Timberlake)「Can’t Stop The Feeling」、ディズニー・アニメーション映画『モアナと伝説の海』(原題: Moana)の「How Far I’ll Go」ら強豪を抑え、「主題歌賞」のオスカーを獲得。さらにそのスコアで「作曲賞」(Music – Original Score)を受賞します。
ライブ・パフォーマンス
パフォーマンスでは、映画『Trolls』よりジャスティン・ティンバーレイクの「Can’t Stop the Feeling!」でキックオフ、妻ジェシカ・ビールも見守る中、会場をダンスフロアーにする熱気溢れるショーで観客を沸かすと、ビル・ウィザース(Bill Withers)「Lovely Day」のカバー曲を披露。
#Oscars: @JTimberlake opens the show with 'Can't Stop the Feeling.' pic.twitter.com/Y3tOKUYZkh
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そしてステージが”伝説の海”となると、ディズニー映画『モアナと伝説の海』モアナ役声優アウリイ・クラヴァーリョ(Auli’i Cravalho)が劇中で歌う曲「How Far I’ll Go」へ。
Watch @Lin_Manuel and @auliicravalho deliver a heartfelt performance from the #Oscars stage. Presented by @ATT. pic.twitter.com/TsXM1xaIPn
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ブロードウェイ・ミュージカル『Hamilton』を手がけ、今回『モアナと伝説の海』の映画音楽を担当したリン・マニュエル・ミランダ(Lin-Manuel Miranda)が登場。今回もしアカデミー賞を受賞していれば史上13人目のEGOT(エミー賞、グラミー賞、アカデミー賞、トニー賞)となっていた彼はそのラップでプロローグを開きます。「彼女がソロを歌う前に舞台説明していいかい?/まだ17歳にもならない若き戦士を思い描いてほしい/大海原を夢み/希望に溢れ、帆を張りその縄を引く未来を見ている」。
ハワイ生まれで今回『モアナと伝説の海』でディズニーに大抜擢された歌手で女優のアウリイ・クラヴァーリョは、波をイメージしたフラッグに頭を激突されるアクシデントに見舞われる中、見事その美しい歌声でモアナの世界をステージに作り上げます。放送後そのプロフェッショナルな16歳に称賛の声が大きく寄せられ、逆風も追い風に変える”モアナ”は米メディア各誌で大きく話題となります。
.@OfficialSting performs the emotional “The Empty Chair” at the #Oscars. Presented by @ATT. pic.twitter.com/cLhxZh5MqR
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その後スティング(Sting)が、映画『Jim: The James Foley Story』より「主題歌賞」にノミネートされた曲「The Empty Chair」を披露。2014年にイスラム過激派組織ISISによって殺害されたジャーナリストJames Foleyを題材にした同映画の曲となる「The Empty Chair」で、J・ラルフ( J. Ralph)と共に書き下ろしたスティングがその追悼を捧げます。
Relive @johnlegend’s magical #Oscars performance. Presented by @ATT. pic.twitter.com/K6f88qTgFI
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映画『ラ・ラ・ランド』のパフォーマンスでは、授与式前から大きく話題となっていたジョン・レジェンド(John Legend)が登場。映画の美しいシーンを再現する舞台で「Audition (The Fools Who Dream)」、「City of Stars」を情感溢れる歌声で歌い上げ、魔法のようなそのロマンチックな世界へと誘います。
Debbie Reynolds, Carrie Fisher close the In Memoriam tribute at the #Oscars. pic.twitter.com/vVDpageplg
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そして昨年亡くなった米プリンス(Prince)をはじめ、女優ザ・ザ・ガボール(Zsa Zsa Gabor)、俳優ジーン・ワイルダー(Gene Wilder)、女優メアリー・タイラー・ムーア(Mary Tyler Moore)、女優デビー・レイノルズ(Debbie Reynolds)とその娘の女優キャリー・フィッシャー(Carrie Fisher)らへ贈るメモリアル・シーンへ。先週亡くなったばかりの映画『タイタニック』のビル・パクストン(Bill Paxton)の名を挙げ、涙をこらえるようにジェニファー・アニストン(Jennifer Aniston)から紹介されると、サラ・バレリス(Sara Bareilles)がジョニ・ミッチェル( Joni Mitchell)の名曲「Both Sides Now」を天に捧げ、そして最後にレイア姫のその言葉でそのトリビュートを飾ります。「フォースが共にあらんことを」。
その他のアカデミー賞受賞
なお、第89回アカデミー賞受賞作品は以下の通り。「主演男優賞」には、映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(原題: Manchester by the Sea)のケイシー・アフレック(Casey Affleck)が2度目のノミネートにして初めてのオスカーを手に。同部門で同じくノミネートされ、演技の師と慕うデンゼル・ワシントンに感謝のスピーチを行いました。
#Oscars: All the winners by film https://t.co/VGPhNhlAUc pic.twitter.com/A3TTzUUe50
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また「長編アニメ賞」では海外メディアの前予想通り、米ディズニー・アニメーション映画『ズートピア』(原題: Zootopia)が受賞。残念ながら期待されていたジブリ共同製作映画『レッドタートル ある島の物語』の受賞とはなりませんでした。
第89回アカデミー賞受賞全リスト
Oscars 2017 winners list
『ムーンライト』- 作品賞受賞
『ラ・ラ・ランド』
『LION/ライオン 25年目のただいま』
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
『メッセージ』
『最後の追跡』
『ハクソー・リッジ』
『フェンス(原題)』
『ヒドゥン・フィギュアズ(原題)』
デミアン・チャゼル『ラ・ラ・ランド』- 監督賞受賞
デミアン・チャゼル『ラ・ラ・ランド』
バリー・ジェンキンズ『ムーンライト』
ケネス・ロナーガン『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
ドゥニ・ヴィルヌーヴ『メッセージ』
メル・ギブソン『ハクソー・リッジ』
エマ・ストーン『ラ・ラ・ランド』- 主演女優賞受賞
イザベル・ユペール『エル(原題)』
ルース・ネッガ『ラビング 愛という名前のふたり』
ナタリー・ポートマン『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』
エマ・ストーン『ラ・ラ・ランド』
メリル・ストリープ『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』
ケイシー・アフレック『マンチェスター・バイ・ザ・シー』- 主演男優賞受賞
ライアン・ゴズリング『ラ・ラ・ランド』
デンゼル・ワシントン『フェンス(原題)』
ケイシー・アフレック『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
アンドリュー・ガーフィールド『ハクソー・リッジ』
ヴィゴ・モーテンセン『キャプテン・ファンタスティック』
ヴィオラ・デイヴィス『フェンス(原題)』- 助演女優賞受賞
ミシェル・ウィリアムズ『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
ナオミ・ハリス『ムーンライト』
ニコール・キッドマン『LION/ライオン 25年目のただいま』
オクタビア・スペンサー『ヒドゥン・フィギュアーズ(原題)』
マハーシャラ・アリ『ムーンライト』- 助演男優賞受賞
ジェフ・ブリッジス『最後の追跡』
デヴ・パテル『LION/ライオン 25年目のただいま』
マイケル・シャノン『ノクターナル・アニマルズ(原題)』
ルーカス・ヘッジズ『マンチェスター・バイ・ザ・シー』
『ズートピア』- 長編アニメ賞受賞
『レッドタートル ある島の物語』
『ファインディング・ドリー』
『Kubo and the Two Strings(原題)』
『ズートピア』
『マイ・ライフ・アズ・ア・ズッキーニ』
『ひな鳥の冒険』- 短編アニメ賞受賞
『盲目のヴァイシャ』
『Borrowed Time(原題)』
『Pear Cider and Cigarettes(原題)』
『Pearl(原題)』
『ラ・ラ・ランド』(リヌス・サンドグレン)- 撮影賞受賞
『メッセージ』(ブラッドフォード・ヤング)
『ラ・ラ・ランド』(リヌス・サンドグレン)
『LION ライオン 25年目のただいま』(グレイグ・フレイザー)
『ムーンライト』(ジェームズ・ラクストン)
『沈黙 サイレンス』(ロドリゴ・プリエト)
『O.J.:メイド・イン・アメリカ(原題)』- 長編ドキュメンタリー賞受賞
『海は燃えている イタリア最南端の小さな島』
『I Am Not Your Negro(原題)』
『ぼくと魔法の言葉たち』
『13th 憲法修正第13条』
『ホワイト・ヘルメット シリア民間防衛隊』- 短編ドキュメンタリー賞受賞
『最期の祈り』
『4.1 Miles(原題)』
『Joe’s Violin(原題)』
『Watani: My Homeland(原題)』
『セールスマン』(イラン)- 外国語映画賞受賞
『ヒトラーの忘れもの』(デンマーク)
『幸せなひとりぼっち』(スウェーデン)
『Tanna(原題)』(オーストラリア)
『ありがとう、トニ・エルドマン』(ドイツ)
『合唱』- 短編実写映画賞受賞
『Ennemis Interieurs(原題)』
『彼女とTGV』
『Silent Nights(原題)』
『タイムコード』
『メッセージ』- 音響編集賞受賞
『バーニング・オーシャン』
『ハクソー・リッジ』
『ラ・ラ・ランド』
『ハドソン川の奇跡』
『ラ・ラ・ランド』(ジャスティン・ハーウィッツ)- 作曲賞受賞
『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』(ミカ・レビ)
『LION ライオン 25年目のただいま』(ダスティン・オハローランハウシュカ)
『ムーンライト』(ニコラス・ブリテル)
『パッセンジャー』(トーマス・ニューマン)
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(ケネス・ロナーガン)- 脚本賞受賞
『最後の追跡』(テイラー・シェリダン)
『ラ・ラ・ランド』(デイミアン・チャゼル)
『ロブスター』(ヨルゴス・ランティモスエフティミス・フィリプ)
『20センチュリー・ウーマン』(マイク・ミルズ)
『ムーンライト』(バリー・ジェンキンス、タレル・アルビン・マクレイニー)- 脚色賞受賞
『メッセージ』(エリック・ハイセラー)
『Fences』(オーガスト・ウィルソン)
『Hidden Figures』(セオドア・メルフィ、アリソン・シュローダー)
『LION ライオン 25年目のただいま』(ルーク・デイビス)
「City of Stars」『ラ・ラ・ランド』- 主題歌賞受賞
「Audition(The Fools Who Dream)」『ラ・ラ・ランド』
「Can’t Stop the Feeling」『Trolls』
「The Empty Chair」『Jim: The James Foley Story(原題)』
「How Far I’ll Go」『モアナと伝説の海』
『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(コリーン・アトウッド)- 衣装デザイン賞受賞
『マリアンヌ』(ジョアンナ・ジョンストン)
『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』(コンソラータ・ボイル)
『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』(マデリーン・フォンテーヌ)
『ラ・ラ・ランド』(メアリー・ゾフレス)
『スーサイド・スクワッド』- メイクアップ&ヘアスタイリング賞受賞
『幸せなひとりぼっち』
『スター・トレック BEYOND』
『ラ・ラ・ランド』- 美術賞受賞
『メッセージ』
『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』
『ヘイル、シーザー!』
『パッセンジャー』
『ハクソー・リッジ』(ジョン・ギルバート)- 編集賞受賞
『メッセージ』(ジョー・ウォーカー)
『最後の追跡』(ジェイク・ロバーツ)
『ラ・ラ・ランド』(トム・クロス)
『ムーンライト』(ナット・サンダースジョイ・マクミロン)
『ジャングル・ブック』- 視覚効果賞受賞
『バーニング・オーシャン』
『ドクター・ストレンジ』
『クボ・アンド・ザ・トゥー・ストリングス(原題)』
『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』
『ハクソー・リッジ』- 録音賞受賞
『メッセージ』
『ラ・ラ・ランド』
『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』
『13時間 ベンガジの秘密の兵士』
米アカデミー公式サイト受賞者一覧
https://www.oscars.org/oscars/ceremonies/2017