ケンドリック・ラマー、アルバム『DAMN.』でピューリッツァー賞 ラッパーとして史上初


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米コロンビア大学は現地時間4月16日(月)、優れた報道、文学などに贈るピューリッツァー賞(Pulitzer Prize)を発表。最後に発表された音楽部門では、米ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)がそのアルバム『DAMN.』で受賞を果たしました。

ピューリッツァー賞音楽部門でラップ・アーティストがピューリッツァー賞を受賞するのは、音楽部門が新設された1943年以来史上初めて。さらに音楽部門の賞を、クラシック、ジャズ以外のアーティストが受賞するのも、史上初めてとなります。

選考委員会のデイナ・キャナディー(Dana Canedy)は今回の受賞理由について、「生きた言葉ならではの信頼性、リズムの内に秘めたエネルギーは、現代のアフリカ系アメリカ人の複雑な人生を捉える描写を深め、巧みな曲集となった」(a virtuosic song collection unified by its vernacular authenticity and rhythmic dynamism that offers affecting vignettes capturing the complexity of modern African-American life)。またピューリッツァー賞の公式サイトでは、『DAMN.』を”ラップのワイドスクリーンのマスターピース”と称賛したPitchforkのレビューを引用。「ストーリーテリング(物語を描く歌詞)はラマーの最も優れたスキルであり、主眼としていたものだ。生まれ育った彼自身の人生を(数多くの)言葉に込め、周りから自分の身を守る日々のすべの詳細を明確に表現した」。

貧困からアメリカで犯罪率の最も高い都市の一つとなっている、コンプトンで生まれ育ったケンドリック・ラマー。「Duckworth」の父がストリート・ギャングのメンバーであったことでも知られる一方、黒人・ヒスパニック系のギャングの抗争渦巻く環境のなか、学校に通い続け、小説・詩を書くことが好きな優秀な生徒だったといいます。

DAMN.

『DAMN.』についてケンドリック・ラマーは、「最初のゴールは、前二作を融合させることだった」、「全体的に焦点となったのは、サウンド、歌詞、メロディを通じて、それをどう実現するか。そして頭の中にあったものをそのままの形にすることができたんだ」(Rolling Stone)。「それは俺自身の全てが詰まったものだ」。

2017年4月にリリースされた通算4枚目となるアルバム『DAMN.』は、全米ビルボード総合アルバム・チャート「Billboard 200」初登場第1位を含め、計4週で全米首位を獲得(Billboard)。全米ビルボード「Hot 100」首位で世界的ヒットとなった「Humble」をはじめ、リアーナ(Rihanna)とコラボした話題曲「Loyalty」、U2との「XXX」などを収録し、米国内で100万枚のアルバム・セールス、300万を超えるアルバム同等セールス(※ストリーミング換算含む)を記録。2017年の全米ビルボード年間アルバムチャートでは第1位を獲得します(Billboard)。

しかし今年1月開催の第60回グラミー賞では、ケンドリック・ラマーは、ラップ全4部門で受賞を果たしたものの、「Humble」がノミネートされていた主要部門「最優秀レコード大賞」及び『DAMN.』がノミネートされていた主要部門「最優秀アルバム賞」での受賞をブルーノ・マーズ(Bruno Mars)の「24K Magic」及びアルバム『24K Magic』に全て譲ります。

ピューリッツァー賞×音楽

2017年は中国人作曲家Du Yunのオペラ「Angel’s Bone」が受賞。ピューリッツァー賞音楽部門の賞は、これまで主にクラシック界のアーティストらに贈られており、1997年に米トランペット奏者/作曲家ウィントン・マルサリス(Wynton Marsalis)が『Blood on the Fields』で受賞し、初めてジャズ作品が受賞、その歴史的瞬間を迎えます。その後2007年に米ジャズ・サックス奏者オーネット・コールマン(Ornette Coleman)、2016年にジャズ・サックス奏者ヘンリー・スレッギル(Henry Threadgill)が受賞。音楽部門以外では、ボブ・ディラン(Bob Dylan)が2008年に特別賞「Special Awards and Citations」を受賞。2016年にはヒップホップ音楽を組み込んだミュージカル『ハミルトン』がドラマ部門で受賞しています。

今回の発表の際には笑顔を見せた選考委員会のデイナ・キャナディー。発表後、記者らに「我々はこの選考を大変誇らしく思っています」。「全く異なった形でヒップホップ音楽に光を照らすものです。ヒップホップ音楽にとって、そしてピューリッツァー賞にとって大きな瞬間です」(BBC)。

今年の音楽部門の審査員となったのは、ジャズ・バイオリン奏者レジーナ・カーター(Regina Carter)、メトロポリタン・オペラのポール・クレモ(Paul Cremo)、アフリカ系アメリカ人の文化の研究を行っているコロンビア大学教授ファーラー・グリフィン(Farah Jasmine Griffin)、作曲家デイビット・ラング(David Lang)ら。

審査員の一人、デイビット・ハージドゥ(David Hajdu)は、ヒップホップを普段聞かない審査員もいたことを米ニューヨーク・タイムズ紙に明かします。「しかし我々がアルバムを聞いたとき、全会一致だったよ」。「ぜひ聴いてほしい、本当に見事だ、音楽の最高傑作といえるものだ」。

映画『ブラックパンサー』(原題:Black Panther)のサントラ『Black Panther: The Album』では、ケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)が音楽プロデューサーに起用され、全米首位を獲得するなど、記録的ヒットとなった。

同ニュースは米各紙で歴史的瞬間であると報じられる一方、2016年ノーベル文学賞を受賞したボブ・ディランの受賞後の沈黙と重なるように、現在ケンドリック・ラマーの正式なコメントは発表されておりません(※追記、ケンドリック・ラマーは受賞を受け、ピューリッツァーのFacebookライブビデオでは、「光栄です。全ての人生を通じて曲を書いてきました。こうした形で表彰を受け、美しい限りです」と語っている)。

昨年のInterview Magazineでのインタビューで「Humble」の30歳は、「アーティストとして成長する中で、自分の社会的使命は、自分自身をまさに表現することだと学んできた。誰にも俺の音楽を分類してほしくない。こう言ってほしい、”自分の本当の感情、自分の本当の気持ち、自分の考え、自分の思考、持論、自分の世界観を認識しているヤツであり、その全てがこの一枚に詰まってる”と。それをわかってほしい、そしてそれを皆のそれぞれの人生のものにしてほしい」。なお今回の受賞では15,000ドル(約160万円)が贈られます。

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