エミネム×エド・シーラン最新コラボ曲「River」MV公開


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ラップの「神」と崇められた男エミネム(Eminem)。全米ビルボード「Billboard 200」第1位を記録し、賛否両論も”ヴァイラル”となった最新アルバム『Revival』ダウンロード版)より第2弾、英エド・シーラン(Ed Sheeran)とのコラボ曲「River」のミュージック・ビデオがバレンタインに合わせて公開されました。

「Unhappy Valentine’s day!」(tweet)、デトロイトのラッパーがその愛の誓いの日、バレンタインに送る映像には、重苦しく陰鬱な部屋に一台のカメラ。憎悪と殺気に近い憤りをも感じさせる緊迫感漂わせる眼差しに、その手には贖いを滲ませるエミネム。「あなたにとって、愛とは何ですか」、エド・シーラン「Thinking Out Loud」等数々の世界的ヒット曲の映像を手がける英映像監督エミル・ナヴァ(Emil Nava)がメガホンを取るミュージック・ビデオでは、その似つかわしくない質問とともに幕を開けます。

インタビューを遮り過去を映すスクリーンには、セックス依存症の夫トレバー(Trevor)の浮気へのあてつけに、ビデオを撮りながらエミネムとの関係をもった人妻スザンヌ(Suzanne)。夫からのDVの傷を埋めるように、愛人エミネムとの一夜の関係は、やがて歪んだ愛の関係へと形を変え、スザンヌの妊娠が発覚すると、激しい口論へ。

エミネム「どうしたんだ」
スザンヌ「妊娠したの」
エミネム「ふざけてんのか?」
スザンヌ「…」
エミネム「マジなのか?」
スザンヌ「そうよ…」
エミネム「子どもはダメだって、俺たち話しただろ」
スザンヌ「私たちはこうなる運命だったのかもしれないわ」
スザンヌ「私たちの間には、セックス以上のものがあったのかもしれないわ」
エミネム「おいおい待てよ、聞けよ、俺たち一緒になるって言うのか」
エミネム「ただの遊びの関係だろ」
スザンヌ「冗談でしょ?」
スザンヌ「責任取ってよ、クソったれの行動のせいなんだから!」
スザンヌ「あなたは身勝手だわ!!」
エミネム「俺が身勝手だってのか?」

子どもを産みたいというスザンヌに対して、パニックとなった45歳のラッパーは堕ろすよう迫り、「娘はいま子宮にいる/俺たちはあの子をこの世に生むできない/避妊すべきだったんだ」。そしてそのラップで「俺が我が子を終わらせたんだ/この三角関係は俺たちをメチャクチャにした/他に何て言えばいいんだ?/楽しい時もあった/誓う、お前の笑顔を心から愛していただろう/本当は堕ろしたくなかったんだ、でもあぁ!/俺たちの生まれなかった我が子に、何てウソを重ねればいいんだ?

そして雨打たれるエド・シーランは「俺は嘘つきで、盗人/愛人であり、浮気をしていた/俺の全ての罪に聖水を、俺を洗い流したまえ/なあ、幼き命よ」、するとエミネムは「ごめんな」。そしてエド・シーランは「認めたくはないが」、エミネムが「俺のせいだ」。「苦しみでしかないのならば、真実と俺の嘘が雨のように流れ落ちよう/そしてその川を流れるままにしよう」。

Holy Water

新約聖書で描かれる湖上を歩くイエス・キリストの奇蹟を想起させるタイトルとなったリード・シングル曲「Walk on Water」。それに続くシングル曲となる「River」では、「マタイによる福音書」3章に登場し、罪を告白し、洗礼を受けるヨルダン川をも人々に想起させるなか、LifeNewsは「堕ろした子どもへの哀惜の謝罪」と言及。今回アルバム『Revival』がアンチ・トランプ政権へのアンセムとしてメディアで賛美される中、同曲はその不都合な贖罪となったと論説します。しかし、一貫してトランプ大統領を痛烈に批判するエミネムはその星条旗に頭を抱えます。

River

トランプ大統領に反対するエミネムは昨年10月開催「2017 BET Hip-Hop Awards」でトランプ大統領をフリースタイル・ラップで痛烈に批判。全米各メディアから称賛され、大きく話題となった。

アメリカにおける人工妊娠中絶の議論をめぐっては、胎児の命を優先し中絶規制法に賛成する「プロライフ」(Pro-Life)派と、女性の選択権を重視し中絶規制法に反対する「プロチョイス」(Pro-Choice)派に分かれ、国論を激しく二分。

人工妊娠中絶に厳しく反対するドナルド・トランプ大統領誕生に伴い、人工妊娠中絶の議論が再燃するなか、「人」とされない胎児に「River」では「娘」への思い、その胸中を明かします。「この曲はあなたにとって、どういう意味の楽曲ですか?」という最後のインタビュアーの問いにエミネムは、「この曲は俺にとって、打ち明ける必要があったと感じる曲だ」。

中絶規制州法の違憲無効判決に「全米の女性の勝利です、安全な中絶は権利です」とヒラリー・クリントン、一方、人工妊娠中絶を支援するNGOへの助成を禁じ、排他的政策により発展途上国、紛争地域の女性、少女の命を危険に晒すこととなっているトランプ大統領。約7分間にも及ぶ映像のエンディングでは、再び私たちを最初の問いへと引き戻します。

「あなたにとって、愛とは何ですか?」
 
 
 
 


※日本の法律では
 
人工妊娠中絶は日本では刑法上、堕胎の罪(刑法212条~刑法216条)となり、懲役刑が規定されています。但し、母体保護法14条各号に該当する場合(1項1号:妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの、2号:暴行若しくは脅迫によって又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの)で、かつ、「都道府県の区域を単位として設立された社団法人たる医師会の指定する医師」(指定医師)が「本人及び配偶者の同意」を得て行う場合は、(違法性阻却となり)適法とされ、事実上、自己堕胎罪は空文化していると指摘されます。
 
もっとも、堕胎により母体外に排出された嬰児が生命機能を有し、作為・不作為(放置行為など)により死に至らせた場合は、堕胎罪とは別に、殺人罪(刑法199条)あるいは保護責任者遺棄致死罪(刑法218条)の成否が問題となります。判例は一部露出した以上、「人」として扱い、殺意が認められなかった事例で、保護責任者遺棄致死罪の成立を認めています(最判昭63.1.19)。
 
なお堕胎の有無にかかわらず、女性に対して堕胎を無理矢理迫った場合、強要罪(刑法223条1項)となる場合があります。
 
※アメリカの判例と法律
 
現在の礎となっているのは、1973年「ロー対ウェイド事件」のアメリカ合衆国最高裁判所の判決。同判決では、「妊娠を終了するか否かに関する女性の決定権」は自己決定権も包含されるプライバシー権に含まれると判断し、憲法修正第14条に基いて女性の堕胎の権利を初めて保障。同判決は、人工妊娠中絶を規制する各州の法律の大部分を違憲無効とし、「プロチョイス」派から強く支持されます。しかし人工妊娠中絶に厳しく反対するドナルド・トランプ大統領は、昨年1月、世界各国で人工妊娠中絶を支援するNGOへの助成を禁じる大統領令に署名。トランプ政権誕生の伴い、保守色の強い州で人工妊娠中絶の権利を制限する法案が成立するなど、議論が再燃しています。
 
人工妊娠中絶の議論は、倫理上、宗教上、法律上のみならず、政治的問題、医療現場の実情、規制強化による無理な堕胎による命の危険等、その問題を一層複雑化させ、さらに(中絶しないで出産した子の)事実上の人身売買、先端医療における中絶した胎児の組織利用など、議論・解決すべき深刻な問題も指摘されます。

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