14歳癒やしの歌声マンディ・シヴィラナ、救い・再生のピアノバラード「Through The Rain」


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「フィリピンのハーマイオニー・グレンジャー」。英小説家J・K・ローリング原作映画『ハリー・ポッター』シリーズでエマ・ワトソン演じるホグワーツ魔法魔術学校のイギリス人女子生徒に扮した姿(動画)がそっくりと2017年、SNSで話題となりそう呼ばれました。彼女の名はマンディ・シヴィラナ(Mikhaela ‘Mandy’ Sivillana/Sevillana)、14歳。オーストリア人の血を引き、どこまでも透き通る美しい歌声、人々を癒やすエモーショナルな歌声はまさに天から贈られた「天使の歌声」と言われ、その魔法のような歌声を耳にした人々を魅了してきました。

そんな彼女が歌うマライア・キャリー(Mariah Carey)のミッドテンポの2002年バラード「Through the Rain」。吐息のクリスタル・ヴォイスで冷雨に響かせる絶望と悲傷、苦難と孤独。悲愴は力強い希望と再生のコーラスへ。温もりに包む説得力ある歌声が国を超えて、希望と救いの光を射し込みます。

(バース1)「あなたが逃げ場のない雨から抜け出せない時/あなたが独りでもがき苦しんでいる時/助けを泣き叫んでも、誰も現れない時/そして途方に暮れ/帰る道を見つけることができない時/あなたは一人でも辿り着ける/大丈夫、いったん声にしさえすれば…」(コーラス)「私は雨を乗り越えことができる/私はもう一度自分の足で立ち上がれる/よくなっていく、その強さが私にはあるってわかってる/不安に襲われる度、私はじっとこらえ自分を信じ切る/そしてもう一日生き抜いて、そして私はこの雨を乗り越える」

(バース2)「そしてもしあなたが倒れ続けたら、決して諦めないで/きっとあなたは無事に息を吹き返すわ、だからしっかりと歩み続けて/そしてあなたは勝利を掴み取るわ/いったん声にしさえすれば…」(コーラス)「私は雨を乗り越えことができるわ/私はもう一度自分の足で立ち上がれる/よくなっていく、その強さが私にはあるってわかってる/不安に襲われる度、私はじっとこらえ自分を信じ切る/そしてもう一日生き抜いて、そして私はこの雨を乗り越える」

(ブリッジ)「そして風が荒れ/闇が襲う時/恐れないで、あなたが立ち向かえないものはない/乗り越えられないと言われても/ためらわずに、胸を張って声にして」(コーラス)「私は雨を乗り越えことができるわ/私はもう一度自分の足で立ち上がれる/よくなっていく、その強さが私にはあるってわかってる/不安に襲われる度、私はじっとこらえ自分を信じ切る/そしてもう一日生き抜いて、そして私はこの雨を乗り越える」(アウトロ)「そしてもう一日生き抜いて、そして私は/この雨を乗り越える/ そうよ、あなたならできる/あなたはこの雨を乗り切れる」

2001年にマライア・キャリーは肉体的・精神的な極度の疲労から入院。2002年には父親Alfred Roy Careyが他界。哀傷と精神的崩壊により完全に自分を見失っていたという彼女がLionel Coleと共に書き上げた「Through the Rain」は、そうした彼女自身の経験とインスピレーショナルなメッセージが込められた一曲。ゴスペルの雰囲気も漂わすそんな人生の苦難から立ち上がるバラードを美しく歌い上げるマンディにも、マライア・キャリーと重なる姿がありました。

2015年当時9歳、キッズ歌コンペティション番組『The Voice Kids』フィリピン版シーズン2に出場、バトル・ラウンドで敗退となるもその後歌コンテスト・TV番組で歌声を披露し続けてきた彼女の名を国中に広めたのが、2017年10月に放送されたフィリピンGMAネットワーク人気ドキュメンタリー番組『カプソ・モ、ジェシカ・ソーホー』(Kapuso Mo, Jessica Soho)。そこには貧困にあえぎながら苦難・孤独感と葛藤する12歳の少女の素顔が赤裸々に映し出され、衝撃を走らせました。

マンディ・シヴィラナ、12歳で”小さな母親”となった少女。幼い弟の面倒を見ながら、料理、食器洗い、洗濯、掃除。毎日全ての家事をこなし、オムツをとりかえ学校に通います。「母親がしていること、その多くを経験してきました」とマンディ。「母親は子どもたちのために食料を買い、幸せに暮らせるよう育てます。私の本当の母がいない間、私がその全てをします」。彼女の母親は当時、刑務所の中。違法薬物使用の罪で収監され、オーストリア人の父親はマンディがまだ母親のお腹の中にいる時に去ったといいます。「私の友達は私にこう言います、”あなたは可愛らしく優しいのに、あなたのお母さんは監獄の中なのね。お父さんはあなたを捨てて、あなたのことなんて愛してなんかいないんだわ”。私は生まれてから一度も父に会ったことがありません。彼は私の母のもとを去りました。母が違法薬物に手を出すようになったからです」。「こんなふうに言う人もいます、私の父はお金持ちで、でも彼は私たち以上に新しい妻を愛しているんだって」。

「私のクラスメートはこんなことも言います」、声をつまらせながら「”マンディ、今日は父の日だよ。誰が君を(学校に)送ってくれるの?君の犬かい?”って」。弟を可愛がり母親代わりとなって育て、学校に通い続けながら家族を支えるマンディ。学校ではクラスメートに手作りのアクセサリーを売り、そのお金で食料、オムツ、ミルクを買い、歌コンテストのステージに立つことで小さな収入を得てきたといいます。しかし彼女はまだ12歳。「外で遊んだりもしたい…。私は、…私のことを気にかけてくれるお母さんがいてほしい。私を学校へ送ってくれるお父さんがいてほしい…」。「辛いわ…、私の中の何かが心から望んでいる、その愛を…」。

今月公開されたガリー・バレンシアーノ(Gary Valenciano)のクリスチャン・ソング「Lead Me Lord」のカバー。これまで歌い続けてきたマンディにとって代表的な一曲。その歌には深い祈りと強き信仰・愛が込められます。

(バース1)「主よ私をお導き下さい/主の御手の中に、そして御来光を仰げますようお力を貸してください/人生の全ての痛みの中で慰めを与えて下さい/私には頼れる希望がありません/どうか主よ、お導きを…/私の人生をお導き下さい」、「私と共に/その孤独な道を私と共に歩いて下さい/私の腕を取り、主の御手でその道をお示し下さい/主の心の中で生きる道を/全ての私の日々で、全ての私の人生で」(コーラス)「あなたは私の光/私の足元を照らす燈火/主よ、ずっと私のそばに、あなたが必要です/あなたは私の光/一人では生きていけません/あなたの導きし愛のそばにいさせて下さい/人生を通して/主よどうか私をお導き下さい」

誕生日の願いに、「いつかあなたに会える日を願っています。ハグしたり、お話ししたりしたいわ」、マンディはテレビを通じてまだ見ぬ父に語りかけました。それから2年。明後日はマンディ15歳の誕生日。その願いは叶っていないものの、「初めてケーキを焼いたよ」と満面の笑顔。歌声を磨きながらイベント・シンガーとしても活動を続けます。雨にも負けず、風にも負けず。穏やかに澄み渡るその癒やしの歌声には、荒波に呑まれ救いを求め続けた波乱の人生が刻まれています。

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