世界最大の歌コンペティション番組『ユーロビジョン・ソング・コンテスト2022』(Eurovision Song Contest 2022)の決勝が前大会優勝国イタリアのミラノで今日(現地時間2022年5月14日)開催され、ウクライナ代表カルッシュ・オーケストラ(Kalush Orchestra)の「Stefania」が最高得点(631ポイント)を獲得し、ウクライナが優勝を果たした。ウクライナの優勝は、2004年大会、2016年大会に続き6年ぶり3度目の優勝。イギリス(466ポイント)が準優勝、スペイン(459ポイント)が第3位、スウェーデン(438ポイント)が第4位、セルビア(312ポイント)が第5位となった。
(ロシアを除く)40カ国が参加し、25カ国が決勝で戦った第66回ユーロビジョン・ソング・コンテスト、そのトロフィーを手にしたカルッシュ・オーケストラのフロントマン/ラッパーのOleh Psiukは優勝スピーチで、「皆さんありがとうございます。ウクライナを応援してくれてありがとうございます。この勝利を全てのウクライナ人に捧げます。ウクライナに栄光あれ!」と戦禍のウクライナへ優勝を捧げた。
優勝後の初インタビューでOleh Psiukは今大会を振り返り、「皆さんがご存知のように我々が直面している状況の中で、長く険しい道のりでした。長い間一緒に集まりリハーサルする機会さえありませんでしたし、長き道のりでした。ウクライナの文化とウクライナの音楽を応援してくれた全ての皆さんに心から感謝しています」。
ウクライナ伝統音楽のフォークの要素とモダンなヒップホップを融合したフォーク・ラップ・ソング「Stefania」は、子守唄を軸に子供の頃を回想しながら母親が白髪になっていく姿を歌い、母親の愛と優しさ、苦悩と強さをノスタルジックに力強く描いた曲。タイトルにもなっている「ステファニア」はOleh Psiukの母親の名で、Stefaniaはギリシャ語の「戴冠/勝利」が語源になっている。母親の眼差しがスクリーンに映し出されたその舞台では、母親たちの眼差しが魂を癒やし、母親たちの手が我が子を守り、地上にこぼれ落ちる母親たちの涙が新しい命を生む物語を描いた。
大会前からオッズで優勝最有力候補として独走していたウクライナは、40カ国の視聴者票で第2位以下を大きく引き離して最高得点439ポイントを獲得。決勝の視聴者票としてはユーロビジョン史上最高得点となった。視聴者票の第2位にはモルドバ(239ポイント)、第3位はスペイン(228ポイント)、第4位セルビア(225ポイント)、第5位イギリス(183ポイント)となった。
音楽プロフェッショナルらによる40カ国の審査員票では、第1位イギリス(283ポイント)、第2位スウェーデン(258ポイント)、第3位スペイン(231ポイント)、第4位ウクライナ(192ポイント)、第5位ポルトガル(171ポイント)となった。
ウクライナvsイギリスとなった決勝の投票結果で、ウクライナの優勝が決まった瞬間、歓喜のガッツポーズをしたのはイギリス代表のTikTokスター=サム・ライダー(Sam Ryder)。エルトン・ジョン(Elton John)の「Rocket Man」やザ・ビートルズ(The Beatles)、デヴィッド・ボウイ(David Bowie)らブリティッシュ音楽のレトロなヴァイブスを注ぐアップリフティングなパワー・バラード「SPACE MAN」を美しく力強い歌声で熱唱し、審査員票で最高得点を獲得、準優勝となった。
欧州最大の音楽大国イギリスは過去5度の優勝経験がある一方、近年の成績は低迷し5度の最下位。EU離脱の影響も受け2019年、2021年の2大会連続で最下位で、イギリスは前大会の決勝で視聴者票、審査員票ともに0ポイントだった。1997年大会が最後の優勝となっているイギリスがトップ3を記録するのは2002年大会(第3位)以来20年ぶり。準優勝は、1998年大会以来24年ぶりの快挙となった。
ジョン・レノン(John Lennon)の反戦歌「Give Peace a Chance」(1969年、邦題:平和を我等に)をサンカルロ広場で壮大に歌う地球最大のロックバンド=Rockin’ 1000のパフォーマンスで幕を開け、多様な文化、伝統で織りなす音楽&ダンスのライブ・パフォーマンスを「Hope」で締めくくり、平和、希望、愛のメッセージが色濃く映し出されたグランド・ファイナル。来年のユーロビジョンは、今大会優勝国のウクライナで開催される。ロシアによる侵攻を受けて先が見えないなか、開催地についてOleh Psiukは「独立したウクライナの町ならどこだっていい」と語る。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領はウクライナの優勝を受けて、SNSでマリウポリでのユーロビジョン開催への意欲をコメントしている。「我々の勇敢さが世界を感動させ、我々の音楽がヨーロッパを制しました!来年、ウクライナがユーロビジョンを開催します!3度目の優勝です。最後ではないと信じています。ウクライナのマリウポリでユーロビジョンを開催する日が訪れるよう、我々は最善を尽くします。自由と平和、そして再建!カルッシュ・オーケストラ、ありがとう。そして我々に投票してくれた全ての人にありがとう!我々が敵との戦いに勝利する日も遠くないと私は確信しています。ウクライナに栄光あれ(Slava Ukraini)!」
イギリスのボリス・ジョンソン(Boris Johnson)首相は自身のSNSで次のように祝福している。「ユーロビジョン・ソング・コンテスト2022のウクライナ優勝、おめでとうございます。才能だけでなく、自由のために戦うあなたの国への揺るぎない支援がまさに反映されたものです。サム・ライダーを非常に誇らしく思います、今夜イギリスを代表した彼のパフォーマンスを実に見事なもので心から誇らしく思います」。
決勝&リザルト
順位 | 国 | アーティスト | 曲 | 総合得点 |
---|---|---|---|---|
優勝 | 🇺🇦 ウクライナ | Kalush Orchestra カルッシュ・オーケストラ | Stefania | 631 |
2位 | 🇬🇧 イギリス | Sam Ryder サム・ライダー | SPACE MAN | 466 |
3位 | 🇪🇸 スペイン | Chanel シャネル | SloMo | 459 |
4位 | 🇸🇪 スウェーデン | Cornelia Jakobs コルネリア・ヤコブス | Hold Me Closer | 438 |
5位 | 🇷🇸 セルビア | Konstrakta | In Corpore Sano | 312 |
6位 | 🇮🇹 イタリア | Mahmood & BLANCO マムード & ブランコ | Brividi | 268 |
7位 | 🇲🇩 モルドバ | Zdob și Zdub & Advahov Brothers | Trenulețul | 253 |
8位 | 🇬🇷 ギリシャ | Amanda Georgiadi Tenfjord | Die Together | 215 |
9位 | 🇵🇹 ポルトガル | MARO | Saudade, Saudade | 207 |
10位 | 🇳🇴 ノルウェー | Subwoolfer | Give That Wolf A Banana | 182 |
11位 | 🇳🇱 オランダ | S10 | De Diepte | 171 |
12位 | 🇵🇱 ポーランド | Ochman | River | 151 |
13位 | 🇪🇪 エストニア | Stefan | Hope | 141 |
14位 | 🇱🇹 リトアニア | Monika Liu モニカ・リュー | Sentimentai | 128 |
15位 | 🇦🇺 オーストラリア | Sheldon Riley | Not The Same | 126 |
16位 | 🇦🇿 アゼルバイジャン | Nadir Rustamli | Fade To Black | 106 |
17位 | 🇨🇭スイス | Marius Bear マリウス・ベアー | Boys Do Cry | 78 |
18位 | 🇷🇴 ルーマニア | WRS | Llámame | 65 |
19位 | 🇧🇪 ベルギー | Jérémie Makiese | Miss You | 64 |
20位 | 🇦🇲 アルメニア | Rosa Linn ローザ・リン | Snap | 61 |
21位 | 🇫🇮 フィンランド | The Rasmus | Jezebel | 38 |
22位 | 🇨🇿 チェコ | We Are Domi | Lights Off | 38 |
23位 | 🇮🇸 アイスランド | Systur | Með Hækkandi Sól | 20 |
24位 | 🇫🇷 フランス | Alvan & Ahez | Fulenn | 17 |
25位 | 🇩🇪 ドイツ | Malik Harris | Rockstars | 6 |
Congratulations to Ukraine for winning the @Eurovision Song Contest 2022.
— Boris Johnson (@BorisJohnson) May 14, 2022
It is a clear reflection of not just your talent, but of the unwavering support for your fight for freedom.
Incredibly proud of @SamRyderMusic and how he brilliantly represented the UK tonight.