心に響くキャリー・アンダーウッドのシングル曲「Temporary Home」が全米で第1位に


150 150 VOICE Editor

米キャリー・アンダーウッド公式サイト

米・人気オーディション番組『アメリカン・アイドル』のシーズン4優勝者でテイラー・スウィフトと並び現在若手カントリー界を代表・牽引する米カントリー・シンガー・ソングライター、キャリー・アンダーウッド(Carrie Underwood)の最新3rdアルバム『Play On』からの2ndシングル曲『Temporary Home』(テンポラリー・ホーム、2009.12)が、今週発表の米ビルボード「カントリー・ソング」部門第1位を記録しました。

この曲は、キャリー・アンダーウッドの類稀な力強く壮大な歌声をいかしたアップビートでスケール感ある楽曲が多く収録されていた前2作アルバムとは対照的に、全編にわたり抒情的で静謐かつ繊細な楽曲が多く収録された本3rdアルバムを代表する楽曲となっていますが、リリースから約3ヶ月、昨年12月の初登場第48位から徐々に順位を上げ、今週発表の4月10日付米ビルボード「カントリー・ソング」部門(Country Songs)で、ついに強豪のテイラー・スウィフト(Taylor Swift)、レディ・アンテベラム(Lady Antebellum)らの楽曲を抜き、第1位に(※チャートはコチラ)。シングル曲としては2ndアルバム『Carnival Ride』に収録の『Last Name』、『Just a Dream』、そして3rdアルバム収録の『Cowboy Casanova』等に続き、通算12枚目の第1位記録シングル曲となり、この記録は『アメリカン・アイドル』優勝者としては史上初めての記録となったようです。

以下、そのPV動画日本語訳歌詞制作の裏側の秘話をはじめ、キャリー・アンダーウッドのインタビューを踏まえこの楽曲を通じてキャリー・アンダーウッドが訴えるものをフィーチャーしたものです。

シングル曲『Temporary Home』の歌詞・内容
About the “Temporary Home”
“Temporary Home”
written by Carrie Underwood,Luke Laird and Zac Maloy

(バース1)
6歳の小さな男の子
一人でいるのに慣れるのには幼すぎる
また新しい母親と父親、新しい学校
そして決して家になることはない新しい家
みんなが彼にこの場所が気に入ってくれたかどうか尋ねると
彼は見上げて小さな笑顔を浮かべながらこう言う

(コーラス)
「ここは僕の一時的な家だから
ずっといれる場所ではないよ
窓や部屋、それは僕が通り過ぎるところ
ここは僕が向かっている道の途中に過ぎないよ
僕は怖くなんかないよ
だってここが一時的な場所だってわかっているから」

(バース2)
頼る当てのない若い母親
どこへ行く場所もなく僅かな助けを必要としている
仕事を探し、どうにかして切り抜ける方法を探している
なぜならその中間施設は決して家になることはないのだから
ある夜彼女はその小さな女の子の赤ちゃんにささやきかける
この世でいつかちゃんとした場所を見つけるからね

(コーラス)
「ここは私たちの一時的なおうちだからね
ずっとここにとどまる訳ではないのよ
窓や部屋、それは私たちが通り過ぎるところ
ここは私たちが向かって道の途中
私は恐れてはいないわ
だってここが一時的な場所だってわかっているから」

(バース3)
老いた男の人が病院のベッドで寝ている
その部屋は彼が愛する人で溢れている
そして彼はこうささやく、私のために泣かないでおくれ
いつかきっと会える日が来るからと
そして彼は見上げてこう言う、神様の顔が見えると

(セリフ)
Carrie:「Hey」
Old Man:「Hi baby」
Carrie:「私を待っていてくれてありがとう」
Old Man:「おまえにさよなら言わないで去ることはできないよ」
Carrie:「ありがとう」
Old man:「寂しくなるな」
Carrie:「私も寂しくなるわ」
Old man:「お母さんはここにいるのかい?」
Carrie:「みんな外にいるわ」
Old man:「愛しているよ」
Carrie:「私も愛している」

(コーラス)
「ここは一時的な居場所に過ぎなくて
ずっととどまる場所ではない
窓や部屋、それは私が通り過ぎるところ
ここは私が向かって道の途中に過ぎないから
私は恐れてはいないよ
だってここが一時的な場所だってわかっているから」

ここは一時的な居場所に過ぎないから

※原文はコチラの米キャリー・アンダーウッド公式ページでご覧になります。

1. 曲の概要と構成

この曲「Temporary Home」は、それぞれ異なった境遇・事情、異なった人生・年齢、異なった場所で、異なった苦難・苦境に直面しながらも、同じように出口の見えない辛い状況に直面している人々に焦点を当て、「temporary home」と自分に言い聞かせることで、その悲しみ、絶望に打ちひしがれることなく、力強く希望を抱き、それを乗り越えようとしている3人の姿を描いた楽曲。

里親家庭を転々とする両親のいない6歳の幼い男の子、行く当てもなく仕事を探しながら中間施設で赤ちゃんの娘を育てる若い母親、病院のベッドで家族に囲まれながらその命を終えようとしている老人。これら全く異なる3つの物語は、以下のコーラスで1つに繋がることになります。

“This is my temporary home
ここは一時的な家に過ぎなくて
It’s not where I belong
ずっととどまる場所ではない
Windows and rooms that I’m passin’ through
窓や部屋、それは私が通り過ぎるところ
This is just a stop, on the way to where I’m going
ここは私が向かって道の途中に過ぎない
I’m not afraid because I know this is my
私は恐れてはいないよ
Temporary Home.”
だってここが一時的な場所だってわかっているから

いずれの物語もこのコーラスにある「temporary home」を介することで、どんなに辛い状況であってもそこに希望を見出すことで乗り越えようとする力強い姿が描写されることになりますが、この曲の題名ともなっているその「temporary home」の意味がこの曲のキーワードにもなっているようです。

2. 「temporary home」の意味

ご存知のように「temporary」とは、一時の、仮の、を意味する形容詞で、「home」は、家、家庭、故郷を意味する名詞ですので、一般的に翻訳すると「仮の家」、「一時的な家」といった意味になります。しかしながら、「home」の意味については、同じく家を意味する「house」とは異なり、物理的具体的な意味合いにとどまらず、家庭的な温もりがある場所、心の拠り所、居場所等むしろ精神的・抽象的な意味合いが強くあるようです。

そしてその「home」の抽象的・精神的な意味合いから、この「temporary home」の意味は、3つの物語が進むに連れて、その意味合いを異にし、また時間枠を超えて多様に変化することで、この曲により一層の深い意味を与えているようです。

3. 3つの物語と「temporary home」の意味

まず、6歳の幼い男の子の話では、”Another new mom and dad,another school”(また新しい母親と父親、新しい学校)、”Another house that’ll never be home”(そして決して家になることはない新しい家)、”When people ask him how he likes this place, He looks up and says with a smile upon his face”(みんなが彼にこの場所が気に入ってくれたかどうか尋ねると彼は見上げて小さな笑顔を浮かべながらこう言う)とあることから、”This is my temporary home”での「temporary home」は、一般的な意味である「一時的な家」に比較的近い意味を第一にリスナーに想起させることになります。

しかし、2つ目の赤ちゃんを連れる若いシングルマザーの話になると、”She needs a little help got nowhere to go”(どこへ行く場所もなく僅かな助けを必要としている)、”She’s lookin’ for a job, lookin’ for a way out”(仕事を探し、どうにかしてその出口を探している)とあり、小さな赤ちゃんの娘に”Someday we’ll find a place here in this world”(この世でいつかちゃんとした場所を見つけるからね)と囁きかけていることからも、「temporary home」は、現在住む中間施設を意味すると共に、小さな赤ん坊の娘を一人で育てながら仕事や住む家のないこの出口の見えない辛い状況そのもの、居場所のない現在の居場所、といった抽象的精神的意味合いを含んだ意味であることにリスナーを導き、それは最初の男の子の話に遡りながらも、「temporary home」の本当の意味にリスナーが追体験することになります。

そして、病院のベッドで別れのときが近づいている老人の話になると、”Don’t cry for me. I’ll see you all someday.”(私のために泣かないで。いつかきっと会える日が来るから)、”I can see God’s face”(神様の顔が見える)と病院のベッドで囁く言葉から、それに続く「temporary home」は、単に物理的な意味の家や辛い状況・時期の意味にとどまらず、さらにその意味を拡大し、人生そのものを意味していることにリスナーは気づくことになります。

こうしたことから、コーラス部分の”This is just a stop, on the way to where I’m going”は、「人生はこれから向かおうとしている道の途中に過ぎない」ことを意味していることになり、キャリー・アンダーウッドはこの曲では、どんなに辛いことがあっても、またそれがどんなに長く続いても、そしてまたそれが人生の最期であっても、必ず希望があることを3つの物語を通じて伝えようとしていることになります。

“Temporary Home”の舞台裏・制作秘話とキャリー・アンダーウッドのメッセージ
Carrie Underwood’s “Temporary Home”

米キャリー・アンダーウッド公式サイト

1. ソングライターとしてのキャリー・アンダーウッド

キャリー・アンダーウッドの楽曲というと、その力強く壮大な歌唱力をいかしたアップビートでスケール感ある楽曲が代表的といえますが、本3rdアルバム『Play On』はこの曲「Temporary Home」をはじめ、前2作アルバムとは対照的に、全編にわたり抒情的で静謐かつ繊細な楽曲が多く収録されています。その一つの理由として、キャリー・アンダーウッド自身が意欲的に作詞作曲に加わった点にあるようです。収録曲の半分以上(7曲)を本人が手がけた本アルバムでは、前2作以上に自分自身の内面が深く表現されたよりプライベートな内容になっているとキャリー・アンダーウッドは話しています(コチラ)。

そしてこの曲「Temporary Home」も例外ではないようです。

2. 本『人生を導く5つの目的―自分らしく生きるための40章』にインスパイアされた「Temporary Home」

Grammy Awards 2010 - RED CARPET

この曲「Temporary Home」は、キャリー・アンダーウッドが現在婚約者のホッケー選手マイク・フィッシャー(Mike Fisher)と牧師でクリスチャン作家リック・ウォレン(Rick Warren)氏の記録的なベストセラー『人生を導く5つの目的―自分らしく生きるための40章』(”The Purpose Driven Life”、※翻訳版Amzon.co.jpで詳細)を読んだ歳に、婚約者からこの本で感じ取ったことを曲にしてみてはとの提案から、この本からインスパイアされたことをキャリー・アンダーウッドがルーク・レアド(Luke Laird)、ザック・マロイ(Zac Maloy)らソングライターと共に共同作詞作曲した曲。この事実は昨年9月12日放送された米MTVの番組「CMT Invitation Only」内でのインタビューによるもの(但し当時は現在婚約者のことを「親しい友人」と表現しています)。当初はその内容、アイデアを歌にすることが難しかったそうですが、数日後ある朝シャワーや髪をスタイルしている時突然それらの3つの物語が頭に浮かんだとのことです。

【記事】The Purpose Driven Life: the book behind Carrie Underwood’s ‘Temporary Home’
【記事】Carrie Underwood Has Fiancé to Thank for ‘Temporary Home’

長年キャリー・アンダーウッドの楽曲を作詞作曲しているソングライターのルーク・レアドは、普段共同で作詞作曲する際は、手探りで一つ一つピースを埋めながら曲を制作するそうですが、この曲に関しては、キャリー・アンダーウッド自身が既にこの曲の全体像となる3つのストーリー等を用意しており、この曲について非常に思いを込めているのが伝わってきたとインタビューで述べています(コチラです)。

3. キャリー・アンダーウッドが「Temporary Home」で伝えたかったこと

この曲「Temporary Home」は人生の過酷な側面を描写したもので、曲を聴きながらPVを見ると思わず目頭が熱くなってしまう内容になっていますが、キャリー・アンダーウッドは次のようにインタビューで述べています。

「この曲は私にとって決して悲しい曲ではなくて、希望に溢れた歌なの。それぞれの物語の中でそれぞれの状況の中で、それぞれの人が、きっとうまくいくっていうことを知っているの。今とんでもない状況にある彼らだけど、それは一時的なことで、ここで、今、そしていつか、きっと全ての物事がうまくいくって知っているの。」

「temporary home」というシンプルな言葉ながら、それを人生の試練の中にある”希望”を表現している点に、キャリー・アンダーウッドのソングライターとしての深い潜在能力を感ぜずにはいられません。また、このインタビューの中で3つ目の物語の老人について天国のことを”forever home”と表現しているのも印象的です。

最後に
Review

リック・ウォレン(Rick Warren)の『人生を導く5つの目的―自分らしく生きるための40章』(The Purpose Driven Life)にインスパイアされ、3つの別々の物語が”Temporary Home”という言葉で一つの繋がるこのシングル曲『Temporary Home』は、キャリー・アンダーウッドの死生観ともいえる人生観が巧みに表現されていると共に、どんなに辛いことがあっても、またそれがどんなに長く続いても、そしてまたそれが人生の最期であっても、必ず希望があること伝えようとしている深くそして温かいメッセージが込められた曲といえるのではないでしょうか。

今までの力強い歌唱力重視のスタイルと異なり、深遠なテーマに繊細で情感溢れる表現力で新たな境地を切り開いたといえる「Temporary Home」。また新しいキャリー・アンダーウッドの魅力がぎっしり詰まった曲といえそうです。

【キャリー・アンダーウッド米公式サイト】http://www.carrieunderwoodofficial.com/
【キャリー・アンダーウッドMySpace】http://www.myspace.com/carrieunderwood

関連記事

新着記事

洋楽最新情報をフォロー