賞金100万ドル(約1億900万円)とラスベガスのヘッドライン・ショー、そして2021年才能の頂をかけた戦い。NBC才能オーディション番組『アメリカズ・ゴット・タレント』(原題:America’s Got Talent)シーズン16の決勝(Final)が日本時間9月15日に開催され、ファイナリスト全10組が最後の戦いに挑んだ。アメリカの投票を経て今日その結果が発表された。
最後にステージに残されたのは、手に汗握るダイナミックな空中曲芸で全米を魅了してきた米バージニア州・16歳の若き空中曲芸師エイデン・ブライアント、そして自身の家族の物語と観客を交えたマジックを融合させた米バージニア州・35歳マジシャンのダスティン・タヴェッラ。決勝でメッセージ性・ストーリー性のあるマジックでアメリカのハートを揺さぶったダスティン・タヴェッラ(Dustin Tavella)が、AGT史上稀に見る接戦を制し優勝を果たした。
ダスティン・タヴェッラは優勝スピーチで「皆ありがとう。本当にありがとう。本当に素晴らしいよ。優勝できるなんて思ってもみなかった。本当にクレイジーだよ。投票してくれた皆にありがとう、家族、妻、息子たち、両親、全ての人にありがとう!」マジシャンの優勝はシーズン13(2018年)覇者のシン・リム(Shin Lim)以来で、シーズン9覇者マット・フランコ(Mat Franco)、シン・リムに続いてマジシャンとして3人目の優勝。ゴールデンブザーなしでの優勝もシン・リム以来となった。
養子の息子たち、妻、家族をテーマにした語りとマジックで勝ち上がってきたダスティン・タヴェッラは決勝で自身の両親の関係を軸に、「ストーリーテラーのマジシャン」と呼ばれるエモーショナルなマジック・ショーを披露した。
「明日、俺の両親は結婚37周年を迎えるので、ちょっとした愛を示したかった」とダスティン。「両親の結婚記念日を祝うのが大好きなんだ。俺が若い頃、両親の結婚生活は崩壊してたからね。俺たち家族はメチャクチャだった。初めて俺が経験したマジックは、カード・トリックでもなくコイン・トリックでもなく、ある人物だった。俺のためだけにその人は、俺の両親の人生に歩み寄り、彼らを冷静にし、よりを戻す手助けをし、そして家族を元通りにする力になってくれた」。バラバラに破いた古い写真に一吹きかけ、両親の結婚写真をもとに戻す。
「たった一度の人生にインパクトを与えることを、観客の皆に書いてもらった」、「今夜は『アメリカズ・ゴット・タレント』ファイナルの夜。俺は今夜ここで、もっとマジックで皆をあっと言わせたい。俺が心から願うのは、皆に気づいてもらうことだ。君たち一人一人がマジックだということだ」。「皆、紙を丸めて頭の上に掲げてくれ。3つ数えるから審査員のいるテーブルに投げてほしい。審査員たち、行くぞ、ワン、ツー、スリー、投げて(笑)」
「今夜この劇場には2,000人以上いる。つまり全員が書いたことをそれぞれ実行すれば、2,000もの人生が変わるかもしれない。家でTVで観てくれている皆も同じだ。100万人以上の人生が変わるかもしれない」。「ホーウィー、ハイディ、ソフィア、サイモン、どれでもいいから一つだけ紙を拾ってくれ。誰のでもいい。目の前のものでなくてもいい」。審査員ホーウィー・マンデル(Howie Mandel)、ハイディ・クルム(Heidi Klum)、ソフィア・ベルガラ(Sofia Vergara)、サイモン・コーウェル(Simon Cowell)がそれぞれ一つずつ紙を選ぶ。「テリー、ここに来て参加してくれ」、司会テリー・クルーズ(Terry Crews)がどの審査員の紙にするか決めるよう求められ、「サイモン」とテリー。
サイモンの紙を開くと、書かれていた文字は”僕のかっこいい服を、必要としている子にあげる”。「素晴らしいことだ」とダスティン、「さっき渡した針で風船を割ってくれないか」。両親の結婚記念日を祝う風船をテリーが割ると中から出てきたのは一枚の紙。「紙が出てきただろ?その紙はずっと風船の中にあったよね」、「何千の紙の中から選んだ紙はこれだった」とサイモンの紙を見せる。「テリー、紙を開いて皆に見せてくれないか?」、「こう書いてあるね」。
“服を必要としている子にあげる”。「ところで誰がこれを書いたのかな。立ち上がってくれないか」、「君だったか」とダスティン、「これは素晴らしいことだ。変化を起こすのに若すぎることなんてない。思いやりの心をずっと持ち続けてくれ。それは君が思ってもみないものになっていく。彼に拍手を!」
「もう一つ、君が最初に書いた言葉が好きだ、”Give”という言葉。”与える”ことは、変化の源だからだ」。「俺の両親の人生に入ってきてくれた人、彼らの未来の道に変化を与えようとしてね。それは俺の人生の道をも変えてくれた。そしてそのインパクトは、俺の二人の息子たちにも及んでいる。その人のおかげで俺は今こうしてステージに立ち、自分の愛することをしている。それはまるでこの小さな紙片が飛び続けるように。一見すると、とても小さなこと。それが予期せぬ以上に、ずっとずっと大きくなっていく」。
一片の紙を両手で握りしめ擦り合わせると、無数の紙片が次から次に手から舞い上がり、劇場は埋め尽くす紙吹雪と歓声のなかフィナーレを迎える。
「それが”与えること”の力なんだ」、「皆、紙片を手にとってカメラに見せてくれ。これが皆に伝えたいことだ」。その紙には”GIVE”という文字。「小さな思いやりが遥か遠くまで繋がっていく。審査員、視聴者の皆さん、アメリカ、全てに心から感謝しています。愛しているよ!神のご加護がありますように!ダスティン・タヴェッラでした。皆ありがとう!本当にありがとう!」
準優勝者は、炎の舞台でスリリングな空中曲芸で沸かせたエイデン・ブライアント(Aidan Bryant)。脳性麻痺のコメディアンでファンから絶大な支持を集めた米コロラド州在住・42歳ジョシュ・ブルー(Josh Blue)が第3位。ビショップ・ブリッグス(Bishop Briggs)の「White Flag」(2018)をパワフルに歌った米フロリダ州マイアミ在住・30歳歌手ブルック・シンプソン(Brooke Simpson)が第4位。神業の早着替えマジックで審査員ハイディ・クルム(Heidi Klum)からゴールデンブザーを獲得したフランスの25歳レア・カイル(Léa Kyle)が第5位となり、ゴールデンブザー組としては唯一トップ5入りとなった。
結果 | ファイナリスト | 登場順 |
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優勝 | ★ダスティン・タヴェッラ Dustin Tavella 〈マジシャン〉米バージニア州 | 8番目 |
準優勝 | エイデン・ブライアント Aidan Bryant 〈空中曲芸師〉米バージニア州・16歳 | 6番目 |
第3位 | ジョシュ・ブルー Josh Blue 〈コメディアン〉米コロラド州在住・42歳 | 9番目 |
第4位 | ブルック・シンプソン Brooke Simpson 〈歌手〉米フロリダ州マイアミ在住・30歳 | 7番目 |
第5位 | レア・カイル Léa Kyle 〈早着替えアーティスト〉フランス・25歳 | 2番目 |
Top 10 | ジミー・ハーロッド Jimmie Herrod 〈歌手〉米オレゴン州ポートランド・30歳 | 1番目 |
Top 10 | ヴィクトリー・ブリンカー Victory Brinker 〈歌手〉米ペンシルベニア州・9歳 | 3番目 |
Top 10 | ジーナ・ブリヨン Gina Brillon 〈コメディアン〉米ニューヨーク州・41歳 | 4番目 |
Top 10 | ワールドテコンドー ・デモンストレーション・チーム World Taekwondo Demonstration Team 〈テコンドー〉韓国他 | 5番目 |
Top 10 | ノースウェル・ヘルス・ナース・クワイア Northwell Health Nurse Choir 〈合唱団〉米ニューヨーク州 | 10番目 |
Performance
結果発表前には、スペシャル・ゲストが続々登場しファイナリストとコラボ。新型コロナウイルスの影響により昨年3月に劇場が閉鎖されていたNYのブロードウェイ・ミュージカルが約1年半ぶりに昨日(2021年9月15日)再開されるなか、ブロードウェイ・スターで女優/歌手イディナ・メンゼル(Idina Menzel)がリザルト回をキックオフ。歌手ジミー・ハーロッド(Jimmie Herrod)、ニューヨークの合唱団ノースウェル・ヘルス・ナース・クワイア(Northwell Health Nurse Choir)とともにイディナ・メンゼルは『ウィケッド』(原題:Wicked)より第1幕ナンバー(邦題:自由を求めて)で自身のシングル「Defying Gravity」(2007)を披露した。
続いてオリンピック2020メダリストの体操選手ジョーダン・チャイルズ(Jordan Chiles)とミカイラ・スキナー(MyKayla Skinner)がスペシャル・ゲストとして招かれ、ワールドテコンドー(World Taekwondo)のデモンストレーション・チームとともに華麗な演技で魅せた。
「White Flag」のカバーで決勝に挑んだブルック・シンプソン(Brooke Simpson)は、そのビショップ・ブリッグス(Bishop Briggs)をスペシャル・ゲストに迎え、パワフルなコラボで「White Flag」を熱唱した。ジーナ・ブリヨン(Gina Brillon)は自身がコメディアンになるきっかけになったというメキシコ系米コメディアンのジョージ・ロペス(George Lopez)を迎え共演。再び登場したイディナ・メンゼルは、カミラ・カベロ(Camila Cabello)主演のAmazonオリジナル映画『シンデレラ』より自身の新曲「Dream Girl」を披露した。
そしてTVドラマ『モダン・ファミリー』の子役リコ・ロドリゲス(Rico Rodriguez)をマジックのアシスタントに、AGT2014(シーズン9)優勝者のマジシャン、マット・フランコ(Mat Franco)とダスティン・タヴェッラ(Dustin Tavella)が、コラボでマジックを披露。ホーウィー・マンデルが心に抱いた”人生で大切な言葉”「Be Kind」を予測し、テディーベアを使って見事的中させた。
ゲスト・パフォーマンスの最後にペンタトニックス(Pentatonix)が登場。ヴィクトリー・ブリンカー(Victory Brinker)とコラボでアンドレア・ボチェッリ(Andrea Bocelli)とセリーヌ・ディオン(Céline Dion)の「The Prayer」(’99)を披露し、シーズン16最後の夜にスピリチュアルな祈りを響かせた。