AGT2021 ジミー・ハーロッド、『アニー』の「Tomorrow」熱唱しゴールデンブザー


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今年も数々のドラマが生まれているNBC才能オーディション番組『アメリカズ・ゴット・タレント』(原題:America’s Got Talent)シーズン16。その第4週が今日放送され、米オレゴン州ポートランドの30歳シンガー、ジミー・ハーロッド(Jimmie Herrod)が逆境を跳ね返しゴールデンブザーを獲得した。

ステージに登場し「ちょっと緊張しています」とジミー。製作総指揮/審査員サイモン・コーウェル(Simon Cowell)は「大丈夫だ。君が生きている証拠だよ」。現在の仕事を聞かれ、「今は子どもたちにオンラインで音楽を教えています」。「シンガーってことだね?」とサイモン、ジミーは「そうであることを願ってます(笑)」。出場理由を尋ねられ、彼は「これ以上にないタイミングだと思いました。チャンスがやって来たら飛び込むものです。皆さんに披露できることをとても嬉しく思っています」。

パフォーマンス直前に「もしよかったら歌う曲を教えてくれるかな?」とサイモン、「アニーの”Tomorrow”を歌います」。「ホンキか?」とサイモン、「私が世界で最悪の歌だと思っている歌だ」。審査員ハイディ・クルム(Heidi Klum)は「冗談でしょ?」会場からブーイングが起きるなか、サイモンは「それを歌うのか。別の曲にしてくれないか」。困惑のジミーは「別の曲を用意してきませんでした…」。サイモンは「そうか、じゃあ幸運を祈るとしか言えない」。

サイモンから”史上最悪の歌”の言われたジミー、緊張が走るなか呼吸を整え、トニー賞7部門受賞の傑作ブロードウェイ・ミュージカル『アニー』より、名曲「Tomorrow」(’77、邦題:トゥモロー)を披露。豊かな表現力と高域を輝かせ、”史上最悪の歌”を覆す。

エネルギーと希望に満ちた歌声に、サイモン・コーウェルの険しい表情は驚嘆と笑顔に変わり、溢れる歓声のなかスタンディング・オベーションを送った。「何てことだ、何てことだ」とサイモン、「最悪の歌じゃなくなったよ」。「信じられない、本当に信じられない」と脱帽する。

そして審査員ソフィア・ベルガラ(Sofia Vergara)は「そうね、私はそこまで気に入ったとは言えないわ」。ここにきてこの展開に再び言葉を失うサイモン。ブーイングの嵐のなか「いったい今日はどうなっているんだ!!」と叫ぶ司会のテリー・クルーズ(Terry Crews)。「でも」とソフィア、「最高に気に入ったわ!!」とゴールデンブザーを叩いた。

金色の紙吹雪のなか、感極まり涙のジミーにソフィア・ベルガラが駆け寄り「本当に素晴らしかったわ。鳥肌が立ったわ」、「押さざるを得なかった。まさにゴールデンブザーにふさわしいわ」と賛辞を贈った。

Jimmie Herrod

ワシントン州タコマに生まれ育ったジミー・ハーロッド(Jimmie Herrod、※”へロッド”ではなく”huh-ROD”と発音するという)は、音楽が溢れる家庭で育った。「家にはいつも音楽がありました。朝早い時も」、父親の演奏や歌声で目を覚まし「私は子供の頃いつも歌っていました」と地元紙The Olympianで語る。父親からの影響を受け自然と歌うようになったジミー。しかし子供の頃に通っていた教会ではピアノの演奏を頼まれ、ゲイの彼が歌うことは当時許されなかった。

「タコマで黒人のゲイとして大人になっていくは、必ずしも容易なことではありませんでした」、「あの時代、あの場所で分かち合うとができなかった私の姿がありました」、「私はヘッドホンをつけアルバムを聴き、ほぼ叫びながら歌っていたものでした。それが表現方法だったのです」。

歌うことが大好きだったが、人前では歌うのをためらい、合唱団の中に「隠れていた」というジミー。そんな彼の背中を押したのが母親だった。リハビリ施設や高齢者施設で歌うよう勧められ、それが彼の高校時代のバイトになった。「これだって思った瞬間でした」、「歌うのが本当に大好きなんだってわかったんです。続けていくべきだって」。

その後ワシントン州シアトルのコーニッシュ芸術大学(Cornish College of the Arts)の作曲・パフォーマンス学部で音楽学士号を取得し、ポートランド州立大学のジャズ研究で音楽学士号を取得。ソロリストやコラボレーターのヴォーカリストとして活動し、ワシントン州シアトルの劇場では多彩な表現力を活かした歌声をミュージカル・シーンで披露してきた。

2017年からはオレゴン州ポートランドのジャズアンサンブル、ピンク・マルティーニ(Pink Martini)のゲスト・ヴォーカリストとして活躍。新型コロナウイルスのパンデミック前は、ピンク・マルティーニのツアーに同行し、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなどを回った。

2018年12月にジミー・ハーロッドはソロ・アルバム『Falling in Love and Learning to Love Myself』Apple Music, Spotify, Amazon)をリリース。また2019年10月には、ピンク・マルティーニとのEP『Tomorrow』Apple Music, Spotify, Amazon)などをリリースしている。2019年12月にSFJAZZセンターで開催されたピンク・マルティーニのコンサートで、ジミー・ハーロッドは「Tomorrow」を披露している他、ピンク・マルティーニの2020年大晦日バーチャル・コンサートで「Tomorrow」をカバーした。それは、かつて自分を愛することに苦悩し葛藤していた彼にとって特別な歌だった。

そして迎えたAGTの大舞台。困難と希望を歌う彼の「Tomorrow」は、審査員・観客のハートを揺さぶった。

「陽は昇る、明日/全てを賭けたっていい、明日/きっと陽は昇る」、「思い浮かべて/明日が、悩みや悲しみも消し去ることを/完全になくなるまで」

(プリ・コーラス)「前に進めない時/憂鬱で孤独な日/私は胸を張って/笑顔でこう言う」(コーラス)「陽は昇る、明日/だから諦めちゃいけない、明日がある/何があっても/トゥモロー!トゥモロー!愛しているよ、トゥモロー/必ず明日がある、一日の先に」

(プリ・コーラス)「前に進めない時/憂鬱で孤独な日/私は胸を張って/笑顔でこう言う」(コーラス)「陽は昇る、明日/だから諦めちゃいけない、明日がある/どんなことがあっても/トゥモロー!トゥモロー!愛しているよ、トゥモロー/必ず明日がある、一日の先に」

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