アメリカ・ユタ州北部、美しい山々と湖に囲まれた人口3万人ほどの自然豊かなケイズビル。ゆったりとした時間が流れるこの地に住む15歳少女サバナ・ショー(Savanna Shaw)とその父親39歳マット(Mat Shaw)の素朴なデュエット動画が今、国を越えて人々を感動で包んでいる。二人がキッチンのテーブルで並んで座り歌う動画は、先月SNSに投稿されて以降、地元の報道番組で紹介されるなど現在FacebookとYouTubeで計1,000万回近く再生。
「世界で様々なことが起きているなか、時には立ち止まり、”穏やかな人生”への父と娘のシンプルな祈りを、思い出すに越したことはありません」(Facebook)。その父親のコメントが添えられた動画では、アンドレア・ボチェッリ(Andrea Bocelli)とセリーヌ・ディオン(Céline Dion)の「The Prayer」(’99)を父娘でデュエット。クラシカル・クロスオーバー・スタイルの詩情豊かな美しい歌声の力強い祈りと親子の何気ないそぶりが、何百万もの人々の心をつかんでいる。
今までSNSを利用したことがなく、普段は物静かな性格だというサバナ。今回新型コロナウイルスによる影響を受けて、初めてInstagramやYouTubeのアカウントを作り、その動画を投稿したという。サバナのデービス郡では現在少なくとも5月1日までの外出規制命令が出されている。サバナは「友だちと繋がりたいと思い、ソーシャル・メディアに参加しました。みんなどうしているかなって思って、パパと歌う動画を投稿しようと思いました」。天使の歌声と反響を呼んでいる彼女は、ユタ州のヘイルセンター劇場(Hale Centre Theatre)の少年少女合唱団のメンバー。新型コロナウイルスの影響で現在その練習は中止となり、合唱団の友だちと繋がりたいと思ったのが、今回の動画のきっかけだったという。彼女が住む街の人口の数百倍もの人々から反響があったことを受けて、「こんなに多くの人々の人生に触れるなんて思ってもみなかったです。でもたくさんの人々に話しかけることができて、本当に素晴らしい気持ちです」と彼女は語る。
少々強面の父親も美声。そんな父親にサバナは「小さい頃からずっと尊敬し、彼の歌声と彼の歌の力に憧れてきました」、「一緒に歌えてとても嬉しい」(FOX)。一方の父親も、小さい頃から歌が大好きだったというサバナの才能を輝かせたいと、応援を続けてきたという。音楽を通じて心を交わす親子の姿にも、多くの共感を呼んでいる。
レコーディングは、”私たちの隔離レコーディング・スタジオ”。家のクローゼットの中で、マイクをiPadにつないで録音、子どもたちが宿題をするキッチンのテーブルで撮影したという。「二人ともレコーディング・スタジオに入ったことがなく、何が普通かはわからないんだけど」(The Daily Signal)とマット。試行錯誤しながら、共に学びながら歌い、親子の絆を深めているという。子どもたちはあっという間に大人になり、巣立っていく。マットは「このコロナウイルスの状況の中で、私たちにとって一条の光があるとすれば、それは私たちが一緒に過ごす時間がたくさんできたことです」。
息の合った美しいハーモニーで魅せる二人は「The Prayer」に続いて、映画『グレイテスト・ショーマン』(原題:The Greatest Showman)劇中歌「A Million Dreams」(2017)、シンディ・ローパー(Cyndi Lauper)の「True Colors」(’86)、ディズニー映画『くるみ割り人形と秘密の王国』(原題:The Nutcracker and the Four Realms)のエンドクレジット・ソングとなったアンドレア・ボチェッリの「Fall On Me」(2018、記事)、ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』(原題:Tangled)劇中歌「I See the Light」(2010)、ディズニー映画『アラジン』(原題:Aladdin)劇中歌「A Whole New World」(’92、記事)、ディズニー映画『美女と野獣』劇中歌「Beauty and the Beast」(’91)などをデュエット。「特にこのような試練の時、このような未曾有の時、音楽は希望を築く力を持っています」とマット。二人は音楽とその歌詞を通じて、希望のメッセージを届けたいという。
マットは、「ウイルスよりも伝染しやすい唯一のものは、希望です」、「ですので、少しでも希望を広げる小さな手助けができればと願っています」。サバナは「立ち寄ってくれた人に、ほんの少しでも希望を届けられたら嬉しい。少しでも喜んでもらえたら嬉しいです。今は悲しみと不安に溢れています。でも喜びの手助けができたらと願っています。今の時こそ、私たちにはそうしたものがたくさん必要だと感じるからです」。しかし元気をもらったのは、自分たちだったという。
サバナは「こうした苦難のなか、たくさんの人々の心に触れていることを知り、とても感謝しています」、「多くの皆さんが、それぞれのストーリーを私と分かち合ってくれてとても光栄で、励まされています。自分が愛することをでき、こうした機会をくださったことに、皆さん一人一人に、心より感謝の気持ちを伝えたいです。皆さんは私に教えてくれました、それぞれの国籍や信じるものの間に距離がないということ。そして私たちはハートで繋がっているということを。皆さんを愛しています」。