ルアンヌ「maman」ユーロビジョン最優秀楽曲賞&最優秀芸術パフォーマンス賞受賞、TV出演し大会振り返る


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「頑張れ、ルアンヌ!」1977年大会以来48年ぶりの歴史的な優勝に向けて、前例のない国民的熱狂のなかフランス全土が一つになり応援した世界最大の国別対抗戦・歌コンペティション番組『第69回ユーロビジョン・ソング・コンテスト』(69th Eurovision Song Contest)のグランド・ファイナル。全世界推定1億6000万人以上が視聴するなかスイスの古都バーゼルにあるセイント・ジャコブホール(St. Jakobshalle)で現地時間2025年5月17日、🇫🇷フランス代表ルアンヌ(Louane)は亡き母に捧ぐバラード「maman」を天高く響き渡るエモーショナルな歌声で熱唱し、娘として、母として、命を超えた愛と絆の永続的な力を歌い上げた。

この歌はルアンヌが当時17歳の2014年にがん闘病の末に亡くなった母親に宛てたバラード。彼女の父親はその1年前の2013年に亡くなり、10代で両親を失った。愛、喪失、継承をテーマにしたドラマチックなクレッシェンドの「maman」は、時の経過を通して、胸が張り裂ける深い悲しみと癒やし、成長と自己発見、母親への敬意と感謝、永遠の愛と新しい命、世代を超えて繋ぐ母と子の愛と絆へと、美しいメロディーで娘から母へと成長していく道のりを歌う。

シンプルな黒のドレスに身を包み現れた彼女は、鏡面のステージで小さな砂時計を手に幕を明けた。子供の頃の砂遊びを彷彿とさせるシーンでは、砂場を象徴するコルクの上を裸足で歌い、そして砂時計の粒を象徴するコルク片の竜巻の中心で、時間を止めたいと何度も願ったあの頃から、容赦なく過ぎていく時の経過にルアンヌは歌う。

「寂しさは果てしなく/聞きたいことは尽きない/元気にしてる?/すべて見てくれてる?/いろいろあったんだ/すっかり大人になった/すべてをあなたから受け継いで/今の私がある」と天を仰ぐ。

歌の中心テーマである時間の経過を表現した砂の粒を手で受け止めながら、2020年3月に第1子の娘エスミー(Esmée)を迎え母親になった28歳は自身の母親に語り続け「元気にやってるよ、未来が見える/もう思い出をたどらない/前に進むときだよね/今は私が娘にママンって呼ばれてる」

© Sarah Louise Bennett / EBU
© Alma Bengtsson / EBU ── 砂をコルク片で表現。コルク片が目に入ったり口に入ったり大変だったという。リハーサルの歌唱中、このコルク片が口の中に入ったルアンヌはパニックになり窒息しそうになり、何とか咳をして取り出したアクシデントもあったという。

楽曲、ルアンヌのパフォーマンス、流動的な舞台全体が一体となりメッセージを伝えるように設計されている。砂を表現したこのコルク片は計250キロ必要だったといい、ルアンヌの頭上数メートルに吊り下げられた大型の装置から流れ出ている。このコルク片は曲全体を通して時の経過とともに変化を遂げる。前大会で優勝した🇨🇭スイス代表ニモ(Nemo)の「The Code」の舞台美術を手がけたスウェーデン出身のアートディレクター、フレドリック・リドマン(Fredrik Rydman)がこの舞台美術を構想・デザインした。

「愛を見つけたわ/決して消えないもの/時が経っても不変の輝き/彼が手を握ってくれる時/どんな恐れも消えていく/それはどこか懐かしい/あなたが私の手を握ってくれた頃のよう」

小さい頃から母親と毎年欠かさずにユーロビジョンをTVで観て目を輝かせていたというルアンヌ。そのステージはやがて母親と二人の夢となり、果てしなく不可能な夢を母親は娘が必ず叶えるのだと信じ続けてくれたという。魔法の世界に迷い込む幻想的なパフォーマンスは、黄金色の光に照らされ吹き出す砂のベールに包まれ、激しさを増す砂嵐の中、力強く感情を揺さぶる歌声でフィナーレへと向かっていく。

© Corinne Cumming / EBU

「元気にやってるよ、未来が見える/もう思い出をたどらない/前に進むときだって/今、私がママンって呼ばれてる/ママン、ママン、ママン/ママン、ママン/前に進むときだよね/今は私が呼ばれてる」「ママン」ルアンヌの娘、5歳のエスミーの優しい呼びかけで美しく感動的なパフォーマンスを終える。

涙をこらえ体を震わすルアンヌはパフォーマンス後、観客に「皆さん、ありがとう!ママン…」と最後の言葉は観客の拍手喝采ではっきりと聞こえなかったが、フランスの『ル・パリジャン』紙が報じたものによると「ママン、 誇りに思ってくれたら嬉しい」と天国の母親に伝えたという。

 

アワード授賞式

ユーロビジョン・ソング・コンテストのグランド・ファイナルでは、ユーロビジョン・ソング・コンテストの優秀な参加者を称え祝福するために、2002年より毎年その創始者にちなんで名付けられた「マルセル・ベゼンソン賞(Marcel Bezençon Awards)」が授与される。同賞は3部門からなり、認定報道機関による総合投票で最も優れた楽曲に授与されるメディア賞、参加した各放送局の解説評論家による総合投票で最も優れた芸術的パフォーマンスに授与される芸術賞、大会に参加した作曲家全員による総合投票で最も優れた作曲家チームに授与される作曲家賞がある。

© Corinne Cumming / EBU

決勝の結果を待つ間にマルセル・ベゼンソン賞の授賞式が開催され、発表順に、今大会の作曲家賞には🇨🇭スイス代表曲「Voyage」を作曲したゾーイ・メ(Zoë Më)とその作曲チームが作曲家賞を受賞。最優秀楽曲賞のメディア賞と最優秀芸術パフォーマンス賞の芸術賞をルアンヌの「maman」が受賞した。これらの賞は優勝者が受賞することが多いが、今大会はルアンヌがダブル受賞する異例の形となった。ルアンヌはメディア賞の受賞スピーチで「クレイジーだわ。体が震えています。涙が溢れ出しそう、本当にありがとうございます。とても幸せです」と語り、続けて発表された芸術賞受賞に感極まる姿を見せ、喜びとともに全ての関係者に感謝の言葉を述べた。

観る人の心を揺さぶる圧巻のパフォーマンスで魅せたルアンヌだったが、波乱のグランド・ファイナルは🇸🇪スウェーデンに次ぐ優勝最有力候補となっていた🇦🇹オーストリア代表カウンターテナー・オペラ歌手JJの報われない愛の苦しみを歌った型破りなオペラ・ポップ「Wasted Love」(英語曲)が審査員票で第1位となる258ポイントを獲得、視聴者票では第4位の176ポイントを獲得し、合計得点436ポイントで優勝し、🇦🇹オーストリアの勝利で幕を閉じた。

ブックメーカーによるオッズで🇦🇹オーストリアに続き第3位で追い上げていたルアンヌの「maman」は、グランド・ファイナルで審査員票で第3位となる180ポイントの高得点を獲得したが、視聴者票で50ポイント(第14位)と伸び悩み、合計得点230ポイントで総合第7位。歴史的な優勝が現実味を帯びていただけに、フランスにとっては衝撃的な結果となった。

1988年大会でセリーヌ・ディオン(Céline Dion)が🇨🇭スイス代表として「Ne Partez Pas Sans Moi」(邦題:私をおいて旅立たないで)で優勝して以来、フランス語で歌われた曲がユーロビジョンで優勝したことはない。今大会、全てフランス語で歌った🇨🇭スイスは第10位、🇱🇺 ルクセンブルクは第22位となった。

感謝綴る

グランド・ファイナル後、ひどく落ち込み話せる状況でないと報じられたルアンヌは定例の記者会見にその姿を見せなかったが、一夜明けルアンヌは自身のInstagramでコメントを発表した。

皆さんへと宛てたメッセージでルアンヌは英語で「人生でこんなにも素晴らしい経験をするとは夢にも思っていませんでした。私は大きく変わり、とても成長しました。この冒険を通して新しい女性になり、たくさんのことを学びました!皆さんの応援に心から感謝申し上げます。皆さんを心から愛しています」と応援してくれた世界中の全ての人々に感謝の言葉を綴った。

また「今まで出会った中で最も才能のある人たち」という今大会の出場アーティストに向けて「生涯の友人を見つけたんだと心の底から感じています」と述べるルアンヌは、優勝者JJに「本当に誇りに思います。あなたは本当に、本当に、本当に、この賞にふさわしい人です。この優勝があなたにとってどれほど意味のあることだったか、私は知っています。そしてあなたの優しさ、この大会で何度も私の命(と喉)を救ってくれたことを世界に伝えたいです。あなたは単にユーロビジョン2025の優勝者だけじゃありません。ありのままで、寛大で、すべての人へ愛をもって、それを成し遂げました。いつまでもあなたを愛しています。本当にスターだわ」とお祝いの言葉を送った。

そしてフランス国民に向けてフランス語で「皆さんの支えを深く感じています。もっと多くのものを提供できればよかったのですが、でも一つだけ知ってほしいのは、私が誇りに思っているということです。私たちの旗を掲げ、皆さんを代表できたことを、とても誇りに思い光栄に思います。皆さんが送ってくれた力強い言葉、メッセージ、力強い応援の全てに心から感謝しています。皆さんの愛は、私が想像していた以上に遥か遠くまで私を連れて行ってくれました。この忘れられない冒険に感謝します。国のために夢を見させてくれてありがとう。愛しています」と綴り、最後に「エスミー、愛しているわ」と締めくくった。

フランス代表団長アレクサンドラ・レッド=アミエル(Alexandra Redde-Amiel)氏は大会結果を受けて声明で「ルアンヌは”maman”で感動的な真実を歌い上げ、フランスに魔法のような忘れられない瞬間をもたらしました。彼女は真摯な力強さと生々しい感情、そしてヨーロッパとフランスの心に深く刻む圧倒的なパフォーマンスで、私たちの国旗を高く掲げました」と述べた。そして彼女はユーロビジョンは予測不可能な大会とした上で「ルアンヌ、あなたをとても誇りに思います。あなたは私たちが愛するフランスを一つにし、力強く輝かしい瞬間をもたらしてくれました」そして「並外れた観客数と国民的熱狂は、ユーロビジョンの歴史上稀に見るものでした」とフランス全土が熱狂に沸いた今大会を振り返り感謝の言葉を述べた。

エド・シーランも称賛

© Alma Bengtsson / EBU

ルアンヌの決勝パフォーマンスには、著名人らから称賛の声が数多く寄せられ、歌手ヴィアネ(Vianney)は自身のInstagramで「カリスマ性と優雅さのランキングではルアンヌが優勝だ🙏🇫🇷👏」と投稿し、歌手クララ・ルチアーニ(Clara Luciani)は「本当にそうだわ🔥🔥🔥❤️❤️❤️❤️❤️🥰🥰🥰」、女優マリナ・フォイス(Marina Foïs)も称賛の声を投稿した。前述のルアンヌのInstagramの投稿に、フランス・テレビジョンは「私たちの心の中では優勝です。この感動的なパフォーマンスに拍手を送ります! ❤️ 🎤」と敬意を表し、歌手ジュリエット・アルマネ(Juliette Armanet)は「❤️本当に素晴らしかったわ❤️」とルアンヌの活躍を高く評価した。

また決勝パフォーマンス直後、結果発表前にイギリス人歌手エド・シーラン(Ed Sheeran)からも応援を受け、Instagramのストーリーにエド・シーランは「なんて美しい歌なんだ。君が優勝すると嬉しいな」とエールを送った。

帰国後

バーゼルから帰国後、ルアンヌは現地時間5月21日水曜日、フランスTMC放送局で放送の番組『Quotidien』に出演し、7位の結果について「まだ頭の中は整理できていませんが、でも視聴者票で誰もが少し驚く結果となったことは事実です。しかし競技ですのでそれを受け止めています」と心境を打ち明けた。今大会について「手に負えないほどでしたが、同時に信じられないほど素晴らしい体験でした。正直なところ、感情のジェットコースターのような体験で、こんな出来事は初めてでした」と振り返りながらも「本当に手厚いサポートのおかげで、精神的には予想以上に落ち着くことができました」と感謝を語り、大きく成長したこの10日間を振り返った。

© Corinne Cumming / EBU
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© Sarah Louise Bennett / EBU

次回のユーロビジョンで復帰する可能性について尋ねられると「ルール的には可能ですが、少しゆっくりしたいかもしれません」と言い「9月から来年のユーロビジョンまでツアーがあって、それから結婚も控えているんです。ですので予定がきっと大変なことになりそう」とシンガーソングライターの婚約者フロリアン・ロッシ(Florian Rossi)と結婚する予定であることを公表した。

フランスに帰国して受けた反響と愛に圧倒されているというルアンヌは「本当に嬉しいです。フランスでこれほどの熱狂が見られて本当に嬉しいです。信じられないくらいです。皆さんからの反響は本当に驚きです。このような素晴らしい経験をできたことにとても感謝しています。たくさんのことを学び、忘れられない経験をしました。このような機会に恵まれて本当に幸せです」

© Corinne Cumming / EBU

またこの日ルアンヌはフランスの報道専門局BFMTVのインタビューで決勝戦の結果を受けた定例の記者会見に出席しなかったことについて「あまりにも落ち込んだため少し時間が必要でした。スコア的にはもっと良い結果を期待していたんです」と説明し、しかし振り返ってみると「とても誇り」に感じ、「当時は確かにつらい気持ちでした。でも7位は悪くない数字だし、私にとってはラッキーナンバーなんです」。そして「その反響があまりにも信じられないので、これは幸運をもたらすものだと自分に言い聞かせたくなるのです」と語った。

敗因について「分析するのは本当に難しい」とした上で、「でも分析したくないんです。そうじゃないと『私が間違ったことをした、あれは正しいことじゃなかった』という立場に自分を置いてしまうから。でもそれは違います」と語る。「おそらくそれは世界にとっては正解ではなかったかもしれませんが、私にとって、私の人生にとって、そして私の母にとっては、正しいことだったのです」

この大会でルアンヌの心に焼き付いたのは悲しみではないという。「結果発表の時よりも、あの時のほうがずっと泣いてしまいました。こんなにたくさんの人が私の後ろにいてくれたんだと知って、嬉しくて涙が溢れ出ました」と彼女は打ち明ける。 「それは全く予想していなかった人々の温かさでした」

そして娘エスミーの支えがあったことも明かし「エスミーは私にこう言ってくれました。『ママ、優勝はできなかったけど、歌は本当にお上手だったし、トロフィーも二つもらえたからとっても幸せ』って」

決勝後ルアンヌの「maman」は熱狂的な反響を呼び、Spotifyで世界バイラルチャートにランクインした他、17か国のバイラルチャートにランクインし、フランス版ビルボードによると決勝翌日5月18日には、Spotifyで24時間で78万8000回再生数を超え、1週間で370%の増加を記録したという。7位という結果ながら、ユーロビジョンへの参加がキャリアの転機となる「特別な経験」となりルアンヌは「国際的に活躍できる扉が開かれたのです」と前向きに捉える。

ルアンヌは9月に始まるフランスでの『SOLO TOUR』に続き、2026年4月16日から5月2日までヨーロッパツアー『NOT SOLO TOUR LOUANE』でリスボン公演を皮切りに、ロンドン、ベルリン、ケルンをまわり、アムステルダム公演を予定している(Instagram)。

また今日リリースのアメリカのスター、ジョー・ジョナス(Joe Jonas)のニュー・アルバム『Music for People Who Believe in Love』(Apple Music / Spotify)でルアンヌがジョー・ジョナスとコラボした曲「Hey Beautiful」が正式にリリースされた(日本時間2025年5月23日)。

ジョー・ジョナス本人からインスタグラムでルアンヌが直接オファーを受け実現したコラボで、同曲はジョー・ジョナスと元妻でイギリス人女優のソフィー・ターナーとの間に生まれた二人の娘、ウィラ(4歳)とデルフィーヌ(2歳)に捧ぐ歌となっている。このアルバムの中でも特別な曲で、愛情と優しさに満ちたこの歌は娘への子守唄のような歌だといい、自分がそばにいないとき、子供たちを見守っていてくれるように星にお願いする歌。「Secret」のルアンヌとジョー・ジョナスの息の合った美しい幻想的なハーモニーが心を離さないバラードになっている。

決勝パフォーマンス直前に公開された英インデペンデント紙でのインタビュー(The Independent)でルアンヌは「maman」の意味について次のように語っている。「この歌は深い悲しみを経験したすべての人への希望のメッセージです。悲しみは癒やすことができるということ、そしてたとえどんな困難があっても人生を築けるということを、伝えたかったのです」

© Corinne Cumming / EBU

 

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