ルーシー・トーマス、幻想世界に誘う『キャッツ』曲「メモリー」&新曲「Beautiful Ghosts」


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11/27[金]9:00 ─ 12/1[火]23:59
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1981年のロンドン初演を皮切りに、1982年にはブロードウェイ公演、1983年には劇団四季の日本公演が始まり、世界50カ国以上19ヶ国言語で上演。これまでに世界観客動員数8100万人を超え、ローレンス・オリヴィエ賞2冠、トニー賞7冠、そしてグラミー賞受賞など数々の賞に輝き、世界中を感動に包んできた大ヒットミュージカル『キャッツ』。そのセントラル・ナンバー「Memory」(邦題:メモリー)は、ミュージカルを観たことがない人も知る不朽の名曲として、時代を超えて世界中の人々から愛され続けてきた。

その「Memory」を心震わす美しい歌声でエモーショナルに歌い上げる15歳ルーシー・トーマス(Lucy Thomas)のカバーが公開。昨年夏、イギリス版『The Voice Kids』で審査員の鳥肌を立たせる歌声でイギリスを感動に包み、当時14歳で異例のレコード契約を果たしデビューしたイングランド北西部ランカシャー州ウィガン出身のクラシカル・クロスオーバーのシンガー。透き通る柔らかな美しい音色とスケール感のある力強さ、優雅な響きと豊かな表現力を兼ね備えた歌声で、音楽ジャンル、世代を超えて人々を惹きつけている。

劇中で「Memory」は、かつてその美貌で名を馳せ魅力的だった年老いた孤独な雌猫グリザベラ(Grizabella)の曲。思い出だけが心の拠り所となり、追放されたグリザベラが受け入れられることを願う痛切な哀歌であるが、物語の主題でもある贖罪、救いと再生、祈りと希望が込められており、新たな旅立ちのラストシーンに繋がる重要な曲となっている。そのミュージカル屈指のスタンダード・ナンバーをブロードウェイやミュージカル新作『Rosie』など、美しいミュージカル・ナンバーの数々で魅了してきたルーシー・トーマスが、憂いを帯びた抑揚に富む歌声で歌い上げる。

(バース1)「真夜中、通りは静まり返る/月は記憶を失ってしまったの?/月は独り微笑む/灯火の下、私の足元に枯れ葉が積もり/風が唸り始める」、「思い出(Memory)、月明かりの下で独りきり/過ぎ去りし日々を思い微笑むことができる/あの時私は美しかった/幸せを知っていた頃を思い出す/もう一度思い出を蘇らせて」、「全ての街灯が打ち鳴らすかのよう/最期の警告音を/誰かが呟き、街灯が消えゆく/そしてもうすぐ/朝がやってくる」(コーラス)「曙光(Daylight)/私は朝日を待たねばならない/新しい人生を考えるのよ/決して屈してはいけない/夜明けが来れば、今夜もきっと思い出の一つになる/そして新しい日が始まる」(間奏)

(ブリッジ)「燻った一日の最後に燃え尽きる日々/淀み冷たい朝の匂い/街灯は消え、また夜が終わり/また陽が昇る」(コーラス)「私に触れて/私を独り置き去りにするのはいとも簡単なこと/私の思い出の中に/陽に照らされた日々の記憶の中に」、「もしあなたが私に触れてくれるのなら、本当の幸せに出会えるわ/ほら見て、新しい日が始まるわ」

ミュージカル曲として最も成功した曲の一つとされる「Memory」は、ウエストエンド公演及び映画『Cats』(’98)でグリザベラ役を演じたエレイン・ペイジ(Elaine Paige)をはじめ、これまでブロードウェイ公演のベティ・バックリー(Betty Buckley)、音楽界からはバーブラ・ストライサンド(Barbra Streisand)セリーヌ・ディオン(Céline Dion)レオナ・ルイス(Leona Lewis)スーザン・ボイル(Susan Boyle)ら、圧倒的歌唱力を持つ歌姫らが熱唱。まもなく公開の映画『キャッツ』では、グリザベラ役のジェニファー・ハドソン(Jennifer Hudson)が歌う。

それぞれ独特なスタイル・解釈でカバーしているのが特徴的で、ジェニファー・ハドソンは啜り泣くような映画ならではの表現と迫真の歌声で哀哭をリアルに歌い上げる。小さい頃からウエストエンドの舞台に憧れを抱いていたルーシー・トーマスは、エレイン・ペイジからインスパイアされたといい、刻々と変化する情感豊かな表現力で歌う彼女の劇的なスタイルを継承しているが、ルーシー特有の幻想的な美しい響きが加わり、魔法にかけられた舞台の夢幻的な世界に誘う。

プッチーニのオペラを彷彿とさせるメロディの「Memory」は、『オペラ座の怪人』、『エビータ』など数々の傑作を世に送り出したミュージカル界の巨匠アンドルー・ロイド・ウェバー(Andrew Lloyd Webber)が作曲。イギリスの詩人T・S・エリオット(T. S. Eliot)初期の詩「風の夜の狂詩曲」(1911年、原題:Rhapsody on a Windy Night、原文)を基に、『キャッツ』の演出家トレヴァー・ナン(Trevor Nunn)が作詞した。

ちなみに『キャッツ』の原作は、エリオットの子供向け詩集『キャッツ ― ポッサムおじさんの猫とつき合う法』(1939年、原題:The Old Possum’s Book of Practical Cats)であるが、この原作にグリザベラは登場していない。子供には悲劇的すぎるためその詩集から外されたという。それにより未完の遺稿となった詩「魅力的な猫グリザベラ」(原題:Grizabella the Glamour Cat)は、エリオットが亡くなったあとに、彼の妻からロイド・ウェバーに渡り、その「魅力的な猫グリザベラ」と「風の夜の狂詩曲」を基に原作にない新たなキャラクターとして、グリザベラが誕生したという。

時を超えて誕生したのは、キャラクターだけではない。来月2020年1月24日(金)より全国公開されるミュージカル映画『キャッツ』(原題:Cats)では、新たなミュージカル・ナンバーが誕生する。

Beautiful Ghosts

満月が輝く夜、ロンドンの片隅のごみ捨て場。飼い主に捨てられた一匹の臆病な白猫ヴィクトリアが迷い込んだのは、”ジェリクルキャッツ”たちの不思議の世界。年に一度開かれるジェリクル舞踏会、そこで選ばれた一匹の猫だけが、天上に上り、自分が望む新しい人生を与えられるのだった。個性溢れる猫たちが躍動させる独創的な歌と踊りの世界。人生を変える奇跡の夜が幕を開ける───。

グリザベラと対照的な美しい純白の子猫ヴィクトリアの視点から描かれる今回の映画『キャッツ』では、主人公ヴィクトリアの新曲「Beautiful Ghosts」が生まれた。バレリーナのヴィクトリアはこれまでソロ曲がなかったため、今回新たに書き下ろされたという。物語のクライマックスで歌うグリザベラの「Memory」を受けてヴィクトリアが歌うもので、いわばイノセントなヴィクトリアの「メモリー」である。本作のサントラでは「Beautiful Ghosts」がリード・シングルとしてリリースされており、中心的な楽曲として位置づけられている。

「Beautiful Ghosts」の作曲はロイド・ウェバー。その曲を聞いたテイラー・スウィフト(Taylor Swift)が「猫の気持ちなら私に任せて」と申し出て、ヴィクトリアになりきり作詞。エリオットの詩集を読み、特有の表現を反映させたという。劇中では、ヴィクトリア役を演じる世界的バレエダンサーのフランチェスカ・ヘイワード(Francesca Hayward)が歌い、ボンバルリーナ役として出演しているテイラー・スウィフトによるバージョンはエンドクレジットで流れる。同曲は2020年ゴールデングローブ賞(77th Golden Globe Awards)「主題歌賞」(Best Original Song)にノミネートされた。オスカーのノミネートは逃す見通しとなっている。

実写映画化した監督は『レ・ミゼラブル』(2012)、『英国王のスピーチ』(2010)のアカデミー賞受賞監督トム・フーパー(Tom Hooper)。1930年代のロンドンを舞台にしているが、フーパー監督は『キャッツ』について「タイムリーで幻想的なミュージカルです。贖罪と多様性の受容の大切さを説いています」(メイキング映像)と語っている。さらに「この映画はトライバリズム(部族主義)の危険性と優しさの力を描いています」(”I think this film is about the perils of tribalism and the power of kindness” – ワールドプレミア上映会)、「ある意味でジェリクルの弱さは、それが部族であることにあります。社会の片隅に追いやられるのです。堕ちた者、忘れ去られた者、屈辱を受けた者。そうした人を切り捨てるのではなく、再び迎え入れる時、社会として私たちはより強くなるのだと、この映画が伝えようとしているのではないかと思うのです。ですからこの映画の中心的なメッセージは、赦しの大切さにあります」(”I think the film at a thematic level is perhaps suggesting that we as a community are stronger when rather than dividing we reintegrate into our community the fallen, the forgotten, the disgraced. So central to the movie is a message about the importance of forgiveness.” – Business Insider)。

グリザベラと純真な子猫ヴィクトリアの対比と共鳴は、その物語の中心的役割を担い、ペアとなる「Memory」と「Beautiful Ghosts」を通じて表現されている。ヴィクトリアは気品の象徴でもあり一見真逆の二人だが、ジェリクルキャッツから見捨てられたグリザベラに、捨て猫のヴィクトリアは共感するものがあったのだろう。「Beautiful Ghosts」ではそんなヴィクトリアの心情を綴りながら、「優しさの力」をジェリクルキャッツに招く。往年の名曲のように歌い上げるルーシー・トーマスは、ロンドンの通りに幽玄の美を響かせる。

(バース1)「平気なら、家までついて来て/あなたをどこに連れていけばいいか、分かるはずないわ/誰も私に賭けない時、私はリスクを冒すべき?/だから暗闇から眺め、人生が始まるのを待っている/美しい思い出はない」(コーラス)「私がただ望むのは、望まれることだけ/ロンドンの通りに独りうろつき、さまようには若すぎる/何もない人生/少なくてもあなたには、あなたには拠り所がある/眩いばかりの部屋、一度も入ることを許されなかったその景色の記憶だけ/そしてその思い出も、ずっと昔に消えてしまった/でも少なくてもあなたには、美しきゴーストがある」

愛と寛容、赦しと救済。悲しみに癒やしと輝きを伴う歌声には、苦難に希望を差し伸べ、個性と命を力強く輝かせるミュージカルの金字塔『キャッツ』のスピリットがチラリと目を光らせる。今年デビュー・アルバム『Premiere』をリリースし(記事)、数々のカバーやチャリティーコンサートで感動に包んだルーシー・トーマス。2020年、まだ見ぬ感動の数々を届けてくれるに違いない。

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