2022年全世界の音楽市場の売上は9%成長 8年連続プラス成長


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IFPI(国際レコード産業連盟)は現地時間2023年3月21日、世界の音楽市場の売上をまとめた年次報告書「IFPI Global Music Report 2023」(PDF)で、2022年の世界の音楽市場の売上は、前年比9.0%増の262億ドルと発表した(IFPI)。これは主に有料サブスクリプションの続伸に支えられ、世界の全ての地域の市場で成長となった。

2022年はロシアのウクライナ侵攻、それによる世界的な食料・エネルギー危機と記録的な価格高騰、金融引締めなど世界経済が大きく揺れ動く年となったが、音楽市場は力強く成長を続け、8年連続のプラス成長となった。ポストコロナにより経済活動再開の動きが各国で進んだ2021年は前年比18.5%増の259億ドルで、統計開始以降最大の伸びとなったのに対して、2022年の前年比成長率はそのおよそ半分にとどまったが、報告書では、2021年はポストコロナの影響により特異な伸びとなったと指摘されている。

出典:IFPI’s Global Music Report 2023 / IFPI

フォーマット別

出典:IFPI’s Global Music Report 2023 / IFPI

フォーマット別にみると、2022年は引き続きストリーミングが牽引し、有料型、広告型を含めた総ストリーミング売上は、2021年(前年比24.3%増の169億ドル)より減速したものの、前年比11.5%増の175億ドルへと続伸し2022年全体の67.0%を占めた。拡大傾向が続くストリーミングのシェアは2021年は65.0%、2020年は62.1%だった。

ストリーミングの内訳では、有料サブスクリプションの売上が伸びは縮小したものの2桁成長を維持し、前年比10.3%増の127億ドル、シェアは2021年(前年比21.9%増の123億ドル、シェア47.3%)から48.3%にやや拡大した。有料サブスクリプションの利用者数は5億8,900万人で、2021年は5億2,300万人、2020年は4億4,300万人だった。

2021年に初めて成長に転じたフィジカルの売上は、アナログレコードの続伸に支えられ、前年比4.0%増の46億ドルとなりシェアは17.5%、2021年(前年比16.1%増の50億ドル)より伸びは縮小したものの2年連続の成長。そのうちCDとその他フィジカルの売上は前年比0.4%減、一方好調が続くアナログレコードは前年比17.1%増と続伸した。こうしたフィジカルの売上はアジアで力強く、アジアのフィジカルの売上は世界全体の49.8%を占めると指摘されている。

減少傾向が続くダウンロード&その他デジタル・フォーマットは、前年比11.7%減の9億ドル、シェア3.6%。そのうちダウンロードは前年比19.6%減の6億4,440万ドルだった。2021年に回復傾向を見せた演奏権(パフォーミング・ライツ / performing rights)とシンクロ権(シンクロナイゼーション・ライツ / synchronization rights)は続伸。コロナ前の状態に回復した演奏権は前年比8.6%増の25億ドルでシェア9.4%。シンクロ権は前年比22.3%増の6億4,040万ドルでシェア2.4%となった。

地域別

地域別では、世界最大の市場であるアメリカ&カナダは前年比5.0%増、2021年(前年比21.8%増)より伸びは大きく縮小したが、これは2021年が主にポストコロナの影響により異例の成長になったことに起因すると指摘。アメリカ&カナダは今回初めて100億ドルを突破し、シェアは41.6%。

サブサハラアフリカ(+34.7%)が南アフリカの急成長により世界で最も高い成長率を見せ、次いでラテンアメリカ(+25.9%)が2桁成長を維持。続いて2021年に最も高い伸びだった中東&北アフリカ(+23.8%)。中東&北アフリカの売上の95.5%がストリーミングによるものだった。そしてアジア(+15.4%)、オーストララシア(+8.1%)、ヨーロッパ(+7.5%)となり、世界全7つの地域で成長となった。

国別

2022年2021年2020年2019年
1位🇺🇸アメリカ🇺🇸アメリカ🇺🇸アメリカ🇺🇸アメリカ
2位🇯🇵日本🇯🇵日本🇯🇵日本🇯🇵日本
3位🇬🇧イギリス🇬🇧イギリス🇬🇧イギリス🇬🇧イギリス
4位🇩🇪ドイツ🇩🇪ドイツ🇩🇪ドイツ🇩🇪ドイツ
5位🇨🇳中国🇫🇷フランス🇫🇷フランス🇫🇷フランス
6位🇫🇷フランス🇨🇳中国🇰🇷韓国🇰🇷韓国
7位🇰🇷韓国🇰🇷韓国🇨🇳中国🇨🇳中国
8位🇨🇦カナダ🇨🇦カナダ🇨🇦カナダ🇨🇦カナダ
9位🇧🇷ブラジル🇦🇺オーストラリア🇦🇺オーストラリア🇦🇺オーストラリア
10位🇦🇺オーストラリア🇮🇹イタリア🇳🇱オランダ🇧🇷ブラジル

2022年における音楽市場規模の国別ランキングでは、第1位 アメリカ(+4.8%)、第2位 日本(+5.4%)、第3位 イギリス(+5.4%)、第4位 ドイツ(+2.2%)で、トップ4は2021年から不動。日本は2年連続の成長となった。世界シェア22.9%のアジアで、日本に次いで2番目に大きな市場である中国(+ 28.4%)は急成長をみせワンランクアップの第5位、初のトップ5入りを果たした。

続いて第6位 フランス(+7.7%)、第7位 韓国、第8位 カナダ(+8.1%)、第9位 ブラジル(+15.4%)、第10位 オーストラリア(+8.1%)。2021年からフランス、オーストラリアはワンランクダウン、ストリーミングが大半を占めるブラジルが2019年以来となるトップ10入りとなった。

IFPIのCEO フランシス・ムア氏(Frances Moore)は今回の発表に際して総括で次のようにコメントしている。「今年の報告書は、レコード会社がその企業指針に取り組み続ける強い姿勢を示し続けています。それはアーティストと力を合わせながら、彼らのキャリアを通じた比類なきクリエイティブな潜在力と商業的可能性を引き出す力となることです。より多くのビジネス領域やより多くの世界の場所でチャンスを活かせるよう、アーティストとレーベルのパートナーシップの絶え間なき進化と革新が求められています。」

「レコード会社は、世界中でローカルチームを立ち上げ、成長する様々な音楽シーンのアーティストと仕事をしながら、その投資とイノベーションによって、音楽をこれまで以上に世界的な繋がりのあるものにする力となってきました。これはファンがそれぞれローカルのアーティスト・文化を愛し祝福する機会を広げながら、音楽の発展を促進するものです。」

一方ムア氏は高まる課題について述べ、「しかしながら音楽の機会が広がり続ければ、音楽アーティストの作っている音楽の価値がしっかりと認められ、確実に対価を得られるようレコード会社がしなければならない地域もあります。より多くの関係者が投資や開発に関与せず音楽から利益を得ようとしていることから、この挑戦は一層複雑化しています」と、音楽利用の多様化、TikTokやAIテクノロジーがもたらす問題も踏まえ音楽の持続可能な未来へ、その価値を守っていく重要性を述べた。

IFPI 2022年グローバル・シングル Top 20

アーティスト再生数相当
1位ハリー・スタイルズ
Harry Styles
As It Was22.8億
2位グラス・アニマルズ
Glass Animals
Heat Waves17.5億
3位ザ・キッド・ラロイ&ジャスティン・ビーバー
The Kid LAROI and Justin Bieber
STAY17.4億
4位エルトン・ジョン&デュア・リパ
Elton John and Dua Lipa
Cold Heart (PNAU Remix)13.4億
5位ザ・ウィークエンド
The Weeknd
Save Your Tears13.2億
6位イマジン・ドラゴンズ
Imagine Dragons & J.I.D
Enemy12.6億
7位エド・シーラン
Ed Sheeran
Shivers12.3億
8位ゲイル
GAYLE
abcdefu12.2億
9位バッド・バニー&チェンチョ・コルレオーネ
Bad Bunny & Chencho Corleone
Me Porto Bonito12.1億
10位エド・シーラン
Ed Sheeran
Bad Habits12.0億
11位バッド・バニー
Bad Bunny
Tití Me Preguntó11.4億
12位デュア・リパ feat.ダベイビー
Dua Lipa
Levitating (feat. DaBaby)11.1億
13位アデル
Adele
Easy On Me10.3億
14位ザ・ウィークエンド
The Weeknd
Blinding Lights10.1億
15位リル・ナズ・Xジャック・ハーロウ
Lil Nas X and Jack Harlow
INDUSTRY BABY10.1億
16位ケイト・ブッシュ
Kate Bush
Running Up That Hill (A Deal With God)10.0億
17位映画『ミラベルと魔法だらけの家』
Encanto Cast
We Don’t Talk About Bruno9.5億
18位ファルッコ
Farruko
Pepas9.4億
19位ジャック・ハーロウ
Jack Harlow
First Class9.2億
20位カロルG
Karol G
PROVENZA9.2億
※出典:”Harry Styles wins IFPI Global Single Award for As It Was” – IFPI
※IFPI「2022年グローバル・シングル Top 20」(原題:IFPI Top 10 Global Singles 2022)は、2022年1月1日から12月31日まで1年間の全世界におけるストリーミング数(有料サブスクリプション、広告型プラットフォームを含む)、デジタル・ダウンロード数など全てのデジタル・フォーマットを対象に集計し独自の比重に基づきストリーミング数に換算、そのストリーミング再生数の相当数でランキング化したもの。

IFPI 2022年グローバル・アルバム Top 20

アーティストアルバム
1位バッド・バニー
Bad Bunny
Un Verano Sin Ti
2位テイラー・スウィフト
Taylor Swift
Midnights
3位ハリー・スタイルズ
Harry Styles
Harry’s House
4位BTSProof
5位映画『ミラベルと魔法だらけの家』
Encanto Cast
Encanto (Original Motion Picture Soundtrack)
6位Stray KidsMAXIDENT
7位SEVENTEENFace the Sun
8位BLACKPINKBORN PINK
9位オリヴィア・ロドリゴ
Olivia Rodrigo
SOUR
10位エド・シーラン
Ed Sheeran
=
11位ENHYPENMANIFESTO: DAY 1
12位モーガン・ウォーレン
Morgan Wallen
Dangerous: The Double Album
13位ドージャ・キャット
Doja Cat
Planet Her
14位Stray KidsODDINARY
15位ザ・ウィークエンド
The Weeknd
Dawn FM
16位TOMORROW X TOGETHERminisode 2: Thursday’s Child
17位ビヨンセ
Beyoncé
RENAISSANCE
18位SEVENTEENSECTOR 17
19位ザ・キッド・ラロイ
The Kid LAROI
F*CK LOVE (Mix Tape)
20位ドレイク
Drake
Certified Lover Boy
※出典:”Bad Bunny’s Un Verano Sin Ti announced as winner of IFPI’s Global Album Award” – IFPI
※IFPI「2022年グローバル・アルバム Top 20」(原題:IFPI Top 10 Global Albums 2022)は、2022年1月1日から12月31日まで1年間の全世界におけるフィジカルのセールス、デジタル・ダウンロード、ストリーミングのデータを集計しランキング化したもの。

IFPI 2022年グローバル・アルバム・セールス・チャート※

アーティストアルバム
1位周 杰倫
Jay Chou
最偉大的作品
Greatest Works of Art
2位BTSProof
3位テイラー・スウィフト
Taylor Swift
Midnights
4位Stray KidsMAXIDENT
5位SEVENTEENFace the Sun
6位ENHYPENMANIFESTO : DAY 1
7位BLACKPINKBORN PINK
8位Stray KidsODDINARY
9位SEVENTEENSECTOR 17
10位TOMORROW X TOGETHERminisode 2: Thursday’s Child
※【追記】2023年3月28日発表(twitter
※出典:”IFPI Global Charts” – IFPI
※IFPI「2022年グローバル・アルバム・セールス Top 10」(原題:IFPI Global Album Sales Chart 2022)は、2022年1月1日から12月31日まで1年間の全世界におけるフィジカルのセールスを集計しランキング化したもの。
※アジア勢がトップ10に9組ランクイン。西洋のアーティストはテイラー・スウィフトのみランクインした。

IFPI 2022年グローバル・レコード・アルバム・チャート※

アーティストアルバム
1位テイラー・スウィフト
Taylor Swift
Midnights
2位ハリー・スタイルズ
Harry Styles
Harry’s House
3位フリートウッド・マック
Fleetwood Mac
Rumours
4位マイケル・ジャクソン
Michael Jackson
Thriller
5位オリヴィア・ロドリゴ
Olivia Rodrigo
SOUR
6位タイラー・ザ・クリエイター
Tyler, The Creator
CALL ME IF YOU GET LOST
7位ケンドリック・ラマー
Kendrick Lamar
good kid, m.A.A.d city
8位ピンク・フロイド
Pink Floyd
The Dark Side of the Moon
9位レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
Red Hot Chili Peppers
Unlimited Love
10位クイーン
Queen
Greatest Hits
※【追記】2023年3月28日発表(twitter
※出典:”IFPI Global Charts” – IFPI
※IFPI「2022年グローバル・レコード・アルバム・チャート」(原題:IFPI Global Vinyl Albums Chart 2022)は、2022年1月1日から12月31日まで1年間の全世界におけるアナログレコード・アルバムのセールスを集計しランキング化したもの。

IFPI 2022年グローバル・ストリーミング・アルバム・チャート※

アーティストアルバム
1位バッド・バニー
Bad Bunny
Un Verano Sin Ti
2位ハリー・スタイルズ
Harry Styles
Harry’s House
3位映画『ミラベルと魔法だらけの家』
Encanto Cast
Encanto (Original Motion Picture Soundtrack)
4位エド・シーラン
Ed Sheeran
=
5位テイラー・スウィフト
Taylor Swift
Midnights
6位モーガン・ウォーレン
Morgan Wallen
Dangerous: The Double Album
7位オリヴィア・ロドリゴ
Olivia Rodrigo
SOUR
8位ドージャ・キャット
Doja Cat
Planet Her
9位ドレイク
Drake
Certified Lover Boy
10位ザ・キッド・ラロイ
The Kid LAROI
F*CK LOVE (Mix Tape)
※【追記】2023年3月28日発表(twitter
※出典:”IFPI Global Charts” – IFPI
※IFPI「2022年グローバル・ストリーミング・アルバム・チャート」(原題:IFPI Global Streaming Albums Chart 2022)は、2022年1月1日から12月31日まで1年間の全世界におけるアルバムのストリーミング数を集計しランキング化したもの。

IFPI 2022年グローバル・レコーディング・アーティスト Top 20

アーティスト
1位テイラー・スウィフト
Taylor Swift
2位BTS
3位ドレイク
Drake
4位バッド・バニー
Bad Bunny
5位ザ・ウィークエンド
The Weeknd
6位SEVENTEEN
7位Stray Kids
8位ハリー・スタイルズ
Harry Styles
9位周 杰倫
Jay Chou
10位エド・シーラン
Ed Sheeran
11位エミネム
Eminem
12位カニエ・ウェスト
Kanye West
13位ヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲイン
YoungBoy Never Broke Again
14位ケンドリック・ラマー
Kendrick Lamar
15位リル・ベイビー
Lil Baby
16位ビリー・アイリッシュ
Billie Eilish
17位ポスト・マローン
Post Malone
18位ジュース・ワールド
Juice WRLD
19位ザ・ビートルズ
The Beatles
20位イマジン・ドラゴンズ
Imagine Dragons
※出典:”Taylor Swift Named IFPI’s Global Recording Artist of the Year” – IFPI
※IFPI「2022年グローバル・レコーディング・アーティスト トップ20」(原題:IFPI Top 10 Global Recording Artists 2022)は、2022年1月1日から12月31日まで1年間の全世界におけるストリーミング数、デジタル及びフィジカルのアルバムとシングルの売上数を含む全てのフォーマットの消費に基づいて独自の比重でランキング化したもの。
※今回で10年目を迎えたこのチャートでテイラー・スウィフトは首位となり「IFPI 2022年年間グローバル・レコーディング・アーティスト賞」(IFPI’s 2022 Global Recording Artist of the Year Award)を受賞。テイラー・スウィフトの同賞受賞は2014年、2019年に続いて3度目で過去最多受賞となっている。同賞の歴代受賞者は、2013年ワン・ダイレクション(One Direction)、2014年テイラー・スウィフト、2015年アデル、2016年ドレイク、2017年エド・シーラン、2018年ドレイク、2019年テイラー・スウィフト、2020年BTS、2021年BTSとなっている。

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