IFPI(国際レコード産業連盟)が現地時間2021年3月23日、世界の音楽市場の売上をまとめた年次報告書「IFPI Global Music Report 2021」(PDF)で、2020年の世界の音楽市場の売上は、前年比7.4%増の216億ドルになったと発表した(IFPI)。6年連続のプラス成長となり、2002年(221億ドル)より後では最高の売上高となった。
「世界が新型コロナウイルス感染症のパンデミックと闘うなか、音楽の揺るぎない力を私たちに再び気づかせた」と語るIFPIのCEO、Frances Mooreは、報告書の冒頭で「THE ENDURING POWER OF MUSIC」(揺るぎなき音楽の力)を軸に2020年を総括した。
フォーマット別
2020年の成長はストリーミングが牽引し、2020年のストリーミング売上は前年比19.9%増の134億ドルとなり、2020年全体の62.1%を占めた。有料サブスクリプションの2020年会員数は4億4,300万人で、有料サブスクリプションの売上は前年比18.5%増の成長となり、2020年全体の46.0%を占めた。
減少が続くフィジカルの2020年の売上は、前年比4.7%減の42億ドルで2020年全体の19.5%となった。減少が続くダウンロードなどのデジタルの2020年の売上は、前年比15.7%減の12億ドルで2020年全体の5.8%となった。新型コロナウイルス感染症のパンデミックを受けて、映画、テレビCM、ゲームなど映像とともに音楽を使用する際のシンクロ権(シンクロナイゼーション・ライツ)の売上は、2019年の成長(+4.4%)から転じて、前年比9.4%減の4億ドルとなった。また2020年の演奏権(performing rights)の売上も新型コロナウイルスの影響を受け、減少率を増やして前年比10.1%減の23億ドルとなった。
地域別
2020年における地域別の成長率では、2019年に続いてラテンアメリカ(+15.9%)が最も成長率が高く、次いでアジア(+9.5%)となっている。アジア最大の音楽市場である日本がマイナス(-2.1%)となる一方、「2020年に世界で最も活躍したアーティスト Top 10」及び「2020年に世界で最もヒットしたアルバム Top 10」(記事)で首位になったBTSなど、Kポップで世界を席巻した韓国が前年比44.8%増の成長となった。北米は前年比7.4%増の成長となったが、2019年の成長率(+11.6%)よりもやや緩やかな成長となった。その内、アメリカにおける2020年の音楽売上は、ストリーミングの好調(+12.9%)により前年比7.3%増の成長となった。
【RIAAによる2020年アメリカの音楽売上】
なおアメリカレコード協会(RIAA)は現地時間2021年3月1日、アメリカにおける2020年の音楽売上の年次報告書で、ストリーミングの成長(+13.4%、101億ドル)により小売市場規模は前年比9.2%増の122億ドルとなったと発表した(PDF「YEAR-END 2020 RIAA REVENUE STATISTICS」)。
国別
2020年における音楽市場規模の国別ランキングでは、第1位アメリカ(+7.3%)、第2位日本(-2.1%)、第3位イギリス(+2.2%)、第4位ドイツ(+5.1%)、第5位フランス、第6位韓国(+44.8%)、第7位中国、第8位カナダ(+8.1%)、第9位オーストラリア(+3.3%)、第10位オランダとなり、トップ9は2019年と同様になった(※2019年の第10位はブラジル)。
IFPIのCEO、Frances Mooreは今回の発表に際して次のようにコメントしている。「世界が新型コロナウイルス感染症のパンデミックと闘うなか、私たちの心を慰め、癒やし、高揚させる音楽の揺るぎない力を私たちは思い出させられました」、「時代を超えて変わらないものがあります。それは素晴らしい歌の力や、アーティストとファンたちの繋がりといったものです。しかし変わったものもあります。世界の多くがロックダウンとなり、ライブ・コンサートが中止となるなか、ほぼ全世界のあらゆる所で、多くのファンたちがストリーミングを通じて音楽を楽しんだのです」。
IFPI「2020年世界で最もヒットしたアルバム トップ10」(売上&ストリーミング)
順位 | アーティスト | アルバム |
---|---|---|
第1位 | BTS | Map Of The Soul: 7 |
第2位 | ザ・ウィークエンド / The Weeknd | After Hours |
第3位 | ビリー・アイリッシュ / Billie Eilish | WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO? |
第4位 | BTS | Be (Deluxe Edition) |
第5位 | ハリー・スタイルズ / Harry Styles | Fine Line |
第6位 | ポスト・マローン / Post Malone | Hollywood’s Bleeding |
第7位 | 米津玄師 | STRAY SHEEP |
第8位 | ジャスティン・ビーバー / Justin Bieber | Changes |
第9位 | テイラー・スウィフト / Taylor Swift | folklore |
第10位 | デュア・リパ / Dua Lipa | Future Nostalgia |
※出典:”BTS’ MAP OF THE SOUL : 7 announced as first ever winner of IFPI’s newly-launched Global Album All Format Chart” – IFPI
※IFPIによる「世界アルバム全フォーマット・チャート トップ10」(Top 10 Global Album All Format Chart 2020)は、世界におけるフィジカルのセールス、デジタル・ダウンロード、ストリーミングのデータを集計しランキング化。世界におけるフィジカルのセールス、デジタル・ダウンロードのデータに基づいた従来の「The IFPI Global Top Ten Album Chart」とは別個に新設された。
※詳細は記事『2020年世界で最もヒットしたアルバム トップ10発表』
IFPI「2020年世界で最も売れたアルバム トップ10」(売上のみ)
順位 | アーティスト | アルバム |
---|---|---|
第1位 | BTS | Map Of The Soul: 7 |
第2位 | BTS | Be (Deluxe Edition) |
第3位 | 米津玄師 | STRAY SHEEP |
第4位 | テイラー・スウィフト / Taylor Swift | folklore |
第5位 | Blackpink | The Album |
第6位 | AC/DC | Power Up |
第7位 | ジャスティン・ビーバー / Justin Bieber | Changes |
第8位 | BTS | Map Of The Soul: 7 – The Journey – |
第9位 | 嵐 | This Is 嵐 |
第10位 | King Gnu | CEREMONY |
※出典:”BTS’ MAP OF THE SOUL : 7 tops IFPI’s 2020 Global Album Sales Chart” – IFPI
※IFPIによる「2020年世界アルバム・セールス・チャート」(2020 IFPI Global Album Sales Chart)はフィジカルのセールス、デジタル・ダウンロードのデータを集計しランキング化。
IFPI「2020年世界で最もヒットした曲トップ10」
順位 | アーティスト | 曲 | ストリーミング相当数 |
---|---|---|---|
第1位 | ザ・ウィークエンド / The Weeknd | 「Blinding Lights」 | 27億2,000万 |
第2位 | トーンズ・アンド・アイ / Tones and I | 「Dance Monkey」 | 23億4,000万 |
第3位 | ロディ・リッチ / Roddy Ricch | 「The Box」 | 16億7,000万 |
第4位 | SAINt JHN | 「Roses」 | 16億4,000万 |
第5位 | デュア・リパ / Dua Lipa | 「Don’t Start Now」 | 16億2,000万 |
第6位 | フューチャー feat. ドレイク Future feat. Drake | 「Life Is Good」 | 15億7,000万 |
第7位 | シャオ・ジャン / Xiao Zhan | 「Made To Love」 | 14億8,000万 |
第8位 | ダベイビー / DaBaby | 「Rockstar」 | 14億5,000万 |
第9位 | ビリー・アイリッシュ / Billie Eilish | 「bad guy」 | 13億6,000万 |
第10位 | BTS | 「Dynamite」 | 12億8,000万 |
※出典:”The Weeknd wins 2020’s IFPI Global Digital Single Award for Blinding Lights” – IFPI
※IFPI「2020年世界で最もヒットした曲トップ10」(IFPI Top 10 Global Digital Singles of 2020)は、2020年のデジタル・ダウンロード、ストリーミング(広告型及び有料サブスクリプション)のデータを集計しランキング化。前年まではストリーミング数を独自の比重でダウンロード数に換算してランキング化していたが、2020年からは「有料サブスクリプションが優勢になっていること」に鑑み、ダウンロード数を独自の比重でストリーミング数に換算し、ストリーミング再生回数の相当数でランキング化した。
※詳細は記事『2020年世界で最もヒットした曲トップ10発表、ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」首位に輝く』
IFPI「2020年世界レコーディング・アーティスト トップ10」
順位 | アーティスト |
---|---|
第1位 | BTS |
第2位 | テイラー・スウィフト / Taylor Swift |
第3位 | ドレイク / Drake |
第4位 | ザ・ウィークエンド / The Weeknd |
第5位 | ビリー・アイリッシュ / Billie Eilish |
第6位 | エミネム / Eminem |
第7位 | ポスト・マローン / Post Malone |
第8位 | アリアナ・グランデ / Ariana Grande |
第9位 | ジュース・ワールド / Juice Wrld |
第10位 | ジャスティン・ビーバー / Justin Bieber |
※出典:”BTS announced as the winners of 2020’s IFPI Global Recording Artist of the Year Award” – IFPI
※IFPI「2020年世界レコーディング・アーティスト・トップ10」(IFPI Top 10 Global Recording Artists of 2020)は、ストリーミング、アルバムとシングルの売上(CD、アナログレコード、ダウンロード含む)のデータに基づいて独自の比重でランキング化したもの。