MRC Data（旧Nielsen Music）と米ビルボードは現地時間2021年1月7日、2020年のアメリカ市場における音楽売上をまとめた年次報告（PDF – Billboard）で、2020年の米国内年間アルバム／ソング・チャート「2020 MRC DATA YEAR-END CHARTS」トップ10を発表した（Billboard）。集計期間は2020年1月3日から2020年12月31日まで。
最も売り上げたアルバムはテイラー・スウィフト（Taylor Swift）の『folklore』で100万枚を超えた唯一のアルバムとなった。ストリーミングを含めた年間アルバム・チャートではリル・ベイビー（Lil Baby）の『My Turn』が首位となり、トップ10の大部分がR&B/ヒップホップ・アルバムとなった。最も売れた曲はBTSの「Dynamite」、最もストリーミングで再生された曲はロディ・リッチ（Roddy Ricch）の「The Box」だった。
※なおこのチャートは、米ビルボードが現地時間2020年12月3日に発表した年間「Billboard 200」、「Hot 100」（※集計期間：2019年11月23日から2020年11月14日まで）とは異なる。
Albums
年間アルバム・チャートで首位となったのは、リル・ベイビー（Lil Baby）の2ndアルバム『My Turn』でアルバム相当数263万ユニットを記録。3年連続でR&B/ヒップホップが首位となり、2018年ドレイク（Drake）の『Scorpion』（391万ユニット）、2019年ポスト・マローン（Post Malone）の『Hollywood’s Bleeding』（300万ユニット）に続いて首位となった。2020年3月に「Billboard 200」初登場首位となった『My Turn』（2020年2月28日リリース）は通算5週で首位を獲得（※2020年3月14日付, 6月20日付-7月11日付）。デラックス盤（2020年5月1日リリース）に「Hot 100」ヒット曲「We Paid」（最高第10位）、「The Bigger Picture」（最高第3位）など収録した同作は年間ストリーミングで39億3,000万回を記録し、ストリーミング数で換算したアルバム相当数「SEA」は259万ユニットとなり大部分を占め、アルバム・セールスは40,000枚ほどだった。
続いて第2位には、テイラー・スウィフト（Taylor Swift）が2020年7月にサプライズ・リリースした8thアルバム『folklore』（220万ユニット）。同作は通算8週で「Billboard 200」首位（※2020年8月8日付-9月12日付, 10月3日付, 10月31日付）となった。年間アルバム第2位となったテイラー・スウィフトは、2016年年間アルバム第2位となったアデル（Adele）の『25』以来、女性アーティストとして最も高い記録となった。またトップ10で唯一の女性アーティストとなった。
R&B/ヒップホップ以外のアルバムでトップ10に入ったのはわずか3作で、『folklore』の他、ハリー・スタイルズ（Harry Styles）の『Fine Line』が第9位、ルーク・コムズ（Luke Combs）の『What You See Is What You Get』が第10位となった。
2020年米国年間アルバムトップ10 (アルバム相当数)
第1位 Lil Baby『My Turn』(263.2万)
第2位 Taylor Swift『folklore』(220.4万)
第3位 Pop Smoke『Shoot for the Stars Aim for the Moon』(219.8万)
第4位 The Weeknd『After Hours』(203.2万)
第5位 Juice Wrld『Legends Never Die』(199万)
第6位 Post Malone『Hollywood’s Bleeding』(189.5万)
第7位 Lil Uzi Vert『Eternal Atake』(186万)
第8位 Roddy Ricch『Please Excuse Me for Being Antisocial』(179.2万)
第9位 Harry Styles『Fine Line』(152.2万)
第10位 Luke Combs『 What You See Is What You Get』(147.5万)
※集計期間：2020年1月3日〜2020年12月31日
※出典：MRC Data「MRC DATA YEAR-END REPORT U.S. 2020」
年間アルバム売上チャートでは、売上枚数127万6,000万枚となったテイラー・スウィフト（Taylor Swift）の『folklore』が第1位を記録し、2020年に唯一100万枚以上を売り上げたアルバムとなった。年間売上枚数100万枚以上のアルバムが1枚となるのは2年連続で、2019年はテイラー・スウィフトの『Lover』が109万枚を売り上げた。今回の記録により、テイラー・スウィフトは年間アルバム売上チャートで5度首位となり、1992年にMRC Dataが統計を開始して以来、最多の記録となっている。テイラー・スウィフトは2009年に『Fearless』（322万枚）、2014年に『1989』（366万枚）、2017年に『reputation』（190万枚）でアルバム売上の年間首位となった。『folklore』に続いてサプライズ・リリースされた9thアルバム『evermore』は283,000枚を売り上げ第10位に入り、テイラー・スウィフトはトップ10に複数枚ランクインした唯一のアーティストとなった。
2020年米国年間アルバム売上トップ10
第1位 Taylor Swift『folklore』(127.6万)
第2位 BTS『Map of the Soul: 7』(67.4万)
第3位 The Weeknd『After Hours』(48万)
第4位 Harry Styles『Fine Line』(42万)
第5位 Billie Eilish『when we all fall asleep, where do we go?』(34.8万)
第6位 Lady Gaga『Chromatica』(33.1万)
第7位 Juice WRLD『Legends Never Die』(30.1万)
第8位 Halsey『Manic』(30.1万)
第9位 Eminem『Music to Be Murdered By』(28.7万)
第10位 Taylor Swift『evermore』(28.3万)
※集計期間：2020年1月3日〜2020年12月31日
※出典：MRC Data「MRC DATA YEAR-END REPORT U.S. 2020」
好調が続くアナログ・レコードの年間売上チャートでは、ハリー・スタイルズ（Harry Styles）の『Fine Line』が第1位、続いてビリー・アイリッシュ（Billie Eilish）のデビュー・アルバム『when we all fall asleep, where do we go?』が2019年と同じく第2位となり若い世代のアルバムがトップ2を占めた。時代を超えて不動の人気を集めるクイーン（QUEEN）の『Greatest Hits』(’81)は第3位をキープ、2019年年間首位のザ・ビートルズ（The Beatles）の『Abbey Road』(’69)は第4位となり、2020年も上位を維持した。
2020年米国年間アナログ・レコード売上トップ10
第1位 Harry Styles『Fine Line』(23.2万)
第2位 Billie Eilish『when we all fall asleep, where do we go?』(19.6万)
第3位 QUEEN『Greatest Hits』(17.6万)
第4位 The Beatles『Abbey Road』(16.1万)
第5位 『Guardians of the Galaxy, Awesome Mix, Vol. 1』(15.2万)
第6位 Bob Marley and The Wailers『The Best Of…』(14.8万)
第7位 Fleetwood Mac『Rumours』(13.8万)
第8位 Billie Eilish『Dont Smile at Me』(12.6万)
第9位 Michael Jackson『Thriller』(12.5万)
第10位 Kendrick Lamar『Good Kid, M.A.A.D City』(11.7万)
※集計期間：2020年1月3日〜2020年12月31日
※出典：MRC Data「MRC DATA YEAR-END REPORT U.S. 2020」
Songs
年間ストリーミング・ソング・チャートの首位には、ロディ・リッチ（Roddy Ricch）の「The Box」で、13億2,000万回を再生した（※オンデマンド・オーディオとビデオ・ストリーミングのトータル）。「The Box」は「Hot 100」で11週連続で首位を記録し（※2020年1月18日付-3月28日付）、2020年の最長首位曲となった。続いて第2位に、フューチャー（Future）とドレイク（Drake）の「Life Is Good」、第3位にダベイビー（DaBaby）とロディ・リッチ（Roddy Ricch）の「Rockstar」（※「Hot 100」通算7週首位）が入り、ヒップホップが席巻した。ヒップホップ以外では、第4位にザ・ウィークエンド（The Weeknd）の「Blinding Lights」（※「Hot 100」通算4週首位）、第9位にトーンズ・アンド・アイ（Tones & I）のバイラル・ヒット「Dance Monkey」、第10位にドージャ・キャット（Doja Cat）の「Say So」（※「Hot 100」1週首位）がランクインした。
2020年米国年間ストリーミング・ソング トップ10〈オーディオ&ビデオ〉
第1位 Roddy Ricch「The Box」(13.2億)
第2位 Future feat. Drake「Life Is Good」(10.3億)
第3位 DaBaby feat. Roddy Ricch「Rockstar」(8.6億)
第4位 The Weeknd「Blinding Lights」(8.2億)
第5位 Jack Harlow「Whats Poppin」(7.8億)
第6位 Cardi B feat. Megan Thee Stallion「WAP」(7.3億)
第7位 Megan Thee Stallion「Savage」(6.1億)
第8位 Lil Mosey「Blueberry Faygo」(5.9億)
第9位 Tones and I「Dance Monkey」(5.7億)
第10位 Doja Cat「Say So」(5.6億)
※集計期間：2020年1月3日〜2020年12月31日
※出典：MRC Data「MRC DATA YEAR-END REPORT U.S. 2020」
2020年米国年間ストリーミング・ソング トップ10〈オーディオのみ〉
第1位 Roddy Ricch「The Box」(9.2億)
第2位 The Weeknd「Blinding Lights」(6.9億)
第3位 DaBaby feat. Roddy Ricch「Rockstar」(6.7億)
第4位 Future feat. Drake「Life Is Good」(6.5億)
第5位 Jack Harlow「Whats Poppin」(6.4億)
第6位 Cardi B feat. Megan Thee Stallion「WAP」(4億9,224万)
第7位 Megan Thee Stallion「Savage」(4億9,205万)
第8位 Lil Mosey「Blueberry Faygo」(4億9,075万)
第9位 Post Malone「Circles」(4億5,685万)
第10位 SAINt JHN「Roses」(4億5,485万)
※集計期間：2020年1月3日〜2020年12月31日
※出典：MRC Data「MRC DATA YEAR-END REPORT U.S. 2020」
2020年米国年間ストリーミング・ソング トップ10〈ビデオのみ〉
第1位 Roddy Ricch「The Box」(3.9億)
第2位 Future feat. Drake「Life Is Good」(3.8億)
第3位 Cardi B feat. Megan Thee Stallion「WAP」(2.4億)
第4位 Pinkfong「Baby Shark」(2億)
第5位 DaBaby feat. Roddy Ricch「Rockstar」(1.8億)
第6位 Lil Nas X feat. Billy Ray Cyrus「Old Town Road」(1億6,845万)
第7位 Eminem featu. Juice WRLD 「Godzilla」(1億6,133万)
第8位 Jack Harlow「Whats Poppin」(1億4,506万)
第9位 Tones and I「Dance Monkey」(1億4,346万)
第10位 6ix9ine,「Gooba」(1.3億)
※集計期間：2020年1月3日〜2020年12月31日
※出典：MRC Data「MRC DATA YEAR-END REPORT U.S. 2020」
年間デジタル・ソング売上チャートでは、BTSの「Dynamite」が126万ダウンロードで首位。続いて第2位にザ・ウィークエンド（The Weeknd）の「Blinding Lights」（580,000）。続いて第3位は『アメリカン・アイドル』出身の新星ギャビー・バレット（Gabby Barrett）の「I Hope」（351,000）となり、カントリー・ソングの最高位となった。
2020年米国年間デジタル・ソング トップ10
第1位 BTS「Dynamite」(126万)
第2位 The Weeknd「Blinding Lights」(58万)
第3位 Gabby Barrett「I Hope」(35万)
第4位 Tones and I「Dance Monkey」(33.9万)
第5位 Megan Thee Stallion「Savage」(33.6万)
第6位 Cardi B feat. Megan Thee Stallion「WAP」(30万)
第7位 Jawsh 685 x Jason Derulo「Savage Love (Laxed – Siren Beat)」(29万)
第8位 Blake Shelton with Gwen Stefani「Nobody But You」(28.8万)
第9位 Post Malone「Circles」(28.1万)
第10位 Maroon 5「Memories」(26万)
※集計期間：2020年1月3日〜2020年12月31日
※出典：MRC Data「MRC DATA YEAR-END REPORT U.S. 2020」
年間ラジオ・チャートではザ・ウィークエンド（The Weeknd）の「Blinding Lights」が首位。「Blinding Lights」はストリーミング、デジタル・セールス、ラジオのデータを独自の比重で計算された米ビルボードの2020年年間「Hot 100」で首位となった。
2020年米国年間ラジオ・ソング トップ10
第1位 The Weeknd「Blinding Lights」(38.1億)
第2位 Post Malone「Circles」(35.1億)
第3位 Dua Lipa「Don’t Start Now」(31.4億)
第4位 Harry Styles「Adore You」(30.7億)
第5位 Maren Morris「The Bones」(24.6億)
第6位 Maroon 5「Memories」(24.5億)
第7位 Gabby Barrett「I Hope」(24億)
第8位 Lewis Capaldi「Someone You Loved」(22.8億)
第9位 Lewis Capaldi「Before You Go」(20.7億)
第10位 Doja Cat「Say So」(20.2億)
※集計期間：2020年1月3日〜2020年12月31日
※出典：MRC Data「MRC DATA YEAR-END REPORT U.S. 2020」
MRC Dataと米ビルボードによるアメリカの音楽売上に関する年次報告書によると、2020年の米国内オーディオ・ストリーミング数は前年比17％増となる8,726億回を記録し、年間の音楽売上（アルバム相当数）は前年比11.6％増の7億5,680万ユニットとなった。新型コロナウイルスの影響を強く受け、ロックダウン開始8週間の音楽売上は前年同期比5.7%の減少となったが、その後上昇に転じ、ストリーミングの成長により2020年のアメリカにおける音楽売上は全体として成長となった。
2020年のアルバム売上は、前年比9.2%減の1億240万枚。アナログ・レコードの好調に支えられ、アデルの『25』が大ヒットとなり前年比6％減にとどまった2015年より後では、アルバム売上の減少幅は最小となった。2020年のフィジカルのアルバム売上は前年比7.4%減の6,801万枚となり、前年比5.2%減の2011年より後で最小の減少幅となった。2020年のCD売上は4,012万枚（前年比26%減）、2020年のデジタル・アルバム売上は3,439万枚（前年比12.5%減）。一方、2020年のアナログ・レコード売上は前年比46.2%増の2,754万枚となり、15年連続の成長となった。アナログ・レコードの週間売上では2020年12月24日の週に184万2000枚を売り上げ、Nielsen Music/MRC Dataが統計を開始した1991年以来、過去最多の週間売上となった（Billboard）。
2020年音楽売上（アルバム相当数）のジャンル別シェアでは、R&B/ヒップホップが28.2%で第1位。次いでロックが19.5%で第2位、第3位にポップ（12.9%）、第4位にカントリー（7.9%）、第5位にラテン（4.7%）となった。2020年のストリーミングのジャンル別シェアでは、R&B/ヒップホップが31.1%で第1位、第2位のロックは15.6%、第3位にポップ（13.1%）。一方、フィジカル・アルバムのジャンル別シェアでは、第1位にロック（44.0%）、次いでR&B/ヒップホップが12.3%で第2位、第3位にポップ（10.0%）。デジタル・アルバム、デジタル・ソングもフィジカルと同様の傾向で第1位ロック、第2位R&B/ヒップホップ、第3位ポップとなった。
世界に目を向けると、2020年の米国内オーディオ・ストリーミング数は前年比17％増となったが、世界全体のオーディオ・ストリーミング数は前年比22.6％増となり、成長率がアメリカを上回った。これはパンデミックが始まり、日本、オーストラリア、ベルギー、スイス、トルコ、ブラジル、ドイツなどでオーディオ・ストリーミングが大幅に増加したことが理由として挙げられている。
