あの頃失っていった大切なもの、短編アニメ映画『Alike』涙と感動の親子の物語


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こうして人は大人になっていく――

昨年開催されたスペイン版アカデミー賞、第31回ゴヤ賞(31st Goya Awards)で「最優秀短編アニメ映画賞」を受賞した他、世界各国で60を越える賞を受賞、その後昨年12月にオンラインで配信して以降、世界中から涙と感動の声が寄せられる短編アニメーション映画『Alike』

スペイン・マドリードを拠点に、ダイニエル・マルティネス・ララ(Daniel Martínez Lara)とラファ・カノ・メンデス(Rafa Cano Méndez)のアニメーターらから結成されたクリエイター・チームによるたった7分間の無声映画は、情感溢れる切なく美しい音楽とともに、世界中の人々の心の中で言葉を超えたメッセージとなり流れ始めます。

あるべき答え、期待されるルールを求められる中、やがてそれぞれの色、心を失っていく親子が、家族愛を通して再びその色を再び取り戻していく短編アニメ映画『Alike』。

わずか7分間ながら同映画に観た人からは、「涙が溢れる。胸を突き刺す映画だよ」、「本当に美しい映画だわ。とても多くのことを学ばせてくれるわ」、「この映画は本当に素晴らしいわ。最後には涙がこぼれたわ、だって全てがとても本当のことだから」など、涙と感動止まない声が寄せられます。

短編アニメーション映画『Alike』公式サイト

その一方、個々の色を失わせない教育・社会のあり方を問う声や、ラット・レースの無機質化する日常の中で一度立ち止まり振り返ってみる必要性を感じるとする声、音楽、芸術などクリエイティビティの大切さ、家族愛の意味、多様な価値観を認める必要性を感じたとする声など、観る人によって捉え方が一色でない『Alike』。

「父親になるということ」

4年以上の歳月をかけ製作され、ゴヤ賞をはじめ世界各国から数々の賞を受賞した短編アニメ映画『Alike』の監督ダイニエル・マルティネス・ララは「この映画はパーソナルなプロジェクトなんだ。…、もともとの主題は父親になるということだったんだ。子どもたちによって世界が大きく変わり、そこには様々な物語、状況が生まれ、短編映画に最適な題材だったんだ」と語ります。

父親になると、自分の子どもにとって何がベストなことか悩む時があるんだ。この短編映画はそうしたものを投影させるものなんだ。答えはない、でも物語の中で描くべきものがあると私たちは強く信じているんだ」。

世界中から美しいとの声が寄せられる『Alike』の映画音楽は、Oscar Araujoが手がけKaabestri Ensembleより演奏された。『Alike』では人々が気に留めない中、色を残すバイオリン奏者が描かれる。哲学者フリードリヒ・ニーチェの「音楽がなければ、人生は誤ちになるだろう」という言葉は名言として今も語り継がれる。

あるべき一色が求められる学校と社会を等比的に描き、「みんな同じ」と題する短編アニメ映画『Alike』のエンド・クレジットでは、次の言葉が記されます。「Special thanks to our Families for helping us not to lose our colour(私たちの家族に特別な感謝の意を捧げます、私たちの色を失わないことを助けてくれてありがとう)」。

グレーの人々が行き交う街の中、立ち止まってはいけなかった場所でそっと抱き合う親子のラストシーン。どこかで感じていたものを思い出させてくれる何かが世界中の人々の心の中で流れ始めます。

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