「未来をください/ここに、この手の中に/それを咲かせます/バラの花々と共に、ジャスミンの花々と共に」小柄でとても内気な11歳のフランスの少女がこの世界へ、哀愁に満ちながら息づかい一つ一つに深い感情を注ぎ全身で歌う香り豊かなバラとジャスミンのシャンソンが今、国境を超えて大人たちのハートに刺さっています。
世界最大の国別対抗戦・歌コンペティション番組『ユーロビジョン』のジュニア版『ジュニア・ユーロビジョン・ソング・コンテスト2025』(Junior Eurovision Song Contest 2025)の決勝まで1か月となり、全ての国の代表曲とミュージック・ビデオが公開。強豪国フランス代表には11歳の俳優/シンガーソングライターのル・ドゥルーズ(Lou Deleuze)が選出され、代表曲「Ce monde」(”この世界”の意)のミュージック・ビデオが、スペインに続いて2025年10月22日にいち早く公開されました。
全てフランス語で歌われるこの曲は、子どもの視点から現代社会を鋭く映し出したシャンソン。音楽と演技で培われた類まれな感性から流れ出る深みのある繊細さと、哀愁を帯びた力強さ、柔らかく豊潤な美しい音色が織り成すル・ドゥルーズの歌声が人々の心の深い感情を呼び起こし揺さぶりながら、心痛の哀愁と不屈の情熱が響き合う魅惑の世界へ誘います。
「Ce monde」のミュージック・ビデオの舞台は、悠久の歴史と洗練された文化が息づく光の都パリ。内なる感情を生々しく反響させる詩情豊かな表現力と奥行きのある解釈で、小さな体から一息一息に感情と魂を吹き込み、ノスタルジックな響きを持つメランコリックなシャンソンは、深く希望に満ちて生命力が脈動する情熱的なワルツへと姿を変えて、エネルギー溢れる眩い感動のラストへと向かっていきます。
Ce monde
by Lou Deleuze
(バース1)
どうして私をじっと見ているの?
そんな目を丸くして
私がわかってないと言わんばかり
世界が冷たいことを
今日、世界が幸せでないことを
私にも
全力を尽くす権利がある
この歴史の流れを変えたい
希望を取り戻すために
愛と澄んだ青空が戻ってくるように
(コーラス)
未来をください
ここに、この手の中に
それを咲かせます
バラとジャスミンの花々と共に
全ての愛をください
消えゆく愛さえも
その日を再び灯します
そして、明日の世界を
この世界、この世界、この世界
それはあなたの世界、私の世界
この世界、この世界
それは私の世界、あなたの世界
この世界、この世界
それは明日の世界
明日の世界
(バース2)
笑われたっていい
何を言われてもいい
このままにはできない
聞いて、私は諦めない
今夜もう一度、乞い願う
(コーラス)
未来をください
ここに、この手の中に
それを咲かせます
バラとジャスミンの花々で
全ての愛をください
消えゆく愛さえも
この日をもう一度輝かせます
そして、明日の世界を
(ブリッジ)
もう苦しむ世界は見たくない
私は何も恐れない
大人になるのを待たない
終わりを待ったりしない
私の全ての愛を注ぎます
温かみのある世界へ
そして永遠に愛します
この明日の世界を
(コーラス)
この世界、この世界、この世界
それはあなたの世界、私の世界
この世界、この世界は
それは私の世界、あなたの世界
この世界、この世界
それは明日の世界
明日の世界
ララララララ
ララララララ
ララララ
ラララララララ
ララララ
ララララララ
ラララララララ
この世界、この世界、この世界
そうよ、この世界、この世界
この世界、この世界、この世界
それは明日の世界
明日の世界
絵葉書のようなパリの美しい情景と歴史的建築物が映し出されるミュージック・ビデオは、色褪せた記憶のようなピアノのメロディの中で、セーヌ川沿いに優雅に佇み、壮麗なドーム型の屋根と柱が目を引くフランス学士院(Institut de France)から幕を開けます。

知恵、知性、芸術を象徴するそのフランス学士院を臨みセピア色に染めるスクリーンで、セーヌ川左岸のフランス学士院と右岸のルーヴル宮殿を結ぶポンデザールの中心に赤いジャケットを纏うル・ドゥルーズは、ヴィンテージなスタンドマイクの前に一人。恋人たちが永遠の愛を誓い合ってきた象徴的な場所で、この世界でまるで独りきりのような彼女は、切実な願いを訴えながら、誰も気には止めないこの世界の「冷たい」現実に歌います。
それでも「この歴史の流れを変えたい/希望を取り戻すために/愛と澄んだ青空が戻ってくるように」次第に辺りが明るくなり始め、愁いを帯びた響きは愛と情熱の歌声と響き合い、静かに輝き始めます。「未来をください/ここに、この手の中に/それを咲かせます/バラの花々と共に、ジャスミンの花々と共に」「全ての愛をください/消えゆく愛さえも/この日をもう一度輝かせます/そして、明日の世界を」
パリ発祥の地、ノートルダム大聖堂とサント・シャペルがあるシテ島から眩い朝陽が射し込み、街が明かりを取り戻していくと、映像は色彩豊かに輝き始め、交錯する悲しみと希望は、揺るぎない決意と信念へと変わっていきます。「もう苦しむ世界は見たくない/何も恐れないわ/大人になるのを待たない/終わりを待ったりしない/私の全ての愛を注ぎます/温もりのある世界へ/そして永遠に愛します/この明日の世界を」
「この世界、この世界、この世界/それはあなたの世界、私の世界/この世界、この世界は/それは私の世界、あなたの世界/この世界、この世界/それは明日の世界/明日の世界」「ララララララ」
愛の南京錠が撤去され現在はアクリルボードになった欄干から赤色の「バラ」と白い「ジャスミン」が咲き始め、ポンデザールは優雅に咲き誇るバラとジャスミンに包まれると、再び独りきりになる少女は、くるくると回り飛び跳ねながら踊り始めます。それは孤独感と緊張感に覆われ大人びた冒頭のシーンとは全く対照的に、ありのままの自分を取り戻し、あるいは、本当の自分を見つけて、心から安らぐ独りの時間の中で、子どものように無邪気に楽しむ華やかなシーンへと変わり、それが夢か現かわからぬまま、余情を残して歌を終えます。

フレンチ・バラードの真髄ともいえるこのシャンソン「Ce monde」は、フランスのポップ・シーンで今大きな注目を集めている新進気鋭のシンガーソングライター、リン(Linh)が作詞作曲。寂寥感のあるピアノの音色と時代を遡るようなノスタルジーが響くレトロなタッチを添えたメロディから、バルバラ・プラヴィ(Barbara Pravi)のユーロビジョン2021フランス代表曲「Voilà」を彷彿とさせるモダンで親しみのあるエモーショナルなメロディ進行へと時の流れを作りながら変貌を遂げるのが特徴的です。
今回特別にル・ドゥルーズのために書き下ろされたことで、ル・ドゥルーズの成熟した個性と独創性、深い感情を伝える類まれな才能を際立たせ、同じメロディ、同じ歌詞のコーラスでその感情が徐々に変化していくのも見所の一つです。
歌詞に注目すると、無機質な冷たさと悲しみから始まる「Ce monde」では、「バラ」と「ジャスミン」が歌のメッセージ性を引き立てます。「バラ」は愛や情熱の象徴で、痛みの先に美しさを宿す花。「ジャスミン」は”神様からの贈り物”を意味するペルシャ語「yasmin」に由来し、永遠の愛と純粋さ、官能性と優雅さ、魂の清らかさと神聖さ、平和と幸せ、強さと回復力といった象徴的な意味を持ち、夜にかけて香りが強くなるのが特徴です。この歌ではこうした詩的な表現や奥深い意味合いも効果的に用いて、花々は彼女の歌声の中で感情と呼応しながら色彩を放ち花開いていきます。
戦後80年、世界が再び戦争の道へと進もうとしている危惧感が漂う2025年。現代と未来、光と影、痛みと癒やし、不安と希望の間を行き来しながら、揺るぎない情熱、信念、決意へと成長していくル・ドゥルーズの力強い「Ce monde」は、世界情勢を受けた社会性も根底に帯びながら、この世界の日常で忘れかけていた旅へと私たちを連れ出し、そこで出会う明日の世界への希望と情熱に満ちたメッセージが深く心に響く歌となっています。
時代を超越したサウンドで今の時代に贈る希望のシャンソン、その感動をさらに深めるのが、年齢離れしたル・ドゥルーズの豊かな表現力です。
Lou Deleuze

2014年3月23日生まれのル・ドゥルーズは、パリ出身の俳優兼シンガーソングライター。父親は楽器製作者で、音楽に囲まれた家庭で育ち幼い頃から歌への強い情熱を育んだ彼女は2歳で歌を始め、5年後にはレッスンを受け始めました。7歳から役者の世界に入り陰影に富む演技で活躍を見せた彼女は、短編映画、長編映画、テレビシリーズなど数々の作品に出演し、歌手よりも先に俳優の道を歩みその地位を確固たるものにします。
長編映画では『Le Parfum Vert』 (2021年)、『Maldoror』(2023年)、『Le Rendez-vous de l’été』(2025年)、短編映画では『Poupée』 (2022年)、『Les dents du bonheur』(2023年)、『Happy Deal』(2023年)、『Louna』(2024年)、テレビシリーズでは『Paris Police 1905』 (2022年)、『Léo Mattéï, Brigade des Mineurs』(2025年)など数々の作品に出演、その存在感を放ってきました。
早くからその類稀な才能を開花させ観客を惹き込んだル・ドゥルーズは2023年5月に第76回カンヌ映画祭のユニフランステラスで開催された『第21回ユニフランス短編映画賞』で、ジョゼフィーヌ・ダルシー・ホプキンス(Josephine Darcy Hopkins)監督による短編ホラー映画『Les dents du bonheur』での演技が高く評価され、当時9歳にして「最優秀女優賞」を受賞しました(Unifrance)。

レディー・ガガやビリー・アイリッシュらから音楽的影響を受けた彼女が歌手として頭角を現したのは、2024年11月、当時10歳で出演したフランス版『ゴット・タレント』にあたる才能発掘オーディション番組『La France a un incroyable talent』シーズン19。緊張しながらもミレーヌ・ファルメール(Mylène Farmer)の「Rêver」(”夢”の意)を美しく歌い上げ、準々決勝へ進出の資格を獲得。資格者を対象としたその後のジャッジ選考により準々決勝進出は逃す結果となりましたが、その歌声でフランスのオーディエンスを魅了し強烈な印象を残しました。
今月フランスの公共ラジオ放送局ラジオ・フランス(Radio France)のラジオ・チャンネル「France Inter」の番組に出演したル・ドゥルーズ(”Lou Deleuze, représentante de la France à l’Eurovision Junior 2025 – Nouvelles têtes” / YouTube – France Inter)は歌手になるきっかけについて、7歳の時、オープンマイクの夜に16歳のラッパーたちの前で思い切ってマイクを手にしたのが転機になったといいます。「少し緊張していました。でもその後、みんなが拍手喝采を送ってくれました。ラッパーの一人は涙を流していました」と振り返ります。
幼い頃から憂愁と詩情に満ちた独自のスタイルを築き上げ、その後も演技を通じて音楽の芸術的表現を豊かにした彼女は、フランスの公共放送局フランス・テレビジョン(France Télévisions)の内部選考により、ジュニア・ユーロビジョン2025のフランス代表に選出されました。ル・ドゥルーズは、フランスが2018年にジュニア・ユーロビジョンに復帰して以来、 『ザ・ヴォイス・キッズ』 出身者以外でフランス代表に選ばれた初めてのアーティストとなり、異例の抜擢となりました。
フランス・テレビジョンのチームを魅了したのは、その歌声だけでなく、ミステリアスな雰囲気もある彼女の芸術的な個性でした。

フランス・テレビジョンのバラエティ、ゲーム、エンターテイメント部門ディレクターで、フランス代表団のリーダーを務めるアレクサンドラ・レッド=アミエル氏(Alexandra Redde-Amiel)はル・ドゥルーズについて「彼女の個性は素晴らしいと思いました。とても内気で繊細なところもありますが、独自の個性を持っていて、本当に素晴らしいです」と20minute(”Qui est Lou Deleuze, qui représente la France à l’Eurovision Junior 2025 ?” – 20minute)で語ります。9月29日、フランス代表曲の発表の際には、ル・ドゥルーズが赤いベレー帽をかぶり、バラの花束を持った公式写真が公開されました。
2001年公開映画『アメリ』(原題: Le Fabuleux Destin d’Amélie Poulain)から着想を得たといい、ル・ドゥルーズの映画的な側面を掘り下げ、ヴィンテージで詩的な美学を作り上げ、音楽と映画の世界観を融合した芸術性とフランスらしさを表現しています。アレクサンドラ・レッド=アミエル氏は「彼女はオドレイ・トトゥ(Audrey Tautou)を少し彷彿とさせる雰囲気があり、そんな彼女が歌う歌はノスタルジックでありながら現代的な世界へと私たちを誘ってくれるのです」と語ります。
Junior Eurovision 2025
ジュニア・ユーロビジョンでフランスは2018年以来、常にトップ5入りを果たしている強豪国です。2020年には当時11歳ヴァレンティナ(Valentina)が「J’imagine」、2022年には当時13歳リサンドロ(Lissandro)が「Oh Maman !」、2023年には当時13歳ゾエ・クロジュール(Zoé Clauzure)が「Cœur」で優勝を果たし、計3度の優勝記録を持ちます。これは大会最多4度の優勝記録を持つジョージアに次ぐ記録となっています。
9歳から14歳までの出場者を対象としたこの大会のこれまでの優勝曲の多くが、明るくエネルギッシュで色鮮やかな子どもらしいポップな曲です。それらと一線を画し、子供の目を通して今日の世界の物語を語り、若い世代の不安と希望を反映した大人のバラード調の今回の代表曲「Ce monde」は大きなリスクであるとフランスのメディアで報じられています。
しかしこれは曲のテーマ性を強く望んでいたル・ドゥルーズ自身の希望によるもので(actu.fr)、彼女は「勝っても負けても、私にとって一番大切なのはそのメッセージが届くことです」とRTLで語ります(”Eurovision Junior 2025 : découvrez “Ce monde” de Lou Deleuze, la chanson qui représentera la France” – RTL)。
彼女にとってのこの大会の意味・重要性について問われたル・ドゥルーズは思慮深く答えを返したといいます。「未来は子どもたちにかかっています」、だからこそこの歌は「この世界を良くしようと私たちが頑張っていかなきゃ、というメッセージを伝えています」(”Eurovision Junior 2025 : Qui est Lou Deleuze, la jeune chanteuse qui représentera la France en Géorgie ?” – Télé 7)。そうした彼女の思いが「この世界」というタイトルを選んだきっかけにもなっとアレクサンドラ・レッド=アミエル氏は明かし、「ルにとって、このコンテストは単なる競争以上のものだったのです。彼女はそこに意味を見出したかったのです」。
『ジュニア・ユーロビジョン・ソング・コンテスト2025』の決勝は前大会優勝国ジョージアのトビリシで現地時間2025年12月13日(日本時間12月14日)に開催。2021年以来となるアゼルバイジャン、2014年以来となるクロアチア、2015年以来となるモンテネグロが復帰、一方前年出場のエストニアとドイツは不参加となり、2021年以降で最多の計18か国が参加します。この模様は日本ではYouTubeでライブ配信されます。