『アメリカン・アイドル』2012年シーズン11優勝者が決定、アメアイカップルのプロポーズも


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米『アメリカン・アイドル』公式サイト

米国時間5月23日(水)、米FOX音楽オーディション番組『アメリカン・アイドル』(American Idol)シーズン11(2012年)のシーズン・ファイナルが米ロサンゼルスのノキア・シアター「L.A. LIVE」より2時間完全生中継で放送され、前日のフィリップ・フィリップス(Phillip Phillips)対ジェシカ・サンチェス(Jessica Sanchez)によるフィナル・ステージ(優勝決定選パフォーマンス)放送後投票された13200万票という投票数に司会ライアン・シークレスト(Ryan Seacrest)も「世界記録」と熱くなる中、ついにその優勝者が発表。

»「1:40〜」優勝パフォーマンス

「アメアイ史上初のアジア系歌手の優勝」「5年振りの女性アーティストの優勝」の期待も高まる中で、フォークスタイルの懐深く温かいソウルフルな歌声でこれまで安定した実力を見せ「次のブルース・スプリングスティーン(Bruce Springsteen)だ」と審査員のスティーヴン・タイラー(Steven Tyler)も唸らせた21歳のシンガー・ソングライター、フィリップ・フィリップス(Phillip Phillips)がシーズン11の「アメリカン・アイドル」に輝き、5年連続男性アーティストの優勝となりました。

米『アメリカン・アイドル』公式サイト

(記事)”Phillip Phillips Wins ‘American Idol’ Season 11 ” on Billboard
(記事)”‘American Idol’ Finale: Phillip Phillips Crowned Winner” on MTV

マライヤ・キャリー、ビヨンセ、ホイットニー・ヒューストン、セリーヌ・ディオンらを彷彿とさせる美しく圧倒的な力強い歌声と類まれな表現力で全米を魅了しながらも、惜しくも準優勝者となった16歳のジェシカ・サンチェスは、フィリップ・フィリップスを抱きしめ、ステージの上に駆けつけたシーズン11ファイナリストらと共に祝福。

そして前シーズン覇者スコッティ・マクレアリー(Scotty McCreery)より優勝者トロフィーが渡されると、フィリップ・フィリップスはギターを手に、コロネーション・ソングでデビュー・シングル曲となるフォーク調レイドバックソング「Home」を披露しました。

「過去10年、アメリカン・アイドルの歴史の中で最高の曲だ」と米メディアも称賛する(»英文記事)人生の苦難を謳った「Home」を胸にしみる歌声で歌い始める米バージニア州リーズバーグの小さな田舎街から家族に支えられながらここまできた青年は、その歌詞「苦難が君を弱らせてしまうかもしれない/もし君が人生の道を見失ってしまったとしても、君は絶対大丈夫」という部分にさしかかると涙が溢れだし、「これだけは知っておいてくれ、君は一人じゃないんだ/なぜなら僕がこの場所を君の”Home”にするのだから」と涙ながら歌うも、溢れでた涙が止まらず、途中で歌えなくなってしまうというエモーショナルなシーンも。

涙が止まらないフィリップ・フィリップスはステージの下で見守っていた家族らと恋人のもとへ向かい、抱きしめ合う感動的なシーンが映し出されました(»パフォーマンス動画)。

Mail Online

優勝後のメディアでのインタビューで「こんな結果は全く予想していなかったよ」(»英文記事)「全然実感できなくて…、とても現実とは思えないよ」(»英文記事)と話すフィリップ・フィリップスが流した涙の裏には、コンペティションとは別のもう一つの闘いがあったようです。

フィリップ・フィリップス(Phillip Phillips)2つの闘い
American Idol finalist Phillip Phillips’s doctor says ‘he needs kidney surgery immediately’

オーディションが始まってから慢性腎不全を患い、襲いかかった激しい腹痛により緊急病院に緊急搬送され応急処置を受けていたフィリップ・フィリップスは、今月中旬にジョージア州リーズバーグの実家に戻った際、医師により緊急手術を要する事態であることを告げられていたことが米TMZ誌により今月18日に報じられました。

(記事)”Phillip Phillips Needs Surgery … REAL BAD” on TMZ
(記事)”Health or stardom? American Idol finalist Phillip Phillips’s doctor says ‘he needs kidney surgery immediately’” on Daily Mail
(記事)”Phillip Phillips Had Eight Operations During American Idol Run, His Father Says” on People

襲われ続ける痛みの中で食欲を失い、血の気を失う表情の中、(安静期間も含め)6週間を要する手術を告げられたフィリップ・フィリップスは、自分の体か追い続けてきた夢かという究極の選択の中で、ファイナルでのパフォーマンスまで何とか出場したいと医師を説得。ファイナル後の腎臓の手術までに、シーズン中、尿路結石摘出のための8回にわたる手術を行い、痛みとともに口もひどく乾燥し、歌声もままならぬ中、家族に支えられながらファイナルに出場し、22日放送のその運命のファイナル・ステージでベン・E・キング(Ben E. King)の「Stand by Me」(»パフォーマンス動画)、ビリー・ジョエル(Billy Joel)「Movin’ Out (Anthony’s Song)」(»パフォーマンス動画)、そしてオリジナル・ソング「Home」(※追記、ドリュー・ピアソン(Drew Pearson)、グレッグ・ホールデン(Greg Holden)共同作詞作曲)を披露。

»フィリップ・フィリップス「Home」/Top2

身体的にも常に途中敗退と隣合わせの中で、「アンリアル」な優勝トロフィーを手にした彼が「Home」を歌いながら思い浮かべていたのは、そうした自分のそばで支え続けてきてくれていた家族の存在だったのかもしれません。

ジェシカ・サンチェス(Jessica Sanchez)、敗退危機から這い上がり準優勝
Jessica Sanchez

米『アメリカン・アイドル』シーズン11(2012年)公式サイト

一方、メキシコ系アメリカ人の父フィリピン人の母の間で生まれ、「アジア系アメリカ人として史上初のアメリカン・アイドル優勝」という、11シーズン目にして新たな1ページを刻む歴史的記録とともに絶大なる期待が寄せられていたジェシカ・サンチェスは、これまで通りのパワー・バラード・ディーヴァ・スタイルを貫き、ホイットニー・ヒューストン(Whitney Houston)「I Have Nothing」(»パフォーマンス動画)、セリーヌ・ディオン(Celine Dion)とアンドレア・ボチェッリ(Andrea Bocelli)の「The Prayer」、オリジナルとなる美しいバラード曲「Change Nothing」を披露。

»ジェシカ・サンチェス「The Prayer」(セリーヌ・ディオン)/Top2

ジャズミン・サリヴァン(Jazmine Sullivan)の「Stuttering」を披露した先月11日放送のトップ7で、放送後の一般投票によりグループ最下位となり落選したものの、シーズン8より導入された3人の審査員による一回限りの拒否特権「Judges’ Save」行使により救済を受けるなど、ジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)をはじめとする審査員らからも高い評価を受け、その後も激戦の中で見事トップ2まで這い上がったジェシカ・サンチェスは、その圧巻の歌唱力でファイナル・ステージでも全米を魅了します。

»ジェシカ・サンチェス「Change Nothing」/Top2

ジョーダン・スパークス(Jordin Sparks)が覇者となったシーズン6(2007年)を最後に、デヴィッド・クック(David Cook)、クリス・アレン(Kris Allen)、リー・デワイズ(Lee DeWyze)、スコッティ・マクレアリーと続く男性アーティストの連続優勝を阻み、「5年振りの女性アイドル誕生」がかかる中、惜しくもそのトロフィーを譲ることとなりましたが、しかしその比類なき壮大な歌声はたとえ彼女が準優勝となったとしても、将来必ず成功する歌姫へと導くものであると米各紙で大きな評価を得ているようです。

»全米を席巻したジェシカ・サンチェス「I Will Always Love You」/Top13

米ビルボード・ビズは「ジェシカはマライヤやホイットニーのディーヴァのような力強い歌声と表現力を備えている16歳だ。…、フィリップもジェシカも二人ともスターダムの道を駆け登っているだろう。」(»英文記事)とコメント。また「フィリップはエネルギッシュで、好印象の、熱心な青年で、彼がいくらかの成功を残すことは確かであろう。しかし彼の歌を聞いてみよう、彼は”素晴らしい”。それ以上ではない。ジェシカ・サンチェスはヴォーカルの天賦の才をもっている。彼女の歌声は人を衝き動かし、圧倒させる力を持っており、文字通り、”今自分が聞いているものが信じることができず、椅子から立ち上がり、その手を頭の頂上に持っていく”ような感動を与える。」と優勝者よりも高い評価を送る声もあるようです(»英文記事)。

『アメリカン・アイドル』2012シーズン11・ファイナルエピソード豪華パフォーマンス
American Idol Season11 Final – Performances

»シーズン11トップ2を除くファイナリスト「Runaway Baby」(ブルーノ・マーズ)/Final

およそ5ヶ月にわたり熾烈な闘いを繰り広げ、全米の頂点を決するフィナーレを迎えた今回のシーズン11の2時間スペシャル・ファイナル・エピソードのライブ放送、優勝者決定の発表はもとより、これまでにない豪華アーティストによるライブ・パフォーマンスでも全米を大きく沸かせたようです。

(記事)”Phillip Phillips Wins ‘American Idol’ Season 11” on Idolator

»ジェシカ・サンチェス&ジェニファー・ホリデイ「And I Am Telling You」/Final

シーズン11トップ2を除くファイナリストらによるブルーノ・マーズ(Bruno Mars)の「Runaway Baby」によりキックオフしたショーは、ジョン・フォガティ(John Fogerty)、ファンタジア・バリノ(Fantasia Barrino)(»パフォーマンス動画)、リーバ・マッキンタイア(Reba McEntire)、ニール・ダイアモンド(Neil Diamond)、ジョーダン・スパークス(Jordin Sparks)、ジェニファー・ホリデイ(Jennifer Holliday)、ジェイソン・デルーロ(Jason Derulo)(»パフォーマンス動画)の豪華アーティストをゲストに迎え、シーズン11ファイナリストらと共にデュエットを披露しました。

»ホリー・キャヴァナー(Hollie Cavanagh)&ジョーダン・スパークス「You’ll Never Walk Alone」/Final

»リアーナ「Where Have You Been」/Final

またリアーナ(Rihanna)がその最新シングル曲「Where Have You Been」を披露。

»ジェニファー・ロペス「Goin’ In」「Follow the Leader」/Final

映画『Step Up: Revolution』より最新曲「Goin’ In」を披露した審査員のジェニファー・ロペスは、ウィシン&ヤンデル(Wisin & Yandel)とその最新曲「Follow the Leader」を披露。しかしパフォーマンスを披露した審査員は彼女だけではなかったようです。

»エアロスミス「Legendary Child」/Final

審査員のスティーヴン・タイラー映画『G.I. Joe: Retaliation』のサントラよりエアロスミス(Aerosmith)待望の新曲「Legendary Child」を披露し、全米を熱狂させました。

»シーズン11男性ファイナリスト「Words」「How Deep Is Your Love」「How Can You Mend a Broken Heart」「To Love Somebody」/Final

またその曲の前には、今月20日に亡くなったばかりのビージーズ(Bee Gees)のロビン・ギブ(Robin Gibb)への追悼がシーズン11男性ファイナリストら(フィリップ除く)により捧げられました。

»ジェシカ・サンチェス「I Will Always Love You」再び/Final

そしてフィリップ・フィリップスとジェシカ・サンチェスの二人が82年の映画『愛と青春の旅だち』(原題:An Officer and a Gentleman)主題歌「Up Where We Belong」を披露すると、優勝者発表へ。

»フィリップ・フィリップス&ジェシカ・サンチェス「Up Where We Belong」/Final

フィリップ・フィリップスデビュー・シングル曲「Home」によりそのクライマックスを迎えると、これまでのシーズン11を振り返る映像とともに甘く渋い歌声のスコッティ・マクレアリーティム・マックグロウ(Tim McGraw)の曲で、別れた恋人の幸せを祈るとともにどこかで自分のことを覚えていて欲しいと願うビタースウィートなバラードソング「Please Remember Me」でしっとりと聴かせ、そのシーズン11の幕を閉じました。

»スコッティ・マクレアリ「Please Remember Me」(ティム・マックグロウ)/Final

『アメリカン・アイドル』史上初、アメアイカップルのプロポーズ
Ace Young and Diana DeGarmo Engaged at Aerican Idol Season11 Final

リアーナにエアロスミスとそのパフォーマンスで大きく観客を熱狂させる中、全米の心に残ったのは「パフォーマンスできなくなった」フィリップ・フィリップスのウィニング・パフォーマンスかもしれませんが、しかし思わず心を奪う感動的なシーンがもう一つあったとすれば、それはシーズン5準優勝者エイス・ヤング(Ace Young)がシーズン3の準優勝者ダイアナ・デガルモ(Diana DeGarmo)に『アメリカン・アイドル』史上初めて行ったプロポーズかもしれません。

司会のライアン・シークレストが絶妙なタイミングで、二人で一緒に座っていたエイス・ヤングとダイアナ・デガルモにふと話題をふり、「エイス・ヤングとダイアナ・デガルモ、二人はなんてお似合いのカップルなんだ。ちょっとこっちにあがってきてよ。」とステージにあがるように促すと、「2,3年前だったかな、このショーでとても素晴らしいことが起こったんだ。」「大きなニュースがあるって聞いたけど、二人一緒に同じ家に住みはじめたんだって?おめでとう」と同棲することになったニュースを祝い、会場からは拍手が。

エイスは「ありがとう。そしてこの場所は僕たちにとって家のような存在で、この場所で彼女にシンプルなクエスチョンをする完璧な場所であると感じたんだ」と観客に告げると、ダイアナを見つめ「僕たちは共にブロードウェイを成功させ、共に新しい音楽をつくり、共に素晴らしい仲間たちに囲まれ…」とここでなぜか指輪のスポンサーの紹介が入ったものの、会場が盛り上がる中、ステージに膝をつき指輪を取り出すと、「ダイアナ、僕は君を死ぬまで愛している。君は僕の親友であり、僕はこのときを永遠にしたい。最高にこの上ない素晴らしい君との人生を共に歩むことができるのならば、僕はどんなことでもする。もし君が受け入れてくれるならば。ダイアナ・デガルモ、僕と結婚してくれますか」とプロポーズ。

涙を流して喜ぶダイアナは「Yes」と何度も頷きながら二人抱きしめあい、何百万という全米視聴者がその目撃者となったサプライズ・プロポーズ大作戦は、感動的な次のステージへの進出決定となったようです。

(参考)”‘American Idol’ Anoints Phillip Phillips Season 11 Winner” on The Hollywood Reporter
(参考)”Phillip Phillips ‘Excited’ For ‘American Idol’ Finale” on MTV
(参考)”Phillip Phillips Won’t Take Credit For ‘Home’ At ‘American Idol’ Finale” on MTV
(参考)”‘American Idol’ Champ Phillip Phillips on ‘Home’: ‘I Told Them It’s Not My Single’ (Video)” on The Hollywood Reporter
(参考)”‘American Idol’ Recap: Phillip Edges Jessica in Final Performances ” on Billboard

5 comments
  • PPがうたったHomeってオリジナルじゃないですよね?Greg Holdenほか1人

  • peroさん、コメントありがとうございます。

    ドリュー・ピアソン(Drew Pearson)とグレッグ・ホールデン(Greg Holden)共同作詞作曲による「Home」は、もともとはグレッグ・ホールデンの楽曲として制作されたものでしたが、その後グレッグ・ホールデンの曲としてリリースされず、ドリュー・ピアソンのレコーディング・スタジオ「Pulse Recording」の意向により、ファイナル・ソングとして採用された経緯が報じられています(»英文記事)。

    ソングラタイターでもあるフィリップ・フィリップスとしては、自身の楽曲をファイナル・ソングとすることを強く望んでいましたが、大人の事情があったためか、「ファイナル・ソングとするには時間が足りなかった」ようです。

    「Home」についてフィリップ・フィリップスは、「いい曲だと思う」が「自分が作詞作曲するような曲でなく」「僕には少しポップすぎる」と米ローリングストーン誌インタビューで語っているものの、結果的にはAI史上最高の歴史的記録を生んだシングル曲となったようです。

    腎臓手術を無事に終えたフィリップ・フィリップスは、7月4日ナショナル・モールで開催されるセレブレーション・ライブでフィナル後初めてパフォーマンスを行う予定であることが今週18日報じられました(»英文記事)。

    なお、記事本文中で「オリジナル・ソング」と表記している件につきましては、歌を歌っている本人が直接作詞作曲した楽曲という限定的な意味合いではなく、カバー・ソングでない、オリジナルの楽曲という意味で表記している形となっております。誤解等招きかねない表記、大変申し訳ございません。今後とも細心の注意を払い表記等留意していく所存でございます。

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